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Nadia〜スターライトメモリー〜  作者: しふぞー
義勇に躍るマリオネット 編
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サボタージュ・スクワッド

「ロスト(消失)ギアに虚数(マイナス)レーダー?こんな超科学技術を完成させて運用させているどころか量産までしているの!?あなたたちの科学力に比べれば私たちの科学力は石器時代ね…」

「もはや人間の体より思い通りに動かせるようになるとは…うーむバランサーサポートシステム一つでここまで変わるのか!他のソフトウェアは無いのか!?」


 証拠隠滅と認識阻害を施した後ポラリスがセーフハウスに連れ帰ってきた二人はそこでアニムスの技術力に驚嘆していた。


虚数(マイナス)レーダーは各ギアデバイスに搭載できるほど小型化は出来てはいないんだ。古代文明(ギャラクシー)全盛期でも各天文台…特殊観測基地に設置することしかできなかったんだ。今使ってるのは全部当時の物を修理しただけさ。新造はまだ上手くいっては無いんだ。ロストギアは量産こそ再開できたがこれも過去の遺物の解析や詳細なデータをサルベージしただけで俺たちの文明が開発できたわけじゃない。結局俺たちは技術ともども過去の文明の残骸そのものでしかないのさ」


 ポラリスはギアデバイスで何か操作をしながら軽く言い放つ。


「残骸というより残党ね。古代文明(ギャラクシー)は完全には滅んでいなかったっていうわけね。さすが語り継がれる唯一の限界文明、派手に爆発四散してもただじゃ置かないどころか完全復活まで視野にしれれるなんて、しぶといわ」

「完全復活は不可能だ」


 ヴルカはお手上げといったふうに理解を諦めた。だが当のポラリスは納得がいっていないようだ。


古代文明(ギャラクシー)は確かに完全無欠の理想郷だった。争いばかりの人間たちが紆余曲折を経て万人を真に認める世界を作り上げた。それは歴史的な事実だ。だがそれが可能だったのは時代的な背景、何よりいくつもの奇跡があったから実現したものだ。データがあるからとはいえ今から同じことをしてもそれはただの地獄絵図にしかならん。だからこそ、俺たちは新しい平和の形を模索しなくてはならないんだ」


 ポラリスに同意するというふうにスピカも(うやうや)しくうなずく。


「それはそれとして、あるものは使わせてもらうけどな。物も…人もな」

「まあ、どんなにいい道具があっても使う人次第よ」

 

 負け惜しみのようにそうこぼすヴルカを見ながらポラリスは微笑みを浮かべる。二人の見た目は大人になりきれぬ子供のまま、そしてその姿に似合う言い合いをする大人たちの上を羽毛の生えた飛竜が舞う。ポラリスの頭の上にしがみつくように着地して羽をパタパタとしながらポラリスの頭を揺さぶる。


「その毛の生えたトカゲ、何か言いたそうね」

「そういえば紹介していなかったな。()()はリーナ、元はヘレナという名の学生だった…人間だよ」


 いつも通りの口調でつい軽口で言ってしまったヴルカは自分の失言を恥じる。


「彼女はマギウスクラスタを中心に発生している何らかの異常を受けて彼女は飛竜に似た姿に変貌した。当時は家屋に匹敵するサイズだったがスピカの術式によって身体をこのサイズに抑えている。元の体に戻すこと自体は難しくなく、今すぐにでもできるが残念ながら根本的な原因を取り除けない限り戻ってすぐにまたこの姿に戻ることになる」

「そう…あなたも被害者なのね…」


 ヴルカは申し訳なさそうな表情でリーナを撫でる。


「とりあえずは今後の作戦に支障をきたすことが予想されたため仮の名をつけさせてもらった。以後はリーナで通してくれ」


 リーナは天を向いてキュウと鳴く。下を向くよりも上を向くという意思を見せつけているかのようだ。


「そしてこっちがヴルカ」

「ええ、私はマギウスクラスタ起動術式管理主任、ヴルカ。魔法術式の専門家よ」


 カーテシーに似た独特な挨拶をするヴルカ。


「こっちの歩行戦闘機がガッシュ」

「おう、俺はガッシュ。元は防警局の特殊部隊に所属していたがいろいろあって今はロボットだ。よろしくな」


 ガッシュは頼もしそうに鋼鉄の胸を叩いて頼りない金属音を鳴らす。

 エルノド・ノヴォの現地組が紹介し終わりアニムスの二人組にターンが回る。


「私はアニムスのソルジャーにして奏主の従者、スピカです。些事雑務は私に申し付けください」


 スピカはくるりと1回転してお辞儀をする。フューズを発光させて一時的に着飾る。


「俺はアニムスの奏主、ポラリス。此度(こたび)の作戦の責任者である」


 ポラリスは一人上座に座り目を据えながら揃うメンバーを見回す。そして再び覇気を纏い告げる。


「今ひとたび、事態を収拾するために協力を要請する」


 後にサボタージュ・スクワッドと呼ばれるチームがこの日結成された。

 その集会の終わり3人がそれぞれの形で寝静まったあと、ポラリスとスピカは隠れてイ・ラプセル天文台と通信していた。


「で、どうだったんだ。アクルクス」


 モニターに映るブロンドベージュの少年はポラリスとさほど変わらぬ体躯や年齢にもかかわらず権威を示す深紅の制服を着こなしていた。


『君の予想通りだと思うよ。エルノド・ノヴォを襲う災厄の正体はマギウスクラスタで確定したよ。研究所から奪取したデータと協力者から受け取ったデータを解析した結果様々な形で人体に甚大な影響与えていることが分かった上、そもそもこれは禁忌を侵す存在になることも前提で作られているんだよ』

「つまり、悪意を持つ何者かの介入があるということですか?」


 スピカの予想に同意するようにアクルクスもまた頷く。


「どちらにせよまず目指すのはマギウスクラスタの破壊だ。それをなすために降りかかる火の粉はすべて振り払う。それだけだ」


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