第九話『1人ので買い物を頼もうと思ったが……』
朝になった。結実が朝食を作る音が聞こえてくる。
昨晩、結実と背中合わせで寝ていた。
なんてこともないはずなんだがものすごく。
「……ムラムラする。」
アンドロイドとはいえ女の子と添い寝したためか、まだ下半身は反応していないが身体がすこし火照っている。
それもそのはず何週間かにソロでヌくのも結実が来てしまってできなかった。
だがここで結実に『ヌいてもらえる?』と頼むのも正直どうかとも思うので、できるだけバレずに落ち着くのを待つか、隙をついて実行するかを考えていた。
「おはようございます。」
「うぁ!……おはよう。」
「どうかしましたか?」
「いやなんでもない、気にしないでくれ……。」
作ってくれた朝食が運ばれてくる、それに対していつもありがとうといいありがたく食べる。
今日は鯵の開きとだし巻き玉子と青野菜のおひたし。
朝食には味噌汁がデフォルトで出てくるようになっていた。
おひたしを食べてみるとほうれん草で程よいしょっぱさとほうれん草の独特の味が口に広がり日本人って感じだなぁと思った。
コンビニでさっと買い物しておにぎりをかじりながら出勤していた頃が懐かしい。
食後に落ち着いたところで結実が話しかけてきた。
「了助さん、なぜ身体がいつもよりも発熱をしているのですか?風邪でも引いたのでしょうか?それにしては少々低い気がしますが……。」
サーモグラフィーでも積んでるのかお前は。と心の中で思ってすぐに、了助はなんと返答するかを迷っていた。
素直にお前でムラついているからだ。と言えるほど理性を飛ばせる人間か無神経ならどれほど良かったのかと考えていた。
「……人間に限らず生物は常に一定の体温ではないからじゃないかな?
生物はその日の体調によって体温や反応速度、思考速度色々と変化するんだよ。
だから今日の俺は体温が少し高いってだけで特に理由はないと思うんだ。アッだけど結実のご飯で普段乱れた食生活が改善されて代謝が良くなったとか昨日結実と一緒に添い寝してストレスが軽減されたからだとか生物としては至極当然な生体反応なだけだと思うんだだから気にしないでくれ頼む」
「わかりました。」
了助はフゥ、納得してくれたか。と一息ついた。後半は少し早口になってしまったがこれでよしと思った。
「なるほど、一緒に布団に入って睡眠を取ればストレスが軽減されるのですか。でしたら毎日一緒に寝ましょう。」
そう言われて了助はひどく焦った。顔も少し赤くなっている気がした。
「いや、それは、その〜。毎日は、流石に……ね?」
さっきの饒舌はどこへ消えたか、了助はどうしたもんかと考えていた。
毎日一緒に布団で寝ればストレス軽減になるのでしたら、続けたほうがいいと思います。
そう言いくるめられた了助はタジタジになりながらも了承していた。
しょうがない、しょうがないと自分を言い聞かしながら、毎日寝不足になるのかもしれないと思う自分とガッツポーズを取る自分との間に立たされてグニャァとなっている自分を想像をしていた。
朝と昼の静かに流れる時間。結実に1つ質問をする了助。
「結実って1人で買い物をすることってできたよな……?」
「はい、できます。」
「それじゃあ申し訳ないんだが、おつかいを頼んでもいいか?」
「はい、ですが、一緒に行った方がより正確にお買い物ができると思いますが……。」
「んーちょっと高性能アンドロイドとして結実の実力を見たくて……。1人で買い物ができれば完全に生活費を渡してやりくりしてくれた方が俺としてもありがたいし……お願いできる?」
「わかりました、必要なものを教えてくだされば即座に買い付けてきます。」
買い付けるとか業者じゃないんだからと言いつつ了助はメモを取り出して日用品、消耗品、本の単行本などのいくつかの欲しいものをメモ書きをしていく。
最後に1週間分の献立を組み立てながら食品も買ってきて欲しい旨も書き込み、諭吉を何枚か渡して結実を送り出した。
「さてさて、何週間ぶりだがやるかね。」
添い寝の感触を思い出しながらシたいから純愛物かなとシモのオカズフォルダーを開くべくノートPCを立ち上げる。
ティッシュよし、人気なし、いざイかん‼︎と開放をした。
数分後。
ふぅ充実とした時間だった。
と了助が一息ついた瞬間、玄関先で何やら物音がした。
火照りが落ち着いて、心なしかだるくなった体を持ち上げた。
玄関に向かうと雑貨が入ったビニール袋が玄関先に置かれていた。
ビニールの中には了助が頼んだ雑貨や漫画の単行本などが入っていて了助が渡したメモ書きも混ざっていた。
手に取ってみると裏面に何やら書かれているようでみてみる。
『日用品,その他のお買い物ができたので輸送いたしました.
食品も済みましたのであと300秒後に帰宅いたします.
あなたの結実』
と書かれていた、、、
「え、後5分以内で帰ってくるの?」
了助は即座に振り返る。オカズフォルダーと開きっぱなしのPC、生臭い匂いがするティッシュをさっさと処理しなければ‼︎‼︎
おそらく5分は残っていないので焦りつつもPCをシャットダウンして少量ビニール袋に詰めて縛りゴミ箱の奥の奥へと突っ込んだ。
ゴミ箱を閉じた瞬間に結実が帰宅してなんとか功を奏した。
結実をみると1週間分の食料を買ってきたようだった。消費金額も最低限で抑えるおまけ付きで。
どこか結実が誇らしげにみえたので了助は頭を撫でてお礼を伝えた。
その日の夜。
アンドロイドの結実は主人が同じ布団で寝たことを確認したのちに起き上がりゴミ箱へ向かった。
そしてゴミ箱の中の奥に押し込まれたビニール袋を取り出してガサガサと弄っていた。
その後のビニール袋の中身の所在は誰もわからない。