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第一話 わたくし、実は……

 わたくしが自分の感情に気づいたのは、あの方と出会ってまもなくのことでしたわ。


 頬が高揚し火照るような感覚、そして激しく高鳴る胸の鼓動。

 わたくしは決して鈍感ではない自覚がある。だからすぐにわかりましたの。


 ……ああ、わたくし、噂の『恋』をしてしまったのですわ、と。



* * * * * * * * * * * * * * *



 『貴族は恋をしてはならない』。それは上級下級に関わらず、貴族の暗黙のルールとなっていますの。昔から貴族は、結婚相手を親に選ばれるのが普通なのです。

 そして、王国の公爵家の一人娘であるこのわたくし、プレンデーアももちろん例外ではありませんわ。


 ですが貴族とて人間。人間は生物としての本能を兼ね備えておりましてよ。

 恋もすれば愛することもある。それは愚かなこととされていますけれど、わたくしはそうは思いません。


 実際に平民に恋して駆け落ちした貴族のことなども、わたくしは一度も嫌に思ったことがありませんわ。


 けれどもやはり貴族令嬢というのは、大抵政略の駒として使われるものですわ。政略であっても、別にわたくし自身は構わないつもりでした。

 しかし近頃、その考えが大きく変わりましたの。


 わたくしが恋したお相手、それは隣国の皇太子であらせられますパトリック殿下です。

 黒々とした輝かしい御髪、髪色と同じの深い色の瞳、凛々しいお顔立ち、声。

 何もかもがうっとりするような美しさでした。わたくしの通う王立学園に隣国から留学していらっしゃったという彼を一目見るなり、わたくしの胸はかつてないほどに熱を持ったのです。


 さらに少しだけですが言葉を交わせる機会もあり、その時にわたくしは彼のことが本気で好きになってしまったんですの。


 この方とお話ししたい。傍にいたい。


 こんな気持ちを抱いたのは人生で初めてでした。

 もちろん最初は戸惑いました。何かの勘違いだろうとも思ってのですけれど、この気持ちはどうにも抑えられず日に日に高まっていくばかりですわ。


 もっとお声を聞いていたい。

 学園の中で毎日のように彼を探し、見つけてはじっと眺めてしまいます。

 パトリック殿下と手を繋げたら……なんて妄想してしまうくらい重症ですの。ハッとなって後で恥ずかしくなりますわ。


 わたくし、一体どうしたらいいのでしょう?

 本当ならば今すぐにでもあの方に声をかけたい。けれどわたくしはそれを許される立場ではありません。


 ――実は、わたくしはすでに婚約者を持っていますのよ。

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