第12話
次に連れて行かれたのは洋服屋だ。
下着類を中心に見ていたのだが、私が目を惹かれたのは帽子だった。
「どうした、帽子が気になるのか?」
「気になるっていうほどじゃないんだけど…」
今の白髪は気に入っているがどうにも目を引くらしく、すでにここに来るまでに色んな視線に刺された。
それに結っていない長い髪も目を引く要因の1つなのだろう。
「あー、帽子じゃなくて髪が気になるのか」
心を読んだかのようにルタは呟く。
「うん…前は気にならなかったけれど、服装変えてから色んな人に見られるからちょっと気になって…でも私が気にしすぎなだけだからいいよ」
「でも気になるんだろ?」
ルタは高い位置にある帽子を取って被せてきた。
私に目線を合わせるようにしゃがんだルタは私に被せた帽子の角度を調節すると、満足そうに笑った。
「帽子も似合うじゃねぇか。いいぞ、買えるぐらいの金はあるから。好きなの選べ」
「いいの?」
「これから何度も外に出るんだし、我慢するようなものでもないからな」
「じゃああの帽子がいい」
ルタに取ってもらったのは白のハットに黒のリボンが巻かれている帽子だった。
私が指差すと、ルタはその帽子を手に取り私に被せてくれた。
「おー、センスいいな。似合ってる。これでいいか?」
「うん!」
会計の為に帽子を脱いでルタに渡し、他の服も数着買うことになった。
「あ、あの……本当にこんなに買っていいの?」
「子どもが遠慮すんなって言ったろ。それに困ったらまた拝借すればいい」
「でも」
「ほら、会計するから大人しくしておけ」
止める間もなく会計を済まされてしまった。
値段は払える範疇だったようで商品を受け取り、問題なく店を出た。