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第四十五話 ヒステリック


「面倒ごとばかり増やして......。料理も、もう冷めてる。折角、グラタン作ったのに。......私の居ないところであんなのとやり合うとか、頭が足りないのかな。普通の人間なら分かるよね。無謀だって。下等生物の中でも下等なの? 私、そんなペットなら要らないんだけど。いっそのことモルモットにでもしてやろうかな。全身に私の体液塗って、何処まで精神が耐えられるかの実験とか......」


「多い多い多いっ! 多いんだよ! 罵倒がいつもより多い! そして、流石に言い過ぎだろっ!」


 交番からの帰り道、ステラに言葉の刃物で切り付けられ続けた俺はそう叫んだ。


「言い過ぎ......? それはあなたの決めることじゃない。被害者の私が決めるべきこと。いや、私も悪いのかしら。『ペットの躾』は飼い主の役目よね。今まではある程度、自由を許してきたけど、これからはあなたの行動を制限して、躾をしっかりすることにするわ」


「......何でそんなにキレてんだよ」


「自分が何で怒られているのかも理解出来ていないの? 犬や猿でも直ぐに叱れば分かるよ?」


 ステラはギュッと俺に体を密着させ、自らの尻尾で俺の顔を突いた。


「あなた、死んでいたかもしれないのよ? 見て分かった。『星加朱音』は守人よ。あなたが勝てる相手じゃない。......あなたは私の家畜、奴隷、ペット、つまり、財産。私の財産を危険に晒すなんて、許されざる行為なの。分かった?」


 ステラはいつもよりヒステリーな声で俺をそう叱った。

 成る程。


「要するに『心配させないで』ってことか。カッ。テメエも可愛いところあるじゃねえか。......心配させて、悪かった」


「帰ったら、覚えてなさい」


「......グラタン食ってからな」


⭐︎


「もしもし、星加? 暁」


『あ、はい! 何ですか?』


「一応、虐めの件、教育委員会とその他慈善団体に匿名で通報しといたから。それで動きがなかったらまた言ってくれ」


『......あ、ありがとうございます!』

 

「そんで、本題なんだが、『朱音』って知ってるか?」


『え、い、いや、知らないですね......』


「この前の同時多発爆発・煙発生事件の犯人で、ステラとか災厄とか、『あっちの奴ら』を皆殺しにしようとしてる奴なんだ。ソイツの名前が『星加朱音』」


『......え』


「まあ、何だ。ペスト医と良い勝負してた災厄ならアイツに負けることはないと思うが、気を付けてくれ」


『は、はい。分かりました。わざわざ、ありがとうございます。僕も調べてみますね』


「おう」


 ピッ、と電話を俺は切る。


「どうだった?」


 グラタンを食べ終えてなお、未だに機嫌が良くないステラが気だるげに聞いてきた。


「千隼は知らねえ、って」


「星加って苗字の人、2700人しか居ないらしいよ」


「......何の繋がりもない、ってこたあ無いだろうな」


 災厄曰く、星加は姿を消した災厄の姿を捉えることが出来るらしい。

 守人の血筋なら、と考えることも出来る。


「名前が分かっただけでも進展したじゃない。警察の言うことを聞くレベルには常識があることも分かったし」


「警察の見てないところでは爆発を起こしたりするけどな」


「まあ、そうだけど。......あ、それじゃあ、そろそろ、精気吸って良い?」


 巨大化させた尻尾の口を開き、ステラは無表情でそう言った。


「体洗ってきてからで良いか」


「私の尻尾の分泌液で汚れるからまた入らないといけなくなるよ」


「それでもだ。......何か嫌だろ。汗とかも一緒に吸われんの」


「へえ、下等生物の癖にその辺の配慮はあるんだ」


「黙れ」


⭐︎


「はあ......はあ......疲れた。やり過ぎだろテメエ」


「感謝して。一応、『生きられる限界』までにとどめてあげたんだから。本当の意味で限界まで吸っても良かったんだよ?」


「嘘だな。貴重な奴隷をお前が消耗品みたいに使う筈ねえだろ」


「......受け入れてるんだ。自分が奴隷ってこと」


 若干、引いた様子でステラが言う。


「なあ、ステラ、今日何日だ」


「日にち? 12月17日だよ」


「......後、一週間でこの問題に蹴りを付けるぞ」


 俺はステラの尻尾から顔だけ出しながらそう言った。


「どうして?」


「クリスマスくらいは落ち着いて過ごしてえんだよ」


「......そう。なら、生きていないとね。今のあなた、直ぐにでもくたばりそうだけど」


「言っとけ。朱音より強い『災厄』の襲撃を免れたんだ。今回も死なねえよ」


「何も考えていない、気まぐれな災厄と違って、朱音は明確に私達への殺意があるみたいだった。災厄よりも危険かもしれないわ」


「だとしても、死なねえよ。俺は」


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