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Nadia〜スターライトメモリー〜  作者: しふぞー
義勇に躍るマリオネット 編
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決戦開始

 ポラリスがマギウスクラスタに続く直線上の敵を次々と薙ぎ払っていく。


「壮観だな。まさかこれほどの力を見せてくれるとはね。まるで流れ星のようだな」

「事実、流星(ミーティア)という名の技術(スキル)だ。融合素(フューズ)を全身に巡らせ、活性化させることで身体機能を向上させ融合素(フューズ)の余りあるエネルギーと幻想を実現する性質を完全に完全に使う為の技術だよ。本質は自身の体に融合素(フューズ)を浸透させることにあるがな」


 ポラリスは空中で三角飛びをしてミクティカの背後を取り、袈裟切りにする。そして最後に残る4体のミクティカに向けて剣を四度振り抜く。ポラリスの剣戟の延長線上へエーテルを飛ばす。剣から放出されたエーテルがミクティカの重厚な装甲を貫通して撃破する。


「よし、これで誘引したミクティカはあらかた討伐したかな」

「誘引…なんだと?まさかお前…!」


 ようやくポラリスに追いついたガッシュがポラリスに詰め寄ると何者かが自身の背中を這いあがる感覚が駆け巡る。


「ウワァ!なんだ!?」


 その何者かは自分の頭を飛び越えてポラリスの頭にしがみつく。

 鹿角の生えた兎、ジャッカロープ。


「あっ!モロー!いつの間にかいなくなってたと思ってたら!」

「モローには崩壊領域に突入してすぐに単独でこの領域から発生した星幽(アストラル)をこの通路に誘引させていたんだ。この通路に集めておけば避難誘導は格段にやりやすくなるからな」


 ふてぶてしくそう宣うポラリスに突き合わされたガッシュは目を細めてポラリスを見据える。だがそれ以上に素晴らしい笑顔を見せてくれるモローが目に入ったことで毒気が抜けてしまう。


「まあいい、ともかくもうミクティカはいないんだ。あとは本懐を遂げるだけだ」


 ポラリスはゆっくりと歩いて最後の扉に手をかける。熱さ10cmの鋼鉄のシャッターが扉を切り裂くようにフューズを内部に浸透させて内側から崩壊させる。

 突破されない前提の壁を簡単に突破してポラリスはマギウスクラスタ動力室に入っていく。

 あとからガッシュとスーラが追ってはいるとそこには最後に立ちはだかる男がいた。


「サイラス、やはりここにいたんだな…」

「サイラス・クレイエル。エルノド・ノヴォの首相だな」


 サボタージュ・スクワッドの3人の前に最後に立ちはだかる男、サイラス・クレイエルはかつてエルノド・ノヴォで最も強い冒険者と称されるほどの凄腕冒険者であり、その時代に築いた人脈を武器に政治家へと転身し、一気呵成に首相の地位まで駆け上がり、そして今齢55歳にして既に9年にも及ぶ長い任期を務めあげており、任期制限まで丁度1年となっている。

 そして彼がこれまでの人生の集大成として残すつもりの肝いりの一手こそがマギウスクラスタ建造であった。つまるところの全ての黒幕という存在である。

 サイラスは普段の執務で着用している背広ではなく、槍を片手にまるで使い古した装備を久々に着込んだ冒険者のような姿となっていた。

 いや、おそらくまるでではなくそのものなのだろう。


貫槍(かんそう)のサイラスと呼ばれた日々を思い出すよ。だがもう似合わないな」

「お前は姿こそ変わり果てたが今でも背中を合わせて戦ったあの日々から何も変わっていないようだな」

 

 かつて冒険者として背中を預けて戦った戦友の二人は今は己の得物を向けあう敵になった。だがお互いがお互いの正義を理解し、そしていくら対話しようと平行線が交わることは無い。

 故に彼らが起こす行動は二人とも同じであった。

 二人の言葉が途切れた。その一瞬が決戦の火蓋を切って落とした。

 サイラスがその二つ名の由来になった必殺の突きが一閃。だがその一撃はガッシュが肘の少し上の内部フレームを貫かれたことで左腕を犠牲にしつつ槍を掴んで離さない。ただでやられてたまるかとガッシュも右腕一本でブラスターでチャージしていたエーテルを全て解き放って槍を持つサイラスの右腕を焼き払う。

