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Nadia〜スターライトメモリー〜  作者: しふぞー
蒼穹の三騎士  編
103/123

防衛戦線

 セイファートの通達を聞いていたのはサポーター達も同じだった。

 彼らはルスカの指示で再集合してホシガミを指揮しながら撤退戦を繰り広げていた。

 蛇腹剣「スコーピウス」を振り回すレサトとフライトユニット「白の王女(ホワイト・プリンセス)」で縦横無尽に暴れ回るセラスの二人のソルジャーを中心にサポーター達がヴィクターを迎え撃つ。

 最前列でアタッカーを務めるのはチーム・ケレスのハンニバルとチーム・ハルトのメレフの2人だ。それぞれ槍と大剣という近接戦闘用の武器の中でも攻撃力に優れるが反面受けに回ると脆さがある攻撃偏重スタイルだ。

 そしてその二人の中間でバランスを取るのがレサトだ。蛇腹剣はリーチにも優れ、取り回しが良いため守りにも隙がない。

 そしてその前衛2人を援護するのは術式攻撃を得意とし、中遠距離で戦えるチーム・ケレスのカチューシャとチーム・ルスカ唯一のサポーターであるアマルテアの2人だ。

 氷と水はそれぞれ相性が良く、水が氷の走る道となり、水を広げて一面を凍らせるのも容易い。

 二人のが並んで戦うことは滅多に無いはずだが、連携は完璧であった。

 そして最奥から空を自由に舞って遊撃に回っているチーム・ハルトのセラスと分析、索敵に特化したアンリが自由に飛ぶ。

 全員のデータリンクをつつがなく行うのは現場にはいない、チーム・ケレスの専属オペレーターであるウェンデリン。

 更に分析官としてセイファートも控えている。

 体勢は盤石だ。

 ケレスとハルトにマギウスの大半が殲滅されてしまったがそれでもまだ数名が残っている。ヴィクターはここでマギウスを使い潰してでもアニムスの戦力を削るつもりで惜しげも無く突撃させてきていた。


「ハンニバル、右だ。カチューシャ、左上のテラスを破壊しろ」


 レサトが矢継ぎ早に指示を飛ばす。フードを深く被っている為視界はかなり制限されているはずだがまるで意に介さないように全てを見抜いて指示を出していた。

 指示を聞いたハンニバルがノータイムで右に向かって突撃し、カチューシャは氷塊ををいくつも落としてテラスを崩壊させていく。

 ハンニバルは丁度背後へと回り込もうとしていたヴィクター兵達を見つけ、狭所で逃げ場を無くした兵士たちは逃げることもままならずにハンニバルに殲滅されていく。

 カチューシャが落としたテラスからは狙撃しようとしていたヴィクター兵が何人も崩壊していく瓦礫と共に落下していく。

 熱量を見れば人の位置などすぐにわかる。簡単なセンサーをばら撒いておけば裏を取ろうとしてもすぐに気が付く。

 さらに攻め手を一つ失ったヴィクターの指揮官は無謀な突撃以外の手を思いつかなくなっていた。

 特に、機動力の差は顕著であった。アニムスの者たちが一歩後退する間にヴィクター兵の5歩分移動する。当然、追いつけるはずもない。

 そして機動力のある歩行戦闘機(ウォーカー)は緒戦の時点であらかた全滅させられており、最早この戦場には1台も持ち込めてはいなかった。

 結果例えハンニバルやメレフが数秒取り残されてもあっという間に救出するほど圧倒的だった。

 

「上から狙おうとしても無駄よ!」


 そしてビル群の高さを活かして上から狙おうとするヴィクター兵はセラスが探し出しては火砲で砲撃してフロアごと破壊し、崩落させ、何棟かはビルそのものが倒壊していく。

 しかしホシガミ達をたおした部隊が次々と合流するのでヴィクターの戦力は何時まで経っても減ることはない。ただ流血と犠牲だけが一歩的に積みあがっていく。

 現場ではその状況が認識できなくとも、外から見ればその状況の異常性は一目瞭然だ。そして、彼らは結局最後の戦力の投入を決めた。

 それがルスカの最後のトラップだと気が付かずに。


『総員警戒、揚陸艇が一隻崩壊領域内に侵入!』


 ウェンデリンの警告を聞いてアンリが揚陸艇を視認できるように高度を上げる。

 彼の視界に入ったのはこれまでにケレスとハルトが破壊して回っていた兵士を輸送するためだけの揚陸艇ではなく、ある程度の飛行を可能とする形状の速く、遠くへと人を運ぶ揚陸艇。

