第四話『昼飯を食べ終わったと思ったら……。』
「洗濯物を干し終わりました。」
結実と名付けたアンドロイドはいう。
「あーありがとう。」
横になって座布団を折って枕にして有料コンテンツでアニメを見ている了助。
「そう言えば、エネルギー残量50%以上と言ってたけど、チーズだけで50%?」
それだと流石にコスパ良すぎないか?と思う了助。
「いいえ、マスターが朝食を取る際、作り立ての方がいいと思い、9時前後に朝食を作りましたが、睡眠中だったので私がいただきました。」
その食事で50%以上です。と続けた。
起きる予兆でもあったのかわからんけど、ねてるなら飯作るなよ、それで2回3回と飯作ることになったらもったいないだろとみみっちいことを思いつつ、少女の様子を見る。
結実は了助が寝っ転がっているところの近くで立っていた。
「あーなんか立ってるとこっちも落ち着かないから、なんか好きに座るなり、寝るなりしたらどう?」
気になってアニメに集中ができない。と了助は困っていた。
「了解しました。」
結実は了助の後ろで横になり、了助の背中と自分の背中をぴったりくっつける。
「えっ何してるの?」
アンドロイドとは言え女子が近くにいるためドキドキと脈拍が速くなる。
「マスターのバイタルチェックです。読み上げますか?」
少々気になったので簡単にお願いしますと伝える。
「 心拍数、脈拍60〜80回 疲労度、肉体疲労が顕著。休息を推奨します。」
「あー今休み中だから丁度いいね。」
なんでもないような感じを装いながらも脈拍とかで緊張してるのがバレるかな、など少々心配になる。
了助の人生は中学校以降女性と話をする機会など微塵もなかったため、身近に女子がいることの耐性がなく嫌ではないがどうしたらいいかわからない。
いっそ開き直れたらいいのだが、できずにいた。
突然結実は起き上がり座り直し直して、一言。
「心拍数、脈拍が不安定です、詳細なバイタルチェックを開始します。」
「え?ちょっ」
結実は横になっている了助の右腕を掴み、了助の腕全体を包み込むように右腕を変形させる。
突然なことに慌てふためく了助。
「血圧測定のため、腕を加圧します。力を抜いてお待ちください。」
上腕が血圧測定器のように加圧されていく。肘から先は一部が透明のプラスチックになっていて中の様子が見える。細い緑の光の線がチラチラと腕をスキャンしているかのように何本も腕に当てられている。
「計測終了しました。」
そういうと了助の右腕が解放された。
「びっくりした……。」
なんで?と聞くと、脈拍数が不安定だったため詳細なバイタルチェックを行いました。と同じことを言われた。
「何事かと思うから次は許可をとってくれ。」
了解しましたと返される。
「それで、問題はあった?」
「少々血圧が高かったのですが特に問題はありませんでした。」
そうか。と答えると寝直した。
アニメの見ているうちにだんだんと眠たくなってきた。
睡魔がゆっくりと意識が重たく暗くなる。
肉を焼く音がする。
いつの間にかまた寝たらしい、アニメを見るのでつけていたテレビが消えていた。
結実がまた飯を作ってくれているらしい。
「よく寝た。」
そう言いつつ体を起こす。
「起きていましたか、夕食ができました。」
そう言いつつ食器を運んでくる結実。
夕飯のメニューは…
白米、ベーコンエッグ、味噌汁、サラダ。
「え、昼と同じなのか……。」
少々落胆する了助。
「はい、残った食材を使用しました。」
ブランチでは美味しかった、また作ってくれとおっしゃってくれたので。との結実の発言を聞き、いや、スパンが短すぎる。
そして気になったのは食器の数、運ばれてきたのが了助1人分だけだった。結実は食べないのか?と聞くと余りましたら補給します。と返ってくる。残飯処理レベルでしか考えてなかったのかとそちらでも落胆する。
「食事は2人で食べた方が美味しいから、2人分作って結実もら食べればいい。残ったら明日以降にでも2人で食べればいい。」
少し待ってろ。といい、了助はキッチンへ向かう。
フライパンを握り、コンロをつける。
少し油をしき、油煙が軽く出てくるタイミングで卵を2つ落とす。
昼に炊いていたご飯がまだ残っていたので卵の上に茶碗一杯分をたまごを潰しつつ混ぜる。
ベーコンを小さく手でちぎりながら丸ごと炒めていく。
醤油、味の素、胡椒をテキトーにフライパンの中にぶち込み混ぜ合わせていい感じになってきたところを一口味見をする。
「んーこんなもんだな。」
炒め終わったら皿に盛り付ける。
シンプル炒飯の完成。
「ほら、できたぞ。」
結実の前にできたチャーハンをおく。
これは……。と彼女はマジマジと見る。
「ベーコンと卵のズボラチャーハン、色合いが少ないけど栄養を取るならいいぞ。」
「わかりました。」
いただきます。
了助は結実が作ってくれたベーコンエッグを食べ始める。
結実は1度了助をチラッと見た後同じようにいただきますをいい、スプーンでチャーハンをすくい、口の中へゆっくりと入れる。
「どうだ?」
味の感想を聞かせてほしい了助はワクワクしながら結実を見る。結実は咀嚼をして一言はなす。
「美味しいです。」
「そうか。」
静かな夕食の時間が流れ、了助が食べ終えると同時に結実も食べ終える。
「すごいです、エネルギーがみるみるうちに増えていきます。」
「まあ米と卵とベーコンだからな。カロリーは高めだな。」
了助はティッシュを1枚箱から取り出すとベタベタしている結実の口を拭いてあげる。
「すみません、私があなたのお世話をしなければいけないのに。」
淡々と話しているが、少し落ち込んでいるように見えた了助は、別にこれくらいいい、うまそうに食べてくれたから。
そう言い夕食の時間は終わった。