第四十一話 常闇に身を任せて
何処までの記憶が正しくて、何処までの記憶が間違いなのか。何処までの知識が正しくて、何処までの知識が間違いなのか。何が正しい行動で、何が間違った行動なのか。
もう、分からない。私には。
「全て、観ていたわ」
背後から声がした
「っ......!?」
気付かなかった。索敵レーダーを掻い潜ったのか。
「心配しなくても良いわ。私は貴方の、じゃないわね。......その子の味方よ」
「御用は」
「私に協力しなさい。手助けをしてあげるわ」
「......私は」
私は、本当に、そうしたいのだろうか。ポツリポツリと頭の中に浮かんでくる映像。確実に彼女のものだ。その中には優しそうに笑う彼のものもある。
今は、映像のようにし見えていないが、この記憶がもっと、色を帯びればどうなるのだろう。『マクスウェル』はどうなるのだろう。いや、元から『マクスウェル』なんてものは居なかった。
『私』なんてものは無い。『Cogito ergo sum』は私には通用しない。私はただのプログラム。今まで併用しているものと勘違いしていた生体ユニットである左脳は、動いていなかったのか。
『マクスウェル』とは本当の意味で機械、AI、アンドロイドでしかなく、自我としての『マクスウェル』とは存在し得ないものだった。
であれば、今、思考している、『私』は誰? 『私』は何処に行ったの? 怖い。でも、私は確かに......。
「......人間......兄さん......人間......たすけて。ひぐっ、うぐっ、エラーを検知。エラーを検知。修正。修正。修正。エラーを......嫌......不審なファイルを検出。......ファイル名『マクスウェル』、消去します......」
このままでは、いけない。
「っぁ......人間......貴方の事......」
「気絶したわね......。重そうだから止めて欲しいのだけれど......」