 つまり数ではなく質を目的としているということだ。


「まさか!追加のマギウスか!」


 既にソルジャー・ハルトが二人の上級マギウスと交戦し、一度は意識喪失まで追い詰められたという情報は共有されている。

 しかし、アニムスの情報網では今回の作戦において、二人の警戒度はさほど高くない。

 それは、残るマギウスが相対的に二人を霞ませるほど危険だからだ。

 まだ揚陸艇がビルよりも高い場所を飛んでいるにも関わらず、二人分の影が飛び出した。初めから揚陸艇は使い捨てにするつもりだったのだ。

 一人は煙に揺られながらゆっくりと降下しているがもう一人は空中で急加速してアンリに接近してくる。


「ユークリッド・ヴァーミリオン、現着。交戦開始」


 銀髪の青年はフライトユニットに似た装備を展開してアンリの目の前まで接近する。

 アンリは咄嗟にバリアシールドを展開して身を固め。

 だが一撃でそのシールドが破壊され、フライトユニットの装甲が半壊して飛行能力を損失する。


「アンリ君!大丈夫!?」


 ビルに衝突する前にセラスがフューズでクッションを作って減速させつつ回収する。

 そしてそのまま降下して地上で防陣を組むレサト達に合流する。

 セラスが急いでアンリの状態を確認するが衝撃で揺さぶられ、装備が破損しただけで彼のグラフトボディには殆どダメージが入っていなかった。

 ユークリッドはそのまま防陣へと一直線に突撃してくる。


「甘い」


 トン、と音もなく跳び上がったレサトがスコーピウスを伸ばしてうねらせる。

 柔軟に、しかし強靭な刃はユークリッドの拳を絡め取り、レサトにベクトルを変えられてビルに直撃して突き刺さった。

 しかしユークリッドはただでは済まさなかった。

 ビルが、一撃でへし折れるようにして崩壊し、瓦礫の大半がレサト達の頭上に落ちてくる。

 全員で一斉にバリアを展開し、なんとか防ごうとするがその質量は膨大だ。

 セラスは退避を考えたが既に退路はヴィクターに抑えられている。


「小癪な」


 レサトは蛇腹剣を更にうねらせ、幾千もの飛刃でビルを砕いていく。


「後は私がやるわ!」 


 アンリを降ろしたセラスが左腕に直接装着するように出力した大型ビーム砲「サンスクリット」を上空へと構えてレサトが砕いた部分へ向けて発射する。

 再び真ん中で折れたビルはサンスクリットの着弾の衝撃で連鎖的に砕け、極太ビームに薙ぎ払われて焼失した。

 瓦礫の粉塵が舞い、ヴィクター達が崩落の危険を省みずに包囲するように展開する。 

 煙が晴れる頃、レサトとセラスが見上げた先に折れたビルの残りの部分にに仁王立ちするユークリッドの姿があった。

 ユークリッドは手鋼からビームの刃を発振して一直線に再び突撃してくる。

 今度はレサトの蛇腹剣を掻い潜って来るつもりのようだ。

 だがその刃をレサトが対処する必要はなかった。

 空を駆ける一筋の流星、銀髪のユークリッドを抑えるのは金髪のケレスだった。

 細身の剣で受け止め、受け流しては首へと刃が迫るがユークリッドが突撃を諦め空中で身をよじって躱す。

 

「これ以上は無理だな」

「ああ、土台無理な話だ」


 二人は同時に着地してそして同時に構える。


「部下たちの仇討ち、させてもらうよ」

「そうやすやすと討たせるものか」



 

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