プロローグ
俺は、物流業界のトラック運転手である。
あぁーーーーーーもう駄目だ。死ぬ。
体が動かない。
栄養ドリンクに眠気覚ましのコーヒー、くそったれな社畜人生。
もう疲れた。
俺は今日、初めて会社を休んだ。上司に休む連絡をしたが、散々文句を言われた。
もう会社に行きたくない。
俺は一体どこで何を間違えたというのか?
考えるのは疲れる。とりあえず寝よう。
数時間寝たつもりが、目が覚めると1日経っていた。
慌ててスマホを確認すると、上司からの着信履歴やメールが数十件きていた。
もういいや、考えるのはよそう。
お腹が空いたので冷蔵庫を漁るが、ろくなものが入っていない。
…買い出しに行くか。
俺は買い出しのために商店街へ向かった。
商店街で買い出しを済ませて、家に帰ろうとしたところ、路地裏から呼び声が聞こえた。
「お兄さん、お兄さん。お疲れのようですね」
突然話しかけられて、大変驚いた。
ギターを片手に路地裏に佇む少女。
「君は誰?」
少女は首をかしげて、その問いに答えた。
「私は流し屋さんです」
「流し屋さん?」
「ご存じないんですか?」
「うん、ちょっとわからない」
「そうですね……流しとは、居酒屋などで楽器や歌のパフォーマンスをして回る職業です」
今の時代、そんなことをする娘がいることに驚いた。
「今から一杯どうですか?素敵な居酒屋さんがあるんです」
居酒屋か……確かにいい気分転換になるだろう。
少女の誘いに導かれるままに一件の居酒屋に辿り着いた。
お腹も空いてるし、ちょうど良かったのかもしれない。
最近は忙しくて、居酒屋に行く暇もなかった。
俺はどこか不思議な気持ちで、居酒屋の暖簾をくぐった。