第22話
ほんの少しの違和感だった。
窓が開いていないはずなのに風が通った。
複数人の気配を感じた。
知らない人からの品定めをするような視線を感じた。
それらは寝ている私を簡単に起こした。
ソファーに横になったまま薄く目を開けると複数人の男が部屋を徘徊していた。
男達は口々に「見つけた」や「子どもだ」などと言っている。
私でも彼らが強盗だということは理解できた。
今動いても捕まるだけということは分かっている。
でもこのまま大人しく家にあるものを漁られるのは不愉快だった。
私は体を起こして、ソファーの上で膝を抱えて丸くなった。
男たちは私が起きていることに気づいたようで近寄ってきた。
1人が私の顔を掴み、無理矢理目を合わせてきた。
「起きたか。お前、この家の子どもか?」
「…」
「何も言わない気か?ならいい。お前ら縄持って来い」
リーダー格であろう男が指示を出すと、他の2人は私の腕を掴んだ。
そのまま床に引き倒される。
「おいガキ、動くんじゃねぇぞ!」
男はナイフをちらつかせて脅してくる。
「何が目的なの?」
「金だよ。ここの家、前までただのボロ屋だったのにいつの間にか綺麗になっていたからな。誰か住んでいるんだろうと思ってきてみたんだよ」
「…そう」
「そしたらこんなに珍しいガキがいたなんてな。紫色の眼球なんて片目だけでも高値がつく」
どうやらこの人達は強盗ついでに私を売ろうとしているらしい。
この白髪だけでも何度も狙われたことがあるというのに、加えて今はルタの目の色が共有されて珍しい色をしているからきっとより高く売れるだろう。
でも今はやりたいこともあるし、簡単に売られる気はない。
とりあえずルタが返ってくるまで時間を稼がないと。
「じゃあ今から痛いことするから寝ておこうか」
先程よりも幾分か優しい声に下がりつつあった視線を上げれば、男は長い棒状のものを振り上げていた。
__あ、死ぬ。
それが振り下ろされることを頭では理解していても、縄で縛られている以上の恐怖のせいで体が動かない。
次に来る衝撃に備えて目を瞑る直前、視界に黒いモヤがかかった。
そのモヤは雑面をつけた店主が案内してくれた水晶の中で、私の腕に絡みついたものとそっくりだった。