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第十二話 男爵令嬢が断罪されていますわよ!?

「……?」わたくしは、思わず黙り込むことしかできませんでしたわ。


 『エミリ……男爵令嬢。君の言葉は間違っている。君は、嘘つきだ!』

 一体何の冗談なのかしら。王子様、断罪されるべくはわたくしでしょう?


 エミリ嬢も戸惑った様子ですわ。


「え? アンドレ様、でも、私っ……」


「言い訳無用だよ。僕には証拠がたくさんあるんだからね」


 しょ、証拠!?

 でもそれはおかしいですわ。だって、わたくしが証拠を握らせたのはパトリック殿下で、決して王子様ではないのに。

 その時わたくしは、とある可能性に辿り着きましたの。

 冷静に考えればすぐわかることですわ。パトリック殿下が、王子様に『バラした』んですのよ。


 わたくしは、遠くでこちらを凝視しておられるパトリック殿下を睨みつけました。

 黒髪黒瞳、いつも通りの美しいお姿。それは今は少しだけ憎たらしく見えたんですの。


 エミリ男爵令嬢の必死な抵抗は続きます。


「私が嘘つきってどういうことですか!? 嘘つきは、プレンデーア様です!」


「いいや違う。僕のデーアはそんなことしないよ」


 そう言って王子様はエミリ嬢から目を逸らし、パーティー会場にいるみなさんに問いかけましたの。


「一度でも、エミリ嬢がいじめに遭っているところを見たことがある者はいるか?」


 この場の全員が、ただただ沈黙いたしました。

 彼らは後日の裁判でこのやり取りが行われると思っていたのかして、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていらっしゃいますわ。


 ……つまり、当然ながらではありますけれどもわたくしがエミリ嬢を虐めたという目撃情報はないわけでございますね。


「で、でも、それはプレンデーア様がっ! 二人きりの時だけいじめしてたんです!」


「ギャアギャア叫ぶのはみっともないよ。僕は知ってるんだから」


 王子様は少し悪戯っぽく微笑まれました。

 そして、言ったのです。


「君が犯行時刻と証言した時、デーアは決まってパトリック皇太子と話していたと聞いている。パトリック皇太子、間違いはないかい?」


 ここでパトリック殿下キター!

 わたくしは心の中ではしたなく叫んでしまいましたわ。心臓が早鐘を打ち始めます。


 王子様の横までお進みになられたパトリック殿下は、こう証言なさいました。


「俺は神に誓って嘘は吐かないと宣言しよう。その上で。……エミリ男爵令嬢がいじめを受けたとされる時間を彼女本人から聞いてまとめたところによる犯行時刻に、プレンデーア公爵令嬢は決まって俺と話をしていた。それは俺以外の学園の者だって見たことのある光景だし、集めれば証言はたくさんある。エミリ男爵令嬢がいじめを受けていたとしても、断じてプレンデーア公爵令嬢の仕業ではない」


「でも! 本当に階段から突き落とされたの!」


「あれは自分で落ちたのだろう。俺はこっそり君を尾行していたんだ。自分から階段を頃蹴り落ちていく様子もきちんと見ていたぞ」


「ぐぬっ……!」


 ああ、かっこいいですわ。

 わたくしはうっとりいたしました。でも……。


 男爵令嬢が断罪されてしまっては、わたくしはパトリック殿下と結婚ができません!


 わたくしは慌てて言いました。


「ええ。ええ。そうですわ。けれども、わたくしは周囲から疑われております。冤罪なのにですわ。冤罪で疑いをかけられるほど信頼の薄いわたくしが、この王国の妃として務まるはずがございません。ですからわたくしを……」


「――君との婚約破棄はしない」


 まくし立てるわたくしをまっすぐ見つめて、王子様はおっしゃいましたの。

 わたくしはその言葉に唖然となり、そして口をぱくぱくさせるしかありません。


 婚約破棄……しない?

 なら、なら。わたくしは……!


 一方で、エミリ男爵令嬢は泣き出していらっしゃいましたわ。


「そんな! ご、ごめんなさいっ、私、アンドレ様の横にいるプレンデーア様が羨ましくてっ、だから!」


「やっぱりそうか。君がどんなに企んだとしても僕の妃になれるのはデーアだけだ。悪かったね。……僕は君を許さない。男爵家が裁判を取り消したとしても、君を処刑しよう」


 わたくしは状況についていくので精一杯で、もはや何が何だかわからなくなってしまっておりましたわ。

 ただ一つだけわかっていたのは……わたくしが半年間作り上げてきたはずのこの舞台が、王子様一人の手によって大きく崩れ出しているということでしたの。

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