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第五十八話 職場復帰


「お、暁クン、何か久しぶりだねー。由香ちゃんとゆっくり出来た?」


「殆ど会わなかった。後、お前、マクスウェルに姉妹の縁切られてたぞ」


「......はぇ?」


「あ、暁さんおはようございます」


「ああ、店長おはようございます」


「ちょい、待って。さっきの話詳しく......」


「おー、暁、前会ったときぶりやな」


「そうじゃないことないだろ」


「......チョベリバー」


 数日会っていないだけなのに、何故だろう。随分、皆と会うのが久しぶりというか、新鮮な感じがする。

 いや、当然か。あの時は非常事態ということもあり、どうにか飲み込んでいたが、各々、互いに隠していたことがあったのだから。

 店長はペスト医の仮面を被った変な魔女だったし、親友の平沢はその魔女に魂を売っていたし。


「あの、店長......と、平沢。クリスマス当日にウチで由香達を呼んでパーティするんだが、来ないか?」


「お? 暁、自らお誘い? 珍しいやん。行く行く。当日なら空いてるし」


「由香に誘っとけって言われた」


「私も勿論、お邪魔させてもらいますよー。......他に誰が来るんです?」


「千隼と災厄、ラプラスと朱音、後、マクスウェル」


 災厄は出来れば呼びたくなかったのだが、千隼をハブるのは何と無く罪悪感があったので仕方なく、という感じである。


「私が行かないと完全に荒れる奴じゃないですかそれ。......というか、何故、マクスウェルさんとラプラスさんが?」


「色々あって復活しました。詳しくは本人達に」


「ええ......。いや、良かったですけど。マクスウェルさんとはそこそこ交流がありましたし。住居や働き先の紹介で」


「良かったなあ......。あんまりワイは由香さん含め、その人らと交流なかったけど、前回の事件、それだけが気掛かりやったんやで?」


 なんて話を俺達三人がしていると、ふと、気付いたことがあった。

 フィーネが何か小声で呟いている。


「......チョベリバ。チョベリバ。チョベリバ。チョベリバ。チョベリバ。チョベリバ。チョベリバ。チョベリバ」


 まるで、題目のように。


「うるせえ」


「音量は下げたよ」


「そういう問題じゃねえんだよ。何か言いたいことがあるなら言え」


「何でボクだけ招待されてないのっ!?」


「俺が一番、お前のことを嫌ってるから。後、マクスウェルが呼ぶなって言ってた」


「朱音や災厄は良いのっ!? アイツらの方がよっぽど、ボクより実害あったでしょ!」


「元はと言えばテメエがマクスウェルに俺達の殺害プログラムなんざダウンロードしなけりゃ、朱音が動くこともなかった。後、災厄を俺達にけしかけたのもテメエだろ。マクスウェルから聞いたぞ」


「いや、お姫様を殺せってボクらに命令したのも、災厄を此方の世界に寄越したのも全部サキュバスの女王様だから。ボク、わりくない。インディアン、嘘吐かない」


「どちらにしてもテメエの人格自体、俺は気に入らねえ。それは災厄にも言えることだが。まあ......千隼は誘ってやらねえとだしな。テメエはハブったところで特に何も無いし」


 『ガビーン......』と口を縦に開きながら呟くフィーネ。本当にショックなのか、ふざけているのかよく分からない。


「それに関してはノーコメント、貫かせてもらうわ」


「私も」


 平沢と十の二人は気まずい雰囲気を察し、そう言い残すと緊急回避を行った。クソ、アイツら。


「まあ、テメエの言う通り、朱音や災厄も来るんだから、倫理観ぶっ壊れ吸血鬼が来てもそんなに可笑しくはねえけどよ。......少なくとも、マクスウェルは相手にしてくれねえと思うぞ」


「んー、そっかあ。でも、久し振りにお姉ちゃんの顔見たいし、無理矢理にでも行こうかな」


「俺は誘いも歓迎もしないが、別に止めもしねえ。......なあ」


「何?」


「お前、寂しかったから由香を助けて、自分の姉として生まれ変わらせたんだろ。なら、何で姉を殺すような真似をした」


 俺は少し低い声で彼女に聞いた。

 フィーネの出自について俺は何も知らない。ただ、一つ分かっていることがある。コイツも、俺と同じで家族が居ない。だから、マクスウェルという姉を作り出したのだ。


「寂しかったから助けた、ってのは少し違うけどなー。由香ちゃんが炎の中で助けて、って言ってたから気まぐれに助けただけ。記憶を消して姉にしたのは......まあ、そうだね。寂しかったって言っても間違いじゃないかも。『家族』ってものに興味があったの」


「それで、そんなに家族ってのは悪いものだったか」


「んやー。君も知ってると思うけど、私とお姉ちゃん、全然、家族って感じじゃなかったからさ。楽しくなかったんだよね。だから、最後は『家族が壊れる瞬間』が見たくてさ。色々、やっちゃった」


「・・・・」


 悪びれる様子のないフィーネを俺は心底蔑んだ目で見下した。


「あ、でも、勘違いしないで欲しいんだけどさ。ボクもマクスウェルがキミ達との戦闘で由香の記憶を取り戻すことなんて想定してなかったんだからね。その辺からは大体、朱音の責任だから」


「......そうか」


「うん。ボクはマクスウェルを無理やりキミ達と戦わせただけ。それも、ボクの仕事だからね。意外とボク、悪いことしてないでしょ?」


 駄目だ。やはり、コイツとは生きている世界が違う。話に耳を傾けるだけ無駄だ。


「仕事行くぞ」


 俺は彼女の言葉には何も言わず、そうとだけ言った。

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