第3話
しばらくして扉が開いた。
出てきたルタは口元を拭いながらこちらに歩いてきた。
「ルタ!」
「おー、良い子にしてたか?」
彼に近づくにつれて強くなる血の匂いに思わず顔を顰めてしまう。
そんな私の頭を撫でながら彼は笑っていた。
「安心しろ、ちゃんと食べてきたから」
「食べたって…あの人たち食べたの!?」
「え、なんだよ。知り合いだったのか?」
「知り合いじゃないけれど…でも食べるなんて」
「知り合いじゃないならいいじゃねぇか。でも不味かったな。ここら辺の人間何食べてるんだよ」
ぶつぶつと呟きながら再び私を抱き上げて片腕に乗せてくれた。
「じゃあ家に入るか」
「もう誰もいないの?」
「あぁ、全員食べた」
事も無げに言う彼に私はそれ以上何も言えなかった。
家の中に入るといくつかは減っているが、見慣れた家具が並んでいる。
しかし壁が所々血が飛んでいたり、床が抜けていたりした。
「…前よりもボロボロになってる」
「そうなのか。たしかにここを裸足で歩くには危ないよな」
ルタは何かを考えていたようだが、私を見上げて言った。
「よし、じゃあ改装していいか?」
「できるの?」
「さっき人間食べたからできる。でも元々の内装を知らないから所々変わるかもしれない。…あと個人的に天井が低くて狭く感じるから上げたい」
最後の言葉は小さくてよく聞こえなかったが、家が綺麗になることは嬉しいことだ。
それにこの家には思い入れはあるものの、思い出は何もなかったから抵抗もなかった。
「うん、お願い」
「任せとけ」
ルタは私の返事を聞くと楽しそうな表情を浮かべた。
その後、彼が何をしているのかはよく分からなかった。
ただ、蔓のようなものが家の壁を這って行ったり、葉っぱのようなものが飛び出たと思ったらそれが家全体を覆ったりしていた。
最後に見た時には大きな花が咲いていたがあれは一体何の花なんだろうか。
不思議に思いながらも私は彼の腕の中で大人しく待っていた。
「終わったぞ」
「わぁ…すごい」
家は先ほどまでの今にも壊れそうな雰囲気はどこにもなく、とても綺麗な姿になっていた。
ルタは私をゆっくり床に降ろしてくれた。
床も裸足で歩いても問題ないほど綺麗に整えられていた。