第2話
「まぁ、死者の蘇生以外ならできることも多いから。それだけ伝えておくな」
重くなりかけた空気を払拭するようにルタはそう言った。
「じゃあお家作れる?」
「家がないのか?」
「お父さんとお母さんが死んじゃった後に知らない大人に取られて追い出されちゃったの。それからは路地裏とかで暮らしてた」
「なるほどな。じゃあそこまで案内してくれよ」
私が裸足なのに気づいたのか抱き上げて曲げられた片腕に乗せてくれた。
「危ないから肩か首を持っておけよ」
「え、歩けるよ?」
「裸足じゃ痛いだろ。お前にその気はなかったとしても俺とお前は契約関係なんだよ。守るぐらいするさ」
先程までは不服そうに騒いでいたが、私の両親がもういないことへの同情や首輪が外れないことへの諦めからか優しくしてくれる。
今は同情でも哀れみでも何でもいいから傍にいてほしかった。
私が黙っていることを了承の意として捉えたのか、ルタはそのまま歩き始めた。
「家はどっちだ?」
「西の方。裏路地にある家だよ」
「分かった」
そのまま路地裏を進んでいく。
途中、何人か寝転がったまま動かない人がいたが衰弱した人かすでに亡くなっている人だろう。
しばらく歩くと懐かしい建物が見えてきた。
落ちないようにルタの首を持っていた手に無意識に力が入ってしまう。
それを感じ取ったのかルタが足を止めた。
「ここか?」
「うん、この家だよ」
「なんていうか…俺の知ってる建築じゃないな」
「え?」
「これどうやって作ってんだ?材料は何だ?」
「作り方は知らないけれど、材料は木だよ」
「俺の知っている建築でも木を使っていたが、この使い方は知らないな」
「もともと別の人が住んでいて、引っ越しするからって貰ったの」
「へぇ…」
ルタは興味深そうに眺めていたが、すぐに私の方に視線を向けた。
「とりあえず中に入ってくるからお前はここで待ってろ」
「待って、危ないよ!私の家だったけれど今はもう取られちゃったから…」
「大丈夫だって。俺がお前より弱いわけねぇだろ」
ルタは私を地面に下ろすとそのまま家に入って行ってしまった。
心配になるも私が行ったところで事態が悪化する未来しか見えないため大人しく待っておくしかなかった。