日常のボケ
私は日常的によくボケる。
用事をするため外へ出てから『何をするんだったっけ?』みたいなことはしょっちゅうである。
味噌汁とラーメンを同時に作るようなこともよくある。
仕事前に「スマホだけは忘れないように持って行こう」と思った時は必ずスマホを忘れる。
『何か忘れてるような気がする……』と思った時は大抵ほんとうに大事なことを忘れているが、思い出すことができず、忘れないようメモをつける習慣をつけても、メモをする直前に何をメモするんだったか忘れる。
これでも昔よりはかなりマシになった。昔の話はしたくないぐらいだ。それでもいまだにやはり、ボケてしまうのが私である。
今日も大きくボケた。
仕事帰りにスーパーに寄ったら山菜の水煮が安かった。
『よし、今夜は山菜炊き込みご飯にしよう』
『炊き込みご飯にはメンチカツが合うんだよな(個人的趣向)。惣菜コーナーでメンチカツも買って帰ろうっと』
そして山菜の水煮をカゴに入れ、他にも『あっ、これ安い!』と思うものを発見した瞬間、メンチカツを買うことを忘れていた。
家に帰り、早速山菜炊き込みご飯を作った。メンチカツのことはその時に思い出したが、諦めた。
鶏肉とこんにゃくが冷蔵庫にあったので、あとは山菜を加えるだけ。油揚げも欲しかったが、ないので我慢した。
お米を研いで、具を入れて、炊飯のスイッチを押す。
健康のため白米に混ぜようと思って買っておいた押し麦があった。それはずっと開封すらされずに炊飯器の隣にあるが、また入れ忘れた。
炊きあがるまでスマホでトランプゲームをして遊んだ。ずっと気がついていなかった。
そのことに気がついたのは、炊きあがりを知らせる炊飯器のメロディーを聞いた直後だった。
『あ。炊きあがったな』
『……あれ?』
『あたし、味つけ、したっけ……?』
していなかった。
蓋を開けると見事に真っ白なごはんの上に具だけが乗っていた。
塩を振ればまあ、食べられる。
でも私は『炊き込みご飯』が食べたかったのだ。
半べそをかきながらも諦めない強い表情で、戦う決意をした。炊きあがったごはんにだしの素を入れ、醤油と酒を入れ、しゃもじでかき混ぜて、蓋を閉めた。
そんな炊き込みご飯の作り方はやったことがなかった。たぶん、ただの醤油かけごはん(具入り)みたいになるんだろうな。
そう思いながら1時間寝かせた。
奇跡的にごはんに味が染み込んで、ちゃんとした炊き込みご飯になることを願って。
願えば叶うものだ。
1時間後に茶碗に盛りつけたそれは、しっかりと炊き込みご飯の見た目になっていた。
一口食べて、思わず声が出た。
「おいしい!」
日常のボケは厄介なものだ。
しかし、ボケたからこそ発見できることもある。
私は新しい炊き込みご飯の作り方を発見したのだ。←
しかし写真にしてみたらやっぱり美味しそうに見えなかった……。
『見ないであげてー!』
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うちのフェレットの夏くん