第24話
ルタに背中を洗ってもらい、お風呂もほどほどに出るとルタがタオルを渡してくれた。
「…さっきは変な話をして悪かったな」
「ううん、大事な話だと思うよ。でも私は諦められないの、ごめんね」
ルタが謝ってくるのは意外だったが、私も自分の気持ちを再確認できたから何も問題ない。
濡れたままでは風邪を引くから早く拭けと言われて、慌てて体を拭き終わると柔らかい生地の服を着せてくれた。
リビングに戻ると先ほど氷漬けにされた男たちが転がっていた。
「この人たちどうするの?」
「俺の非常食として2階の空き部屋に凍らせたまま保管しておく」
「氷溶けたりしない?」
「溶けないように術をかけておくから安心しろ。それにもう全員凍死しているから溶けても逃げたりできないな」
そう言いながらルタは術で男たちを浮かばせて2階に運んでいく。
私もついていくために階段を上る。
「そういえば、この人たちが家を外から見て綺麗だって言ってたよ」
「あー、多分俺の魔力切れの影響で目くらましの術が切れたんだな」
ルタは階段の突き当たりの部屋に男たちを並べる。
先程まで生きていた人間が物のように扱われているのを見ても、不思議と悲しいだとか可哀想だとは思わなかった。
「じゃあこの部屋はこれから俺の食料保管庫として使うから勝手に入るなよ」
「ダメなの?」
「腕や足が落ちてるとか嫌だろ」
半ば追い出すように部屋を出されて部屋の扉を閉められる。
「ほら、もう寝るぞ」
「えー」
「色々あったから目が冴えたかもしれねぇがもう寝ろ」
2階の寝室に押し込まれてベッドに横になる。
「寝れない」
「寝れないじゃなくて寝るんだよ」
「ルタも寝ようよ」
「風呂がまだだ」
「明日起きてから入ればいいじゃん」
「血生臭いまま寝たくねぇんだよ」
「じゃあ待ってる」
そう言いベッドの上で膝を抱えて座れば、ルタに意図が伝わったのか彼はそのままお風呂に向かうため階段を下りて行った。
「…本当に起きていたのか」
しばらくして再び開かれた扉に顔を上げれば、呆れた様子のルタがいた。
「約束したもん」
「お前なぁ…」
ルタに来てほしくてベッドの隣と叩く。
仕方がないと言いながらも横に腰掛けてくれるあたり優しいと思う。
「なんだ、寝れるまでお話でもするか?」
「お話でもいいけれど、本を読んでほしいの」
何もしていない時間が暇で、今日買ってもらった本を眺めていたのだがやはり内容を正しく理解したい。
本を見せると思ったより抵抗なく受け取ってくれた。
「じゃあ読むか」
ルタはただ読むだけではなく、絵と共に書かれている文字をなぞりながら読んでくれるため発音と文字の勉強にもなってとても分かりやすかった。
でもいつもとは違う言葉使いと声色に段々と眠くなってしまう。
「…眠いか?」
「うーん…」
「…もう寝ろ。明日続きは読んでやるから」
頭を撫でられながらそう言われ、私は睡魔に負けてしまった。