第十七話『目覚めたと思ったら……。』
目が覚めたら清潔そうにしてある小屋にいた。
窓の外は夕方、周りには男性が2人、女性が1人いた。
どうやら道端で倒れていた俺を拾って多分診療所まで運んでくれて治療してくれたのだろう。
よく見ると白衣を着たヨボヨボのお爺さんが書き物をしている、俺のカルテだろうか?
目が覚めたのに気づいた女性がこちらにきて色々な言語を試してるようだった。
その中の1つに英語に近い言葉があったので英語で話しかけた。
するとタドタドしくも返答を返してくれて自分もタドタドしく応える。
しばらくすると全員帰っていった。
ベッドの下には結実のボディがあったので点滴が抜けないように持ち上げてベッドの中へ入れる。
ふらふらになりながら再びベッドの中へ入り、結実がぱっと見でバレないようにした。
こうしないと多分俺はまた寝られない。
ベッドに再び横になるとすぐに意識を失った。
何かに叩かれて目が覚める。
日はもう完全に落ち切ってて夜のようだった。
さっき話した女性が薄めの本で俺を叩き起こしたようだった。
殴るなよ……。と思ったら目の前に水とパンとスープが置かれる。
パンを齧るととても硬かった。
パンを置いたらまた叩かれる。
「殴るなよ!」
流石にイラッときたが、女性はパンを手に取りちぎってスープの中に浸してふやかした。
スプーンを渡されたのでこれで食えってことなのだろう。
いっそパンを全部ちぎってスープに入れてやれとスープの上でパンをバラバラにして浸した。
スプーンで液体を掬い口に運ぶ。
数日ぶりの食事に胃は少々びっくりしているが、かまわず一気に口に詰め込む。
水を飲み、一息つくと薄い本を見せてきた。
中身は白紙で何も書いていなかった、ノートか。
すると女性がサラサラと絵を描き始めて英語のような言語で説明し始める。
どうやらここは荒野の中にある村で、少ない人数で切り盛りしているらしい。
物品が少ないので金が欲しい。俺に会いに誰かが来るからその人から治療費や生活費を支払ってもらうと言っているようだ。
「What if he doesn't pay?」
「Work you.」
オケオケと言いながらため息をつく。
ここは言ってしまえば異世界でそんなところに知人なんかいるわけがない、何年もこき使われるのを覚悟した。
話が終わり、寝ろとだけいい女性は出ていく。
ため息をつきながら結実を見て、不甲斐ない自分に苛まれながら眠りにつく。
───────────
早朝。
あ〜!なんで私が毎度毎度ジャメルのへんなの拾ったモノの面倒見なきゃならないの‼︎って思いながら診療所へ歩いていく。
ふと目を凝らすと診療所前に男女の2人組が立っていた。
「やっときた?キブチとアドワ。」
声をかけると振り返る2人。
キブチは何年か前に隣の村に落ちてきたとかいう外の人間だ。
「サラ!元気だった?」
アドワがたったか走ってくるので受け止めてハグをする。
隣町のアドワ、なぜかこの男と一緒に働いている私の幼なじみで、一緒に他国で勉強してきた間柄だ。
「私は元気よ、あなたも元気そうね。」
再会を喜んでいると水を差してくるキブチ。
「それで、俺に見せたい男っていうのは診療所内にいるのか?」
私は驚いた。
「ええそうよ、あんたも前はちゃんと喋れなかったって聞いたけど喋れてるじゃない。」
すごいな〜と感心する。
「まあ…そのハグしてる彼女が献身的に教えてくれたからな。」
じゃあ行こうと診療所内へ入っていく。
私たちも続いて扉の中へ入っていく。
小屋に入った時、先に入ったキブチは唖然としていた。
寝ていた男も上半身を上げて呆然としている。
「サラ…この2人、そっくりじゃない?」
アドワが少しだけ動揺している。
「ええ、改めて見ると双子のような感じがする。」
キブチはため息を吐く。
「すまん、1回2人で外にいてくれないか?
コイツと2人っきりで話したい。」
目を手で覆いながらキブチは言った。
「ええ、構わないわ。ただ、そいつには食事代、脱水症状や足とかに怪我もしていたので治療費がかかっているから、支払いをお願いしたいんだけど?」
どう?と聞く。
「……あーまあ、しょうがないかな。払うよ、アドワ、悪いが値段交渉してくれ。」
思わずガッツポーズが出てしまった。
キブチは恨めしそうにこちらを見ている。
「わかった、じゃあ、サラ。一緒に外に出ましょ?」
アドワは私の手を取り、扉を開けて歩き出す。
「どこで話をする?」
外に出るとアドワは私に聞きながらも進行方向は私の家に足を運んでいる。
「あーそうね。私のウチにしない?旦那はもう仕事に出ているから誰もいないわよ。」
いいわね。と返ってくる。
私とアドワは歩みを少し速めた。
「ねぇ、私の提示額で手を打たない?そうしたら今度美味しい焼き菓子をご馳走するけど?」
久しぶりに会ったし。と伝える。
「残念、金額はだいたい決まってて、あまり使いすぎると私の方のポケットマネーも辛くなる、焼き菓子だけでは足りなくなるからナシよ。」
「交渉決裂ね。」
診療所が遠ざかっていき太陽が登り始める、暑く長い昼間がはじまろうとしていた。