後始末
全ての目的を果たしたサボタージュ・スクワッドはこれで解散だ。これが元々定められた結末。
「さて、後始末に入ろうか」
ポラリスはサイラスに歩み寄る。
「見ろ、これはお前が招いた結果だ。為政者としてインフラは死活問題だ。気がはやるのも理解できる。しかし我慢が効かぬのでは上に立つ資格は無い」
「身に染みる説教ですな」
「何も急に物を進めるものではない。身に余る力は身を滅ぼすのだ。だから俺が身に合わせた物を与えよう」
ポラリスはギアデバイスを手で操作してホロモニターをサイファの前に映し出す。
「これは、新しいエネルギー供給機関!」
「マギウスクラスタよりもエネルギー効率が良く、安全性は比較にならん。モンスターの素材が山のように要るがそのくらいは冒険者の街なのだからいくらでも集められるだろう」
ついでに技術力もエルノド・ノヴォのレベルに合わせてある。いつかはこの技術もわが物として発展させることも可能だろう。
「今ここに集った協力者たちは紛れもなくお前の協力者、お前に手を貸した責任を果たしに来た者たちだ。必ず復興できる。俺が保障しよう。それに、復興の支援もセントラル行政府から正式に出そう」
「感謝する…!」
サイラスも思いつめていたのだろう、涙が零れ、男泣きする。
ポラリスはそれを見ることもなく翻り、続いてアルトとヘレナのもとの歩み寄る。
「アルト、すまなかったな。真実を、君に伝える機会はいくらでもあった。しかし俺の判断で、黙っていた。真実を話せば君の立場は危うくなっていた。かなりの確率で再会は叶わないと考えていたからだ。だから気持ちの整理がつかないなら、気が晴れないなら俺を殴ってくれてもいい」
ポラリスはこれまでの高貴さ、上の立場を捨て去り頭を差し出すように垂れる。
「頭をあげてください。ヘレナを守ってくれて、ありがとうございます。ありがとうございます」
ポラリスはアルトの頭を撫でる。ヘレナもあやすようにアルトを抱きしめる腕に力を入れる。
ポラリスの目は今日の雲一つない青空のように、静謐で、涼しげで、そして全てを包み込むような、蒼穹のあたたかさを持っていた。
そして全てを終えて防警局の部隊がたどり着いたときにはポラリスとスピカは人知れず姿を消していた。
ゴジョウは首相官邸に栄転し、外交関係の情報を見れるようになった。
そこで見た映像に、一人の少年が世界を相手に演説する映像があった。青い髪、青い目、上下一体の制服姿。
とても強く、とても気高く、そしてとてもやさしい。
あの日の青空を思い起こさせる青。




