第17話
「ほら、こんなことに油を売ってねぇで外行くから着替えろ」
「今日もどこかに行くの?」
「おう。急ぎじゃないが早い方がいいかと思ってな」
そう言いながらルタは昨日買った服と帽子を持ってきてくれた。
また外に出られると思うとわくわくしてくる。
昨日着ていた服よりも着方が分かりやすいものを選んだため、これは1人でも着ることができた。
ルタは私が着替え終わったのを確認すると立ち上がる。
「よし、じゃあ行くか」
「うん!」
昨日と同じようにルタに手を引かれて外へ出た。
「今日はどこへ行くの?」
「本屋だ」
「本って文字が沢山書かれているもののことだよね?」
「そうだな。でも本にも色んな種類があるんだ」
そんな話をしながら連れてこられたのは小さなお店だった。
中に入ると壁一面が棚になっており、そこにぎっしりと書物が並べられている。
「すごい!ここはお金を払って本を買うところなの?」
「その通りだ。この中で気になる本があったら言ってくれ。俺も何冊か見繕うから」
「え、でも私文字読めないから買ってもらっても意味ないよ」
「読めないなら読めるようにすればいい。俺に聞いてくれてもいいしな。でも強制するつもりは全くないから好きに見て来い」
そう言われても本の外側に書いてある文字すら読めない。
ルタ曰く、本の外側に書いてある文字は本の表題らしい。
「もしもお前が文字を学びたいとか本を読みたいとか思った時に手元にあった方がいいだろ?今日はそれを探しに来たんだ」
「そうだったんだ」
「まぁ、とりあえず1人で選んでみてくれ。分からなかったら聞けばいいから」
そう言って私の背中を押してくれる。
正直何も分からないが、とにかく興味のあるものを探せばいいのだ。
そう思って店の奥の方へ行ってみると、そこには他の本よりも絵が多い本が集められていた。
「ルタ~」
「お、良い本が見つかったか?」
別の棚を見ていたルタがこちらに来てくれた。
「この辺りはどんな本なの?」
「この辺は絵本っていうカテゴリーだな。子ども向けに作られた物語に絵をつけて親しみやすくしたものだ。文字だけじゃないから分かりやすいだろうし、挿絵も多いから楽しめるんじゃないか?」
「面白い?」
「それは好みによる」
「分かった。ありがとう」
感謝を伝えるとルタは先ほどまで見ていた棚に戻って行ってしまった。
再び本棚に目を向ける。
何の文字も読めないが、絵がついているだけで大分識別しやすくなった。
これならば文字が読めなくても楽しめる本があるかもしれない。