30.先生、ロマンスはシリアスに入りますか?
遂に30話。
こんな駄作をここまで読んで下さいましたことに対しまして、心より感謝致します。
こんな黒歴史をここまでよくもお読みになってくださいましたことに、少しお恨み申し上げます。
なんとか言ってかなり歩いた気がする。地図で見る感じ、3、4kmは歩いたみたい。2時間近く歩いてる。朝の分と合わせて結構足が痛い。こりゃ明日筋肉痛かも。ま、明日は電車だし良いか。
そういえば、と聞いてみる。
「他何処か行きたいところとかある?」
「それはあるんだけど、夜にしない? そっちの方が映えるだろうし、何より、今、疲れた」
「それは分かる」
部屋でゆっくり休みたいな。そうだね〜。そんなことを言いながら帰途につく。
途中、ちょっと無言になる。でも、何だか心地良い。初めの頃は、会話が途切れないように、何かと言ってたけど、いざ無言になってみると、この状態も悪くないように感じる。
気を遣わない、ナチュラルな関係性を築けている風に感じているのかも。
僕一人が以心伝心感に酔っているだけかもしれないけどね。手を繋いでる隣も、同じように思ってくれてるといいなー。
.........
......
...
部屋に着くなり、2人してベッドに飛び込む。
「だはー」
「づーがーれーだー」
現役高校生とは言えど、4kmはしんどい。足がほんとに棒だ。最盛期ですらこれなのだから、この先などどうなってしまうのだろうか。もう衰えるしかない自分が恐ろしい。
そう言えば。
「色々行ったけどさ」
「うん」
「旅行ってこんなもんでいいの?」
「いいんじゃない? 楽しいし」
「それは光栄だけど」
だけどさ、と続ける。
「実際観光くらいしかしてないし、もっと何か特別なこととかしなきゃみたいな強迫を自分の中に感じる」
「なるほどね」
「でも、その特別なことっていうのがどんなものか具体的に想像出来ないんだよなー」
「あーね」
未来は少し考える素振りを見せる。
「でもこれでいいんじゃない?」
「その心は」
「ほんとに楽しい出来事ってさ、出来事そのものなんかより、それを一緒に体験してる人と居るってことの方が楽しさを引き立ててると思うんだよね。好きな人がいるから楽しいんだよ」
おうふ。
すごく嬉しい。
そう言ってくれるってことは、ここ2日、もっと言うならここ数週間の自分とのやり取りを楽しんでくれていたってことだから。彼氏冥利に尽きる。
「...まあ、自論ではあるんだけどね〜」
僕の仕草を見ていて、自分がどのような発言をしたのか思い当たったらしく、少しそっぽを向く。
「ありがと。報われた気がする」
「いいって。何もしてないし」
「でも僕はそう思った。物事なんて全部主観なんだし、それが全てだよ。未来の言葉を借りるなら、『未来が言ってくれたから嬉しい』」
あれ、こっちもそこそこ恥ずかしいこと言ってるぞ。まあ、なるようになるさ。
「...まあ、そういうことなら」
言葉を受け取ってくれた。嬉しい。
またしばらく沈黙が続く。今度は先程のように落ち着くようなものではなく、ぎこちないものだ。お互いに何を話そうか迷ってる感じ。青臭い台詞を吐いて、その後に言う言葉が見つからない。
手が無意識に何かをしたがったのだろうか、何も面白い番組がないと昨日判明している筈のテレビをつける。相変わらずニュースをやっている。消す。僕は何をやっているのだろうか。
「早いけど、お風呂、行こっか」
助け舟を出してくれた。この雰囲気に耐えかねただけかも。
「...そだな」
なんでも洗い流すのは、風呂が1番だ。昨日学んだことだし。場の空気だって流してくれるだろう。
でも、とタオルを用意しながら思う。
この気持ちは、流したくないなー。
今回の豆知識
(12)英語memoryには単に記憶とだけでなく記憶力という、能力の意味を付与した意味も存在する。
似たようなものに、imagination:想像力とかが挙げられますね。
ここまで読んでくださいましたあなたに感謝を。ありがとうございます。
訂正:imaginationが記憶力となっておりました。申し訳ございません。何処かの神が教えて下さいました。




