第10話
話もそこそこに1階に降りると、昨日はなかったものが沢山置いてあった。
衣服は勿論、食器や家具など生活に必要なものがほとんど揃っている。
「これ、どうしたの?」
「昨日貴族の所から色んな服貰ってきただろ?サイズが合わなそうなものを売って家具を買ったり、ここから離れた所に住んでいる極悪貴族からがっつり貰ったりした」
「クーデターを起こす前に窃盗で捕まりそうな気がするんだけれど」
「術を使って侵入してるし、ここから離れた貴族の家の家具を狙っている。それにこの家の外見には目くらましの術をかけているからまず見つけられないぞ」
こなれた様に言ってのけるルタがある意味怖い。
それにしても本当に豪華で綺麗な家具ばかりだ。
「これ運ぶの大変じゃなかった?」
「術の応用で家具を浮かせて運んできたから重くない。でも昨日から術を使いすぎてそろそろ限界が来る」
「え、死んじゃうの!?」
「死なないけれど、術を使うためにはまた生物食べないといけない」
椅子に座って天井を見上げてしまうルタの眉間には皺が寄っていた。
たしかに昨日から面倒を見てもらいすぎた。
「…あの、ごめんなさい。私ができることなら何でもするから言って!」
「あ?なんでお前が謝るんだよ」
「昨日からルタに助け続けてもらってて、私から何も返せてないから…迷惑かなって」
「そんなこと気にするな。人間は脆いんだし、お前はまだ子供なんだから大人を頼っておけ。甘え方を覚えるのも大切だぞ」
ルタは勢いよく立ち上がると、机の上に置いてある袋を私に渡してくれた。
重たい袋の中身が気になり開けると、中には沢山のアクセサリーが入っていた。
「んじゃ、それ売りに行こうか」
「私もついて言っていいの?」
「寧ろ一緒に来てくれないと色の好みが分からないからな。ほら」
差し出された手を取って外に出れば、いつもと同じ寂れた街が広がっていた。
家を振り返ると、外は以前の外見のままだった。
「市場はこっちだぞ」
そのまま手を引かれて国の中心部へ向かう。
道中には道端にうずくまり、こちらを見上げる人が何十人もいた。
それを見るのが辛くて思わず目を逸らしてしまった。