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第六話 いい具合に悪い噂が立っているようですわね

 わたくしについての悪い噂が立ち始めたのは、それからまもなくのことでした。

 たまたま友人の令嬢から聞いた話なのですけれど。


 エミリ男爵令嬢が噴水に落ちられたそうなのです。

 びしょ濡れになってしまわれた彼女を、王子様が見かけて助け上げたそうですわ。

 そして……エミリ嬢を突き落としたのがわたくしではないかという憶測が広まっているらしいですの。


 わたくしは以前から少し上から目線に物を言っていましたし、それはたくさんの生徒たちが目撃しているはずですから、疑われるのは当然のことでしょう。

 噴水には『誤って』転落することはあり得ないですしね。


「エミリ嬢、なかなかやってくださるじゃないの」


 わたくしの言葉のおかげか、ヒロイン役になることを受け入れ、そしてヒロインらしく『いじめられている』構図を作ろうだなんて。

 自作自演までなさるとは思いませんでしたわ。わたくしが悪口を叩いている、程度に作り替えられた噂が流れると思っていましたのに。


 でも確かに、噴水に突き落とすような悪行でしたらばすぐに広まるでしょうしね。

 エミリ嬢の行動はわたくしにとって非常に好都合でしたわ。


 目撃者が王子様という点も非常に嬉しいことです。

 きっと王子様はエミリ嬢を哀れに思うのではないかしら。そうなれば、わたくしを疑うようになるのも時間の問題ですわね。


 エミリ男爵令嬢のおかげで意外にスムーズに進みそうですわ。



* * * * * * * * * * * * * * *



「エミリ嬢。変な噂を流すのはおやめくださいまし。わたくしがあなたを噴水に突き落としただなんて嘘でしょう。わたくしの責任にして王子様の心を惹きつけようとしていますのね」


 わたくしはエミリ嬢に詰め寄っていましたわ。

 これはあくまでポーズ。普通、やってもいないことをやったと言われたら怒るのは当然でしょう? それを装わないと、後で無実だと知れた時に逆に変に思われてしまいますわ。


「噂? 何のことです?」


「ふざけないでくださいます? わたくし、迷惑をしておりますの」


「ああ。あの馬鹿げた噂ですか。私、自分で落ちたんです。なのにみんな騒ぎ立てて……」


 あら。本当にヒロイン演技がうまいこと。

 ……もしかしてわたくしの作戦に勘づいていないかしらと思ってしまうほど、わたくしの理想のヒロインを演じてくださっていますわ。


 あくまで自分は噂を流していないと言い張る。

 いいえ実際、彼女自身は何も言っていないのでしょう。ただ周囲が騒ぎ立てているだけ。


 王妃というわたくしの立場に憧れ、王子様をものにしたがっているであろう彼女にとって、ヒロイン役は非常に嬉しいことでしょう。

 ええ、ええ。将来の王妃の立場などわたくしは要りませんのでいくらでもどうぞ。あなたは健気なヒロインであり続けてくださいませね。


 わたくしは「くだらない」と吐き捨てると、そっとその場を立ち去りましたの。

 これで周囲に意地悪な令嬢として認識され出せば、わたくしの目的にまた一歩近づけるはずですわ。



* * * * * * * * * * * * * * *



 卒業パーティーまで後五ヶ月。

 わたくしはその日を夢見ながら、着々と準備を進めるのです。


 パトリック殿下とは時々お会いして、もうすぐで友人関係を築けるはずですわ。

 エミリ嬢の貢献もありますし、わたくしの疑惑については何の問題もないでしょう。

 後は王子様の信頼をじっくりと失わせていけばいい。それだけですわ。


 何もかもが順調に言っているようにわたくしは思っておりました。

 しかしそれが大きな誤算だったと気付くのは、もっと後のことなのです。

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