第7話
私はルタに感謝の言葉を告げてから、用意された服を持ち上げる。
「これ、どうやって着るの?」
私がさっきまで着ていたのは捨てられていた白いワンピース1枚だった。
だから盗んできたという服は見たことのない装飾がされていて着方が分からない。
「あ~もう!ちょっとこっち来い!」
ルタに手招きされ、服を持ったまま近づく。
慣れた手つきで服を着せられていく。
「よし、これで着れたな」
白くすべすべとした生地のワンピースを着せられた。
所々に付けられているレースが可愛らしい。
同じようなワンピースでもここまで違うものなのかと驚いてしまう。
「サイズが合っていて良かったよ」
「よく分かったね」
「分からなかったから適当に数着拝借してきて、その中から合いそうなのをさっき選んだ」
リビングに戻ると、机の上に色もサイズもデザインもバラバラな服が散らばっていた。
これら全てルタが私のために選んでくれたと思うと嬉しかった。
「じゃあだいぶ遅くなったが飯にしようか」
「ルタはお風呂入らないの?」
「俺は後で入るからいい」
先程見せてくれたお肉を綺麗になったキッチンに置く。
何か作ってくれるのか座って見つめていれば、彼はゆっくり振り返った。
「そういえば俺はいつも生のまま食べるから料理できねぇわ。焼くだけでいいか?」
「うん!十分だよ!」
ルタが何か呟くとお肉が燃える。
それを見ていたらお腹が鳴ってしまい、慌てて手で押さえるがルタには聞こえてしまったようで笑われた。
恥ずかしくて俯いていると目の前に美味しい匂いがする物が置かれた。
顔を上げれば、そこには焼かれたお肉が切られた状態でお皿に盛られていた。
「飯食うって言ってからだいぶ時間が空いちまったからな。まだあるから好きなだけ食べていいぞ」
「本当!?」
フォークという食器を使いながらお肉を食べれば今まで食べたことのない味がした。
貴族や王族は毎日こんなに美味しいものを食べているのかと思ったら羨ましく思った。
「これ美味しい!」
「塩しか使ってないけれど口に合ったのなら良かったよ」
ルタは向かいの椅子に座って私の様子を眺めていたが、やがて口を開いた。
「お前、これからどうするつもりだ」
「何が?」
「何がって、楽しいこととかクーデターとか言ってただろ?」
「クーデターは起こすよ」
お肉を飲み込んでからキッパリと断言する。
ルタは呆れたような顔をしていたが、すぐに真剣な表情になって話し始めた。
「正直に伝えて申し訳ないが、お前は身分の低い子どもなんだ。大人しくしていろとは言わないが、もう少し自分の命を大切にしてくれ。クーデターなんてバレたら内乱罪で処刑されるだろ」
「そんなことにならないようにするために私はルタと友達になったの」
「…なんでそこまでしてクーデターを起こしたいんだよ」
「この国がおかしいからだよ。上流階級の人間は贅沢ばかりしているのに庶民は食べ物を買うお金も無いくらい貧しい生活をしているの。最近では私たちみたいな身分の人間を攫った人身売買も横行しているんだよ。このままだと皆死んじゃうでしょ。だからその前に私が変える」
「変えてどうすんだ?」