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第七十七話 存在

知らないうちに評価が300ポイントになっててびっくりしました。いつもありがとうございます!


「ねえ、そういや、あなた、ラプラスを使って私のことを盗撮してたでしょ。どういうつもり?」


「チッ、アイツ......バラすなって言ったのに。俺の目が届かないところでお前が悪事を働いてないか、監視してただけだよ」


「そう。なら、大したモノは撮れなかったでしょう? 消して」


「......おらよ」


 俺はスマホの画面をステラに見せながらラプラスから送られてきたステラの隠し撮りを消した。


「それじゃ駄目。パソコンに移しているかもしれないし、ネット上に保存しているかもしれない。ちゃんと見せて」


 と、言いながらステラは俺のスマホを取ろうとしてきた。俺は彼女にスマホを取られないよう、直ぐにそのスマホをポケットにしまう。


「めんどくせえんだよ! 大体、俺がお前の隠し撮りを保存しておく意味なんてねえだろ! それとも、なんだア? テメエは自分の隠し撮りにそんだけの価値があるっていうのか!?」


「っ、それは......」


「な? そういうことだ。別にお前が猫をにゃんにゃん言いながら追いかけてる映像なんて俺にとっちゃどうでも良い映像なんだよ」


 実はドライブに保存し、パソコンに保存し、何ならUSBにもコピーを入れてあるが。


「......私を辱めるとは良い度胸だね」


「猫、飼うか?」


 俺が間髪入れずにそう聞くとステラは眉をピクピク動かし、暫し考え込んだ後、微笑を浮かべた。


「......これ以上、ペットが増えてもね」


「そう来るか」


「......それに、私に動物を飼う資格なんて、無いわ。何かの拍子で殺したら、あなた、怒るでしょう」


「そりゃな。殺すなら俺を殺して欲しい」


「だから、動物は飼わない。......後、今の台詞をあなたの妹が聞いたら悲しむよ」


「・・・・」


 はっきり言って、ブラック企業から解放され、由香とも再会を果たした俺に死ぬ理由は全く無い様に思える。しかし、やはり、時たま不安で堪らなくなったり、無性に死にたくなることがある。だからといって、自殺は嫌だ。死ぬなら、ステラに殺されたい。

 ステラになら、殺されても幸せに死ねると思う。


「ねえ、もし、あなたが私に殺されるなら、どんな殺され方が良い? 絞殺? 刺殺? 捕食でも良いし、腹上死や単なる吸精死でも良いよ」


「......なるべく、痛くないのにしてほしい」


「へえ、意外だね」


「何処がだよ」


「あなた、痛いの平気な人だと思ってた。自分の腕を切ったり、災厄に斬られても平気でいる人だし」


「馬鹿じゃねえのかテメエ。腕切ったのはテメエの言いなりにならねえ為だし、災厄のは不可抗力だ。大体、俺がテメエを召喚したのも無痛で殺してもらう為だったしな」


 そんな俺の言葉をステラは目を丸くしながら聞く。そして、クスクスと小さな声で可愛らしく艶やかに笑い始めた。


「つまり、本来、あなたは自分の為でも痛い思いをするのが嫌な人なのに、私の為なら痛くても平気なんだ」


「オイ待て......何故、そうなった」


「あなたが自分の腕を切り付けたのは、私を殺したくなかったから。あなたが災厄に斬られるようなことになったのは、私をさっさと捨て置かなかったからでしょう?」


「......そうなるのか」


「下等生物の癖して、生意気な口を叩いてくる、愚か者のあなたを私がそう簡単に殺さないのはそういうところが理由」


「なあ、ステラ」


「ん?」


「お前直ぐ下等生物、下等生物って言ってるけどさ、そんなんだから人間の友達出来ねえんじゃねえのか。......違うな。元より、悪魔の友達もロッテしか居ねえよな。それもロッテは自然に出来た友達というより環境のお陰で出来たような友達だし」


「......っ!?」


 俺の言葉にステラが目を見開き、眉間に皺寄せた。『ドゥクシッ!』という音が何処からともなく聞こえてきた気がする。


「......ふふ、んふふ、ふふっ。あ、あなただって、友達、そんなに居ないじゃない」


 めっちゃ動揺してるしブチ切れられた。


「まーな。ちゃんと友達してんのは平沢くらいだしな」


「......私は?」


「お前、俺のことを友達だと思ってんのか」


「ううん」


「だろ。俺もお前のことを友達とは思ってねえ」


「じゃあ、あなたにとって私って何なの」


 めんどくせえ。


「家族」


「......あー、そうなるんだ」


「だと最近まで思ってた」


「何それ」


「俺は由香と再会するまではテメエを家族代わりだと思って自分を慰めてたんだよ。ただ、最近はお前を家族とも思えなくなってきてな」


「じゃあ、最近のあなたにとっての私は何なの?」


「......何だろうなあ。別にご主人様って答えてやっても良いんだが、そうだな。『何か可愛い心の許せる同居人』くらいにしとくか?」


 と、俺は軽い口調で言う。彼女を可愛いと評した俺を彼女はきっとからかってくるだろう。

 そんな俺の予想に反してステラは俺をからかうようなことはせず、ただキョトンと首を傾げた。


「......可愛いんだ、あなたから見た私って」


「んだよ。いっつも、自分のこと上げてる癖に」


「いや、確かに淫魔だから人間から見て容姿が整っているのは分かるけど......ふーん。あなた、変わってるね」


「はあ? お前、いっつも、俺がお前に惚れてる前提で話してるじゃねえか。急に何だよ」


「あなたが私に依存気味なのは知っているけれど、可愛いと思われてるとは思わなかった......あなたは私みたいな暗い女がタイプなの?」


「タイプとは言ってねえし、暗い女が好きな訳でもねえ。ただ、少なくともテメエは可愛い」


「......っ。何だか、さっきから調子悪いわね、私。あ、後、言っておくけれど私にも人間の友達くらい居るから」


 少し苛立った様子を見せながらそう言うステラ。さっき、ボコボコにされた借りは返せたな。


「誰だよ。平沢か」


「いや、あの人と私、結構気まずい関係だから。あの人からしたら、私は友達を虐めまくってる変なサキュバスな訳だし。どういう立場で話したら良いか分からない」


「お前のその俺以外の人間には割と配慮するスタンスなんなの。人間皆、下等生物なんじゃないのか」


「......特別扱いされてて嬉しい?」


 悪戯っぽい笑みを浮かべるステラ。仕返しの仕返しか。


「質問に答えろよ......てか、なら、誰なんだよ。お前の友達の人間、ってのは。由香か? 朱音か? 店長か?」


「違う。あなたの知らない人よ。あなたが旅行に行ってる間に仲良くなったの」


「本当ならお会いしてえもんだな」


「明日にでも会いに行く? あなた、いつまでお休みだっけ」


「明後日。別に今からでも良いぞ」


「......今日は家でゆっくりしてたい」


「それもそうか」


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