総括の茶会
映像が止まる。あまりの報われなさに、思わず拳を握りしめ、震えていた。
「あんまりじゃないか…」
「そうだね、誰も彼も、力及ばなかった。完璧だったのはキリエだけだったんだ」
フリートの言う通りだ。力が足りなかった。だが力を得るまで世界は待ってはくれなかった。
虚しささえ、心によぎる。
「だが、生きている。生きているんだノーザンの民達は。それは確かな戦果なんだ」
これが正しいのか?誇れる人生なのか?とてもじゃないが尊厳が保たれてるとは思えない。ただの人柱
だ。運命の奴隷じゃないか。
「生きているということはそれだけで意味がある。意味を、与えられるのは生きている間だけだからな」
「意味なんてあるのか?」
「あるさ、未来に託した。今、彼らは受け取っているだろう?どんなに屈辱的でも、どんなに惨めでも、どんなに悲惨でも、こうして僕たちは彼らに意味を考えてあげられるだろう?彼らは確かに必要だったのだと。過去に意味を与えられるのは、その時より未来に生きている者たちだけだよ。今はまだ、分からなくても、いつか永久に残る、歴史という意味を与えられる」
歴史になるのが、そんなに偉いのか。そう考えた時、俺は自分が矛盾したことに気がついた。
何故誇りの為に行きたいのか。それは自分という存在を肯定して欲しいからだ。自分で定義した意味を欲しいからだ。
本当は人は、意味を誰が考えたか、そんな事はどうだっていいんだ。
「意味があることが、本質なんだ」
「そのとおりだよ」
フリートはにっこりと口角を上げて微笑む。
「例え失敗してもいい、自分に出せない答えにたどり着く人はきっと訪れるんだ。だから今を生きる者がするべきことは、未来に生きる者たちへ落ち着いて答えを考えられるようにすることなんだよ」
フリートにそう語られて自分が拳を無意識に力いっぱい握りしめていたことに気付いた。
わずかだか思い出した記憶、それは絶望的な現実に打ちのめされて、過去を呪う自分だ。
俺は、今生きている瞬間の事しか目に入っていなかった。
戦場には投げ出されたわけじゃない。自分で志願したんだ。
それは、それだけ自分の力に自信があった。
誰かが、戦う術を教えてくれたのだろう。
どんな戦い方だったかは思い出せない。
どんな人に教わったかも思い出せない。
でも、それは大いに価値があった。過去は、出来るだけの物をちゃんと持たせてくれていたんだ。
もっと、知りたい。もっと、思い出したい。
きっと、今のままではまだ戻れないから。記憶を思い出しても、帰りたくない。
まだ、学ぶべきことがあるのだから。
「フリート、続きを見せてくれ」
「おーけー。いい顔になったね。いいだろう、ここからがクライマックスだよ」
フリートはティーカップをソーサーにきちんと置いて、映像をまた再生する。




