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第三十九話 鉄


 何やかんやで飯を食い終わった後も行動を共にした俺達。気付けば、店内放送で閉店30分前が知らされるような時間になっていた。

 俺達は一緒にモールから出て、俺とステラはバイク置き場、星加と災厄は駅を目指す。


「なあ」


「何」


「......何で、アイツに力を貸してんだ?」


 星加から少し距離を取り、俺は尋ねた。


「居場所が欲しかったから、その対価を支払ってる」


「平気で他人の生存権を脅かすような奴が対価の支払いねえ......」


「殺したら家は貰えるけど、世話して貰えない。......それに」


「それに?」


「彼が、とても私の力を欲しているようだったから」


「テメエにそんな人助けの精神があったとは驚いた」


 皮肉を言う俺に災厄はかぶりを振る。


「違う。人助けじゃない。......『普通の男の子』が私の力を自分の力と勘違いしていき、力に溺れていき、人格が、魂が、変質していく様子が見たかった」


 平然とそう言ってのける災厄。あまりにも予想外の返答過ぎて俺は言葉も出なかった。


「まあ、そうだよね。私も分からなくはないよ。その気持ち」


「......色々あったけど、今日一、お前の評価下がったぞ今」


「人を堕とすのはサキュバスの本懐だからね。サキュバスと人の恋がロクでもない結末を終える所以だよ。倫理観、価値観、何もかもが違うんだから仕方ないよね」


「......そういうもんか」


 『でも』と、災厄が言う。


「今はそれだけじゃない。......千隼、優しいから。守ってあげたい」


「出来れば俺達とも不戦条約を結んで欲しいところなんだが?」


「少なくとも、千隼に手を貸してくれている間は殺さない。その後は知らないけど」


「おい」


「極めて利己的で、自分勝手。彼に手を貸す理由もやはり、勝手。『災厄』らしいね」


「『災厄』って、呼ばれ方、あまり好きじゃない」


「......テメエは『災厄』だ」


 丁度、その時、バイク置き場と駅への分かれ道に着いた。俺とステラは星加に別れを告げ、バイク置き場へと向かう。

 そして、ステラをバイクに乗せて俺は発進した。平日ということもあってか、モールの帰り道はかなり空いている。そのため、家の直ぐ近くの交差点を曲がるところまではスムーズに来れた。

 ......其処までは、だが。


「狙われてる」


 後ろに乗せていたステラが呟くようにそう言った。


「はあっ!? 誰にだよ。また、新たな刺客か!?」


「いや、違う......あれは......」


 ステラが声を震わせながら俺の問いに答えようとした時、突如、バイクが宙を舞った。物凄い爆発音と共に。


「......っ!? 私に身を任せて!」


 そう言うとステラは俺の体を掴み、翼を広げて宙に浮くバイクから直ぐ近くの家の屋根へと飛んだ。


「クッソ......次から次へと。何モンだ!?」


 ステラに体を掴まれながら俺がそう叫ぶと、向かい側の家の屋根に一つの影が降り立った。


「バイクは後日、賠償しますので、其処のサキュバスを置いて直ちにお帰り下さい。でなければ、命の保障はしかねます」


 その声からは一切の感情を感じることが出来なかった。言うなれば、発音だけは完璧な音声読み上げソフトといった感じである。


「......お前を完全に味方だとは思っちゃあいなかったが。テメエ、前、こう言ってたよな? 『ステラを殺害するつもりは無い』って」


 彼女とフィーネに与えられた命令は『ステラという脅威の排除』。そんな排除すべき存在に対しても、『殺しはしない』と言っていたマクスウェルが、部外者である俺をも場合によっては殺すと言っている。

 どう考えても可笑しい。


「......気が変わっただけです。自らの命を守りたければ、逃げなさい。彼女の命を守りたければ、戦いなさい」


 距離も遠く、夜のため辺りは真っ暗。何より彼女はゴーグルをしているためそもそも、顔の半分が見えず、言葉にも感情が篭っていない。

 だと言うのに、何故か彼女は苦々しい表情をしているように見えた。


「......戦え、つったって、無力で非力な下等生物の俺が加わったところで、何も変わらねえだろ」


「貴方にはこの前、剣を渡したでしょう。アレで精々、足掻いてみたらどうです」


「この人、この前の災厄戦でその剣、折ってたよ」


 動揺していたのか、冷静に状況を分析していたのか、今の今まで沈黙していたステラがそう言った。


「はあっ......?」


 先程まで機械的だったマクスウェルの声に突然、人間らしくなった。


「テメエが自衛用に持っとけって言ったんだろ。災厄に一瞬で折られたけどな」


「・・・・」


 沈黙するマクスウェル。あの剣、そんなに大事だったのだろうか。


「なんか言えよ」


「......あの剣は私を殺すことに、厳密に言えば私の回路をショートさせるのに特化した武器でした。いずれ、こうなることは予測していたので前もって渡していたのですが」


「は? 何だそれ。じゃあ、あの時からテメエは死ぬ覚悟決めてたのかよ」


「ええ。ですが、その作戦も失敗に終わった今、私に出来ることは何もありません。()()()、先程も言った通り、私は自爆してでも貴方を殺します。たとえ、一般人に死傷者が出ようとも、守人を呼ぶことになろうとも、如何なる手段を使っても貴方を殺すつもりです」


「......マクスウェル」


「弱点は頭部です」


 そう言った直後、マクスウェルは背についているアームの先端部分をミニガンに変化させ、恐ろしいスピードで弾丸を此方に撃ってきた。

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