5.唯一神はここにいる、崇めよ、奉れ。
日常編、スタートです。
大倉拓の朝は早い。
徒歩10分の駅から6時過ぎの電車に乗って、20分程。
そこから更に徒歩20分。小さな山のような坂を登った先に我らの学校がある。
『私立T学園』
中高一貫の学校だ。
いろいろな要素があってカオスの化身と言える。
自主性を重んずる、といったポリシーもあって、結構人気があるらしい。そういえばなんで自分でナレーション入れてるんだ? ま、いっか。
さて、僕がこんなに早く来たのは、他でもない、朝練のためだ。高2だが、もう僕らが部を仕切っている。ある程度の実力がないと、後輩に笑われてしまう。名ばかりではあるが、副部長でもあるのだし。
体育館に着いた。
ここからは御前だ。
最大級の敬意をもって相対せねばならない。
体育館の扉を開け、卓球台のあるステージに駆け寄る。
靴下なのであまりスピードを出せないのがもどかしい。
それでも全力で御方に向かい、跪く。
「太智さま! 只今参上致しました!」
「なんでそんなかしこまってんの。僕ら同級生やで」
聴く者をリラックスさせる柔らかい関西弁。
彼こそは聖人、持つものでありながら、我ら持たざる者にも救いの手を差し伸べてくれる救世主。現人神と呼ばれても何ら差し支えのない人物である。
スポーツ万能。特に球技のセンスが抜群。
テストを受ければ圧倒的な努力によって常に学年トップクラス。
そして、それらを誇るでもなく、知識を僕らに見せてくれる、高尚な精神。
彼が崇められずして、他に誰が崇められようか。
「そうは言いましても...、あ、はい差し入れ」
「ええのに、ありがとうな」
だから、貢ぐのは、当然の義務であるのだ。
………
……
…
「お、たいちー今日調子いいな」
たいちー、とは、聖人:杉名太智の僕がつけたあだ名だ。
「くらもやん」
くら、は僕の「倉」から取ったらしい。
たいちーとやる卓球は楽しい。
中2以来、ずっとやってたから、互いの癖が分かる。
戦術を練って、意表をつかないと永遠にラリーが続きそうだ。
2人だけの体育館。靴と床の摩擦音、球の跳ねる音、そして互いの息遣いが反響する。
心地良い、朝の時間が過ぎていった。
あれ、たいちーって彼女より彼女してる?
気づかなかったことにしよう。
恋愛ものなのに、ヒロインが出てこないとは一体......
聖人は実質彼女だから...(男)
今日はもう一度投稿出来ます。