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第六話 悪人面

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「あなた、意外と普通の職場に勤めてたんだね」


「意外と、って何だよ。意外と、って」


「てっきり、もっと......殺し屋、とか? マフィアとか、人身売買とか、そういった類いの仕事をしているのかと思ってた」


「俺の顔だけで決めてんだろそれ。言っとくが、俺は陽の当たらない貧民街出身の裏社会の人間じゃねえからな」


「......こっちの世界に来て一番驚いた」


「はっ倒すぞ」


 ヤバい。コイツと話してると体力が持っていかれる。


「......まあ、間違ってはないかもしれねえが」


 俺は苦笑した。


「どういうこと?」


「何人かの奴らの頭ん中で俺は人殺しってことになってんだよ」


「何それ。詳しく聞いていい?」


「......こんな真っ昼間から街の大通りでする話じゃねえ」


 俺は周囲の道を行き交う人々を見ながら、溜息を吐いた。


「そっか」


「聞きたきゃ、家で好きなだけ聞かせてやる。別に面白い話じゃねえけどな」


「分かった」


「んじゃ、ショッピングモールにでも行くか」


「ショッピングモール?」


「色んな店が入っている商業施設。お前の服と諸々の生活用品を買いに行く。お前の社会勉強にもなるだろ」


 この世界のある程度の常識は召喚された時点で、頭に叩き込まれるという話だったが、どうもその『ある程度の常識』というのは本当に最低限のものらしく、これから幾らかの時をこの世界で過ごす彼女にとっては少な過ぎた。彼女はカップ麺もショッピングモールも知らなかったのだ。

 彼女にはこの世界について、もう少し知っていて貰わなくてはならない。


「分かった」


 端的にそう返事をするサキュバス。そんな彼女に対して俺は何と無く違和感を感じた。


「......お前、今日、口数少ねえな。昨日はあんなに饒舌だったのによ」


「昨日はあなたが色々言ってきたから、応じたまで。別に無駄口を叩く必要は無いでしょ。.......それとも、何? 私ともっと喋りたい? チャームはもう解除した筈だけど。まだ私に魅了されているのかな」


 分かった。コイツ、俺を煽る時だけ饒舌になりやがるんだ。


「うっぜ。てか、お前、その髪色どうにかなんねえのか。周りの視線が痛いんだが」


 彼女の濃い紫色の髪は美しく、彼女に似合っていると同時にかなり目立つ。周りからの視線が痛い。


「染めないと駄目? ......これ地毛なんだけど」


「地毛なのかよそれ」


「私がわざわざ、髪染めとかするタイプだと思う?」


「思わねえな。お前、サキュバスであるにも関わらず、自分の容姿に一切、気を遣ってなさそうだし。清潔にさえしてれば後はどうでも良いとか思ってんだろ」


「言い過ぎ。間違ってないけど。もしかして、超能力者......?」


「悪魔様が言うならそうかも知れねえな。兎に角、お前その髪色似合ってるし、別に良いわ。染めなくても」


 『フンッ』と笑いかけ、彼女の頭を撫でる。絵の具で塗ったようなコテコテした色の髪だが、質感はシルクのようにサラサラとしていた。

 シルク、触ったことねえけど。


「触らないで。というか、角と翼は? 隠さなくて良い?」


「その髪色を容認しちまうなら、別に角と翼も同じことだろ。どうせ、コスプレだと思われる。ただ、翼は今みたいに畳んどけよ。周囲の邪魔になるから」


 俺がそう言うと、彼女は不思議そうな、疑うような目つきで俺を見てきた。別段、可笑しなことは言っていないと思うのだが。


「......あなたって、結構、真面目だよね」


「あ?」


「悪人面に似合わず、意外と思慮深いことに驚いただけ」


「ぶっ殺すぞ」


「口の悪さは顔の悪さと比例しているようだけど」


「俺の顔の何処が悪いって言うんだよ。言ってみろ」 


「鋭い目付きの三白眼で、目が左右に揺れてて挙動不審で、目元に皺があって、眉がよじれてて......」


「だああああっ! もう良い! 黙れ! 一旦、黙れ!」


「あなたが言ってみろ、って言ったのに......因みに自覚は?」


「お前に言われるまで無かった」


「重傷だね」


「うっせえ。ぶん殴るぞ」


「そうやって直ぐに暴力に訴えようとするから、余計悪人みたいに見えるのよ」


「チッ」


「後、何だかんだ言ってあなた、私に一度も暴力振るってないよね。どうして?」


「そりゃあ、お前、ただの人間が悪魔様に勝てるわけないだろ」


「......そこはちゃんと理解してるんだ。逆にダサい」


「んだとこら。ぶん殴るぞ」


「はあ......」


⭐︎


「此処がショッピングモール、人間の商業施設、ね。何買うの?」


 ショッピングモールに入るなり、サキュバスがその広さに圧倒されながらそう言った。


「お前の衣類一式と、食糧」


「買ってくれるの?」


「そうするしかねえだろ。それとも、金持ってんのか? お前」


 サキュバスはふるふると首を振り、俯いた。コイツにも申し訳なく思う気持ちは一応、あるようだ。


「ごめんなさい」


「謝んな。俺がお前にその服で出歩いて欲しくないから買い与えるだけだし。金渡しておくから好きなの買ってこいよ」


 俺は入り口付近にあった服屋を指差して言う。あの服屋なら一万円程度で冬服一式、揃うだろう。


「......ありがと」


「感謝するなら名前を教えてくれても良いんだぞ。てか、教えろ。不便だ」


「あなたが私の奴隷になる、って言うなら考えても良いけど」


「テメエの名前、どんだけ価値あるんだよ。嫌に決まってんだろ」


「残念。......それじゃあ、服、買ってくるね」


 そう言って服屋へと歩いていくサキュバス。

 彼女にはああ言ったが、もし、路頭に迷ったら打診してみよう。


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