第25話
朝起きると隣でルタが寝息を立てており、私はというとどうやら彼の腕を抱えたまま眠っていたようだ。
起こすのも申し訳ないと思い、ゆっくりと腕を離して体を動かすも違和感に気付いたのか欠伸をしながらルタが薄く目を開けた。
「起こしちゃってごめんね、おはよう」
「ん~…」
「あれ、ルタ?」
唸るだけで返事のない彼に不安になって名前を呼ぶと、彼は寝返りを打ってうつ伏せになってしまった。
「大丈夫!?体調悪いの!?」
どれだけ体を揺らしても返事がない。
不安になっていると小さな声で何かを言っていることに気づいた。
「もう1回言って!」
「…まど、」
「窓?」
「しめて」
「分かった!」
急いで日光が入り込んでいる窓に近づいてカーテンを閉める。
これでいいかと振り返ると、ルタは横になったままこちらに背を向けて丸まっていた。
「ねぇ本当にどうしたの?」
「あー…辛かった。助かったよ、ありがとう」
掠れた声でようやく反応してくれた。
「目が覚めたら急に日光が辛く感じたんだ。反応できなくて悪かったな」
「ううん、私こそ気づけなくてごめんね。お水持って来ようか?」
「頼む」
キッチンに向かいコップに水を注いで寝室に戻る。
戻る頃にはすでにルタは上半身を起こしており、顔を顰めて座っていた。
「はい」
「ありがとう」
ルタは受け取ったコップの中身を一気に飲み干す。
「ふぅ」
「落ち着いた?」
「あぁ、だいぶ楽にはなった」
「急にどうしちゃったの?昨日変なものでも食べた?」
生物全般を食べるルタが何を変なものとして認識しているかは分からないが、とりあえず聞いてみる。
「そういう感じじゃなくて、吸血鬼の弱点が戻ったみたいな感じなんだよな。日光が苦手とか」
「今も痛い?」
「カーテンを閉めてくれたおかげで今は大丈夫だ。これは予想だが、人間を食べて魔力が増えたから体質が吸血鬼寄りになったんだと思う」
分からないことが多かったため何度も質問をしてやっと理解できた。
まとめると、昨日までは家を改築したり、お湯を沸かしたりと事あるごとに術を使っていたため魔力が減り人間よりの体質になっていたが、昨日生物を食べたことにより魔力が増え吸血鬼寄りの体質になったということらしい。
「私に何かできることある?」
「…今日は休もう。お前もここ最近色々と動きすぎただろ」
そう言うや否やベッドに引きずり込まれる。
突然の行動に驚いていると、ルタの腕の中に収められてしまう。
抵抗しようと思えば簡単に抜け出せるのだが、なんだか離れる気にならなくて大人しく収まっていることにした。
「今日のルタは甘えただね」
「…長生きしてると寂しくもなるんだよ」
抱きしめられながらルタを見る。
「……もしかして疲れてる?」
「お前こういうしんみりした雰囲気でなんてこと言うんだよ」
呆れたように笑うルタを見て安心する。
「疲れてるなら休めばいいもんね」
「たまにはこういう日も大事だろ」
2人で言い訳のようなことを言いながらひたすらにゴロゴロする。