第14話
しばらくすればキッチンの方からいい匂いがしてきた。
「よし出来た。ほらこっち来い」
テーブルに移動して椅子に座ればルタが何かを持ってきてくれた。
目の前に出された料理は野菜スープとパンだった。
「これ……ルタが作ったの?」
「おう、意外だったか?」
「だって昨日料理は無理だって言ってなかった?」
「無理だから食材買いに行った店の店主におすすめの調理法を聞いたんだよ。一応レシピも貰ったから簡単なものは他にも作れるぜ」
そう言って向かいに座り、頬杖をつくルタの手元に何もないことに気づいて不思議に思っていると察してくれたのか教えてくれた。
「あれ、ルタは食べないの?」
「俺は野菜じゃなくて生物の血肉を食べるから今じゃない方がいいだろ。そのまま食うし」
「私気にしないよ」
「そういう意味じゃなくて、見た目的にもあんまり良くないだろ」
ルタは、気にするな、と言うとスプーンを渡してくれる。
不満は残るものの温かいものは温かい内に食べたい気持ちもあるため、素直に手を合わせてから食事を始める。
野菜スープは野菜がたくさん入っており、味付けも塩だけのシンプルなものだったがとても美味しかった。
パンも固くならずふわっとしていながらもちもちしている。
何より安全な場所での食事がこんなにも美味しいなんて知らなかった。
「美味しいなぁ…」
「そりゃ良かった」
「うん、本当にありがとう」
「食事を楽しむのは人間の特権だと俺は思っているから大切にしろよ」
「ルタは違うの?」
「俺は吸血鬼だからな。味付けとかの概念はあまりないんだよ」
「そうなんだ」
昨日よりも食べやすいからか、あっという間に完食してしまった。
「ありがとう!本当に美味しかった!」
「そうか、これからも作ってやるから苦手な物とかあったら言ってくれよ」
そう言うと、ルタは立ち上がって食器を片付け始めた。
その背中を見つめていると視線を感じたのか振り返る。
「まだ食べたかったか?」
「ううん、何か手伝えることないかなって」
「洗うのも術使ってやるから気にするな」
ルタはそういうと再びキッチンの方に向いてしまう。
動きたくても足が重くて動けない。
仕方がないからソファーの上で膝を抱えて待つことにした。
「終わったぞー」
こちらに近づいてきてくれたルタは隣に座ると私の頭を撫でてきた。
それが気持ちよくて思わず目を細める。
「眠いか?」
「……ちょっとだけ」
「でも風呂入らねぇとな。外出たし」
分かってはいるが満腹になった今では眠気が勝ってしまう。
両腕をルタに伸ばしてみる。
すると意図を理解してくれたのか抱き上げてくれて浴室まで連れていってくれた。
「ほら、服脱げ」
「……」
「寝ーるーなー」
なんとか意識を繋ぎとめて両手を上げると仕方ないとでも言うように脱がせてくれた。
後から聞いた話では、結局入浴中に寝てしまった私の体を拭いたり髪を乾かしたりと全てやっていたらしいが、起きた時にはベッドの中だったため何も覚えていない。