第二十一話『そんなバカなと思っていたが……。』
一旦落ち着こう。俺らは顔を見合わせた。
「あー、なんでお前らがいた世界と俺のいた世界が一緒になる?」
「流石に上手くできすぎてる感じがあるんだけどな……。」
男2人で頭を悩ませていると結実が説明を始める。
「確かにこの事象を偶然とした時の確率論で言えば、天文学的数字を鼻で笑うほどの確率です。しかし了助氏の実験過程で時空間に歪みが生まれ、我々がここに吸い寄せられたため発生しました。」
「ちなみに偶然だった時の数字はいかほどなの?」
俺が口を挟む。
「地球以外の無数の地球型惑星が宇宙誕生してから生物の住める星ですべて埋め尽くされる確率よりももっと低い確率です。」
結実は答えてくれた、やさしい。
「俺が実験を失敗させてここにいることを知ってるってことはお前の製作者は俺の弟の啓介なんだな?」
以前からAIだのを搭載した高性能のロボットを作るとか言ってたし……。と思い出しながら質問をする。
「はい、私は元々あなたの婚約者を再現する為に製作されました。私の主人のように別の世界に存在する了助という人物の遺伝子を採取してあなたを再現する計画を啓介氏は実行していました。」
その話を聞いて俺は気持ち悪すぎて震え上がっていた。
……なんでそんな回りくどいことをしたんだ?
と口に出す異世界の自分。
「最初から弟である自分の遺伝子を採取して弄ったらいいし、わざわざ異世界にお前を派遣する必要はないんじゃないか?」
確かに。と頷く俺。
おそらく歪んだ感情なのでしょう。と返答する結実。
「4次元、5次元世界を行き来する技術が完成した際、自分たちが観測できた複数の世界で啓介氏の兄が同時期で死亡していたことが判明して助けたいという思惑があったか、自分の遺伝子を操作したデザインベイビーは兄ではないという気持ちがあったのかもしれません。」
あーなるほどなぁ、自分から生まれたのは息子としか見えないってことか。と納得する自分。
話を聞いて考えこむ異世界の俺。
「まあ、帰れるとわかった以上、今は考えることはないんじゃないか?」
「……そうだな。今考えても仕方ないから本人に直接聞くしかないな。」
そう言いながら右手の関節をボキボキと鳴らし始めてる。
……できるだけ穏便でな。と言うと、そうだな、できるだけ穏便に済ませると返ってくる。
目が怖い。
そんなやりとりをしていると診療所の扉が開き、先ほど出て行った2人が戻ってきた。
お、丁度いいタイミング。と異世界の俺は立ち上がって2人と話を始める。
「なぁ、アイツ、ここの現住人の言葉をネイティブ並みに覚えてるけどすごいよなぁ……。」
結実を持ち上げて抱きかかえながら話しかける。
「おそらく助けてくれた人とのコミュニケーションで培ったのでしょう。言語の習得で1番の近道と言われる方法のひとつにその言語を話す恋人を作るといいと聞きますので、密に会話をしている間に覚えたのだと思われます。」
へぇ〜。と言いつつも、そもそも言語の壁があったら恋人ができないのではないのか?と思った。
しばらくするとあちらにいる3人が話し終えた様子で、俺の頭をビシバシと叩いた女の人は診療所の奥に行き、もう1人の女の人は椅子を持って俺の近くに来た。
異世界の俺はタバコを吸おうと懐に手を忍ばせると、そばに来た女性が怒り始めて外へ歩いていく。
彼女は椅子持ってきた椅子に座り、俺と結実の様子を観察している。
結実は話さず、言葉もわからないわからない為、無言の時間が過ぎる。
「わたし、アドワ。わたし、あなたのはなすコトバ。すこし、わかる。」
「え。」
目の前の女性が日本語を話し始めて、マジかよと驚きが顔に出たのか相手はクスクスと笑い出す。
「あなた、ヒザにいるカノジョ、たすけようとしてカラダいためた、ほんと?」
その発言で膝上の結実がギョッとして俺の顔を見てくる。
「い、いや、確かに2人で助かろうとして膝のコイツを背負って歩き続けたけど、それだけだよ。」
そういうと彼女の目の感じが少し柔らかくなった気がした。
「あなたとそのこ。こいびと、ほんとなのね。」
「恋人と言わず、夫婦です。間違えないでください。」
膝にいるちんまいのが口走ったため、相手は手で口をおさえながら声を上げる。
俺は違う違うと訂正する。
「すごく、いい。だけど、あなたががんばりすぎる、ダメ。そのこもつらくなる。」
……。
「ワタシ、すきなひとにおなじこと、されたらツライ。あなたもきをつけてね?」
俺が苦い顔をして黙っているとまたクスクスと笑い出す。
「ほんとう、そっくり、そういうところ。」
そういうとアドワさんは立ち上がり、外でタバコを吸っている男の元へ歩いて行った。
結実がこちらを見てくる。
「無茶はしないでください。」
「お前もな。」
この世界にきて初めて2人っきりになったからか、俺は強く結実を抱きしめた。