 二人が共に追撃をせずに一歩引き、それぞれの被害を一時確認する。

 ガッシュは左腕がつながってこそいるが肩より下が動かない。右腕等三肢は無事だがブラスターにチャージしていたエーテルは全て放出し切ってしまったのでしばらくは単発のエーテルブラスターとしての機能のみで戦わなくてはならず、さらに左腕に付けていたバリアシールドが使えなくなってしまった。

 対するサイラスは槍の先が刺さったまま奪われ、持ち手は全損。右手の防具も下腕の半ばから失われ、右腕自体も表面は焼けているが動きはするのでガッシュよりは軽傷だが得物を失ったことで総合的には不利に陥ったと見える。

 咄嗟にスーラとモローを庇いつつ離脱したポラリスは遠巻きに武器を失った敵を見るが彼があまりにも余裕を持っているのを見て隠し玉があると予測しいつでもカバーに入るためにブレードを発振する。


「お前、自分の槍だろ…なんで手入れもしていないんだ?」

「もうそんなものに頼る必要がないからだよ。見せてあげよう、マギウスの力を」

「マギウス…?」


 サイラスが両腕を広げると融合素(フューズ)の輝きに似た黒い光を放ち、右腕が回復していく。それどころかさらに両腕が内側から膨れ上がり、装備が光に飲まれ、全身を覆いつくしていく。

 光はさらに広がり、光は徐々に煙に変わり、サイラスは自ら煙が晴らす。

 龍の腕の付いた上半身に馬の四脚。足して六肢の怪物、サイラスが自ら変身した怪物がそこに立っていた。

 その姿はリーナの巨躯に似た姿だった。


「見よ、この威容を。これが私が手にした力だ」

「お前…まさかマギウスクラスタの本当の目的はこれか!」


 ガッシュはスラスターを吹かして距離を取り、ブラスターを連射する。サイラスは幅広の両腕を交差させて防御する。


「グッ!、思っていたよりも痛いな、古代の遺物(アーティファクト)か?」

「現代の技術らしいぜ!全く機構は理解できないがな!」

「よもやこのムーンストルムの姿になってもダメージがあるとはなァ!」


 しびれを切らしたサイラスは「ハァッ!」という声と気迫と共にマギウスの力でエーテルを全身から放出してブラスターの銃弾を全て弾く。そして四脚で突進し、ガッシュに体当たりする。圧倒的質量と加速度を乗せてガッシュにぶつかり、吹き飛んで壁にたたきるけられる。


「ガッシュ!」


 スーラが壁をずり落ちるガッシュに駆け寄るといつの間にか方に乗っていたモローが回復魔法をかけてくれるが機械の身体には相性が悪いようで効きが悪い。

 そんなかつての戦友を見下ろしてムーンストルムと自称する姿になったサイラスは高笑いをする。


「クハハッ!他愛もないな!ガッシュ!」

「クッ!そんな見るからにロクでもねぇモンに手ェ出しやがって…」

「君も人のことは言えないだろうに」


 全身あちこちを破損して武器も失った上身動きが取れないガッシュと傍のスーラとモローを庇うようにポラリスがサイラスの前に立ちはだかる。


「そりゃそうだけどよ…わりぃポラリス、お前から借りた銃、壊しちまった」

「そんな使い捨ての物なんぞ気にするな。後は俺がやる」


 ポラリスはブレードをサイラスに向けさらに流星(ミーティア)の輝きを纏う。


「すまん…俺の友が年甲斐もなく馬鹿をした。一つ頼みがある」

「聞こう」


 ガッシュは自分の不甲斐なさ、そして敗北した悔しさを精一杯押し留めながら叫ぶ。


「俺の友を、救ってくれ!」

「約束だ、必ず果たしてみせる!」

「救うだと?救いは自ら創るものだ!」


 ポラリスとサイラスが激突する。ムーンストルムの鋭い爪とポラリスのウェポンギアのブレードが衝突し、火花を散らす。


「自助努力にも限界はあるということは指導者であるあなたもお分かりだろう」

「若造が何を分かったように言うのだ」

「無論、政治だよ」


 ポラリスはフューズを操作したうえで力を込めてサイラスを弾き飛ばす。ポラリスは自分の何倍もの体躯をサイラスを力比べで上回り、超常の腕力を見せつける。


「俺は世界を救う。救世の為にこの力を振るう」


 ポラリスが剣を掲げてそう宣言する。

 ポラリスがそう宣言すると同時に分かれて行動していたスピカたちも動力室に突入し、サボタージュ・スクワッドが並び立つ。

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