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第七十三話 追跡者


「そ、それじゃあ、フォーサイス様、昨日はありがとうございました! 今度はウチに来てください!」


「うん。本当にありがとう。ロッテと年越せて楽しかったよ」


「は、はい......! では、失礼します!」


 朝の7:30、この家に泊まったロッテは少し急ぎ気味で帰っていった。彼女にも彼女の生活があるのだろう。同居人も居るらしいし。


「散歩でも、行こうかな」


 決して暇で、寂しくて、何もしないでダラダラすることに焦りを感じ始めたから、とかそんな浅いことは考えていない......筈。ただ単に散歩をしたい気分なだけ、多分。


「一人で外を歩くの、何だか新鮮だな」


 早速、外出した私は住宅地の変わり映えしない景色を見ながらそう呟く。買い物なら一人で行くこともままあるが、今日は敢えて買い物のルートとは逆の道を選んでみた。隣に彼が居ないと、何だか落ち着かない自分に焦る。


「あ......」


 そんなことを考えながら歩いていると、何処からともなく、黒猫が視界の隅から現れた。

 私の前をトテトテと歩いていたその猫は急に立ち止まると、此方に振り向いて一鳴きする。


「な、にゃ、なにゅ、あ、にゃ、にゃーん......!」


 咄嗟に出た私の鳴き真似を聞いたその猫は小さな声でまたニャンと鳴くと、そのまま物凄い速さで逃げ始めた。


「あ、ま、待って! わ、私の目を見なさい! 魅了してあげるから......あ、貴方メスか。あ、お、お肉! お肉買ってあげるから私に付いておいで! あ、に、逃げないでよ......」


 あまり追ってもあの猫が可哀想だ。そう思った私はある程度のところで猫を追うのを止め、後ろを向いた。


「マクスウェル......隠れてるね。出てきなさい」


 幾ら光学迷彩を使おうと、猫を追う為に感覚を研ぎ澄ませた私を欺くことは不可能。この前は彼女に私の透明魔法を見破られてしまったが、今度は私が見破る番だ。


「......あ、いえ、私、ラプラスです」


 しかし、光学迷彩を解いて私の前に現れたのはマクスウェルにそっくりな容姿をしたラプラスと名乗る少女だった。マクスウェルと違う点はアームの本数や、ゴーグルの有無、他にもマクスウェルには存在する色々なパーツが無いことだろうか。


「あ、そうだったの。ごめん。私をストーキングする機械娘なんてマクスウェルしか居ないと思って。私もこの前やったし」


「姉さんは久々のお休みを貰って、由香姉と休息中です」


「ああ、それは良かったね。マクスウェル、働き詰めだったみたいだから。......で、ラプラス? 貴方と私、そんなに接点無かったと思うんだけど、何? というか、いつからつけてたの?」


 マクスウェルの光学迷彩と技術は同じなのだろう。ラプラスの透明化と気配の消し方は非常に見事で、私も先程、感覚を研ぎ澄ますまで気付かなかった。


「それは私の方からは言えません」


「は? 何で」


「守秘義務ですので」


「誰との」


「それも言えません」


「......貴方、もしかして、スパイでもしていたの? 別に私は力ずくで吐かせても良いんだけど」


 『戦闘プログラムが充実していて、戦闘用の部品も多いマクスウェルと違って貴方はそんなに強くないでしょ』と私は付け加えた。


「お待ち下さい。スパイとか、そういったものではありません。全て、兄さんに許可を取っております」


「は? 兄さんって......あの人のこと?」


 名前を呼んであげるのは癪なのでそう言った。まあ、伝わるだろう。


「ええ、暁楓兄さんです。これで私の疑いは晴れましたか? では、これで......」


「待ちなさい。余計、気になるじゃない。あの人が噛んでるなんて。確か、貴方と朱音はお金に困っていたよね? 私に教えてくれたら沢山、払うよ?」


 勿論、あの人の口座から。


「いえ、商売人として決して客を裏切る訳にはいかないので」


「今、商売人って言ったね。しかも客って......何故かは知らないけど、貴方のお兄さんはお金を払って貴方に私を追跡させていたってこと?」


 マクスウェルならこんなボロは出さない。やっぱり、別人なんだな、ラプラスとマクスウェルって。


「・・・・」


「今日、貴方の家にLサイズのピザを二枚頼んでおいてあげるわ」


「自分が旅行に行ってる間、貴方の写真や動画を撮っておくように兄さんに言われました。その写真と動画は買い取ってくれるって」


 決して客を裏切らないんじゃなかったのか。


「は?」


「『俺が居ない時のステラなんて貴重だろ。普段、見れない姿が見れるかもしれないし、気になるから撮っとけ。弱み握るのにも使える』、これがその時の録音です」


 ラプラスは自らの口から彼の声の録音を再生して見せた。


「本当に全部バラすね」


「ピザ食べたいので」


「......まあ、取り敢えず、これだけ出すからもう盗撮は止めて。後、写真とか動画はあの人に送らないで」


 と、私は3万円を財布から出して彼女に渡した。


「既に『あ、ま、待って! わ、私の目を見なさい! 魅了してあげるから......あ、お、お肉! お肉買ってあげるから私に付いておいで! あ、に、逃げないでよ......』までの動画と写真は兄さんに送ってしまいましたが、分かりました」


「ふざけないで」


「『おう、ご苦労』って返信が来ました」


「腹立つ......」


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