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プロローグ

寂れた街の路地裏にある小さなお店。

人ならざるもの、もしくは限りなく人の道から外れた人間のみが見つけることができる店に1人の少女が入っていった。

その店は来店したものによって商品が変わるという何とも変わった店だった。


「こんにちは、お嬢さん。何かお探しですか」


店の奥から出てきた雑面をつけた男性は少女の顔を覗き込んで問いかけた。


「一緒に面白いことをしてくれる友達を探してるの」


少女の返答に雑面からはみ出している男性の口元が弧を描いた。


「ここではご友人は見つかりませんよ。ご友人を探してるならここではなく、」

「ううん、ここで合ってるの。面白いことをしてくれる友達を探してるから」


そう繰り返された男性は口元に指を当てて暫し考えたようだった。

それから少女と目を合わせるようにしゃがんだ。


「お嬢さん、あなたは何をしようとしているのですか?」

「クーデター」

「それはまたどうして」

「…知ったらあなたは協力してくれるの?」


少女の言葉に答えず、男性は立ち上がってから恭しく頭を下げた。


「お客様にとんだご無礼を働きましたこと、深くお詫び申し上げます。本店のお客様の中でお客様ほどお若い方は初めてでしたので何卒お許しください」

「いいよ。でもその代わり最高の友達を紹介して」

「勿論です。ご希望はありますか?」


少女は男性を見上げて笑った。


「強い子が良いなぁ。あと私に忠実な子」

「かしこまりました。少々お待ち下さいませ」


男性が奥へ引っ込むと同時に店内が暗くなり、ここから見えるはずのない星空に変わった。

そして暗闇の中に無数の光が現れた。

しかし少女は無表情でそれを一瞥しただけだった。


「お待たせ致しました。こちらへどうぞ」


声をかけられた少女が振り向くとそこには先程の男性がいた。

しかし、その姿は大きく歪んだもの変わっていた。

少女は一瞬たじろいだが、男性は表情を変えない。


「どうかされましたか?」

「…ううん、なんでもない」


しかしここでそれを尋ねるほど少女は男性に興味がなかった。


「さて、強くて忠誠心のあるご友人でしたよね。ちょうど適任が入ったのですよ」

「でも私お金持ってないの。高い子はやめてね」

「それはちょうど良かった。とある知り合いのツテで入った子でして、無料でいいですよ」

「…そう、ありがとう」


通されたのは台座に水晶玉が置かれているだけの正方形の部屋だった。

部屋の中心に立つように言われた少女はその通りにする。

すると、少女の周りを囲むように様々な姿のものたちが現れた。

狼のような獣人や鬼のような形相をした人間、果てには宙に浮かぶ巨大な目玉など様々だが、それらは何かを訴えていた。

それらは全てこの世のものと思えない異形なものたちばかりであった。


「これは何?」

「何でしょうね。その先に適任がおりますので」

「……分かった」


少女はその先に手を伸ばした。

すると異形なものたちの中から黒いモヤが現れ、それが腕にまとわりつきながら形を成していく。

やがて現れたのは紫の瞳を持つ黒髪の青年だった。


「…あ?誰だお前」

「私はロウスっていうの。今日からあなたには私の友達になってもらうね」

「勝手に決めんな。っていうか、なんだよ友達って」


青年は状況を呑み込めないようで辺りを見回していた。

少女がここからどうすればいいのか悩んでいれば、雑面をつけた男性が首輪のような物を渡してきた。

少女が首輪について尋ねようとした時にはもうすでに男性はこの部屋にいなかった。

青年はと言えば、もう部屋の内装に飽きたのか欠伸をして暇そうにしている。


「ねぇ、楽しいことは好き?」

「は?」


少女の問いに青年は不快そうに眉をひそめた。


「クーデター起こしてこの国めちゃくちゃにしない?」

「お前何言って…」


青年が現れたことにより水晶玉が割れたようだが、青年は気にせずその上に胡坐を組んで座っていた。

だから背の低い少女でも簡単に青年の首に首輪をつけることができた。

金属音をさせ、青年の首に着けられた首輪は少女の手が離れると完全に固定された。


「はい、これであなたは私の友達だよ」

「ふざけんなよ!外すに決まってんだろ!」

「おっ、成功しましたか」


店の奥から雑面をつけた男性が楽しそうにやって来た。


「その首輪は商品との契約の印となっております。お客様が希望する時、またはお客様が亡くなられた時に限り外れる仕組みとなっておりますのでご了承を」

「これももらえるの?」

「勿論でございます」


男性は少女に向かって深々と頭を下げた。


「では、良き出会いとご縁をお祈りしております」

「ありがとう」


雑面をつけた男性が指を鳴らした瞬間、その店は初めからなかったように少女と青年の前から姿を消したのだった。

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