10.どんな短所も誇りを持ったら、長所になりうる、と思う
ちょっと短いですが......
ほぼオタクがバレた主人公。
どう取り繕っていくのか。
汝、此処から先は死地と心得よ。
一つの過ちが命取りとなる。
聞かれてしまったことはしょうがない。答えるのは「YES」しかない。沈黙も肯定になるし、否定という明らかな嘘はすぐにバレてしまうだろう。
問題は、如何に被害を最小限に食い止めるかだ。
そこが勝負のカギとなるだろう。
ここは、曖昧にぼかして深掘りされるより、むしろ開き直ってきっちり肯定した方が良いに違いない。
なんか自信持って、胸張ってたら、かっこよく聞こえるかもだし。
あとちょっと知らない風を醸し出しとこう。
僕は昨日を乗り越えてきた男だ。今日も華麗に乗り越えて見せよう。
「そう、僕、オタクって奴なんだ」
「そう」をつけることで全肯定感を、「奴」をつけて不慣れ感を演出してみせた。
我ながら完璧な解答であったと言わざるを得ない。
さて、我が彼女の反応や如何に。
「へぇ、じゃあ私と一緒じゃん。何が好きとかある?」
予定通り、ではある。なんなら、未来さんもオタク肯定派で寧ろ安心した。が、追い討ちがかかってきた。ここでオタク深度が計測され、地獄へと真っ逆さまになるかもしれない。どうしたものか。
これを回避するのは簡単だ。ゴールデンタイムにやっている超有名作を答えればいいのだ。しかし、それでは何だか嫌だ。
彼女の手前、最善策を打つべきなのは分かっている。けれども、僕の中のプライドが、オタク魂(?)が、その妥協を許さない。
引かれないように、その上、惹くように。
そんな究極の作品は......!
「『ピアノとヴァイオリンと光る虹色交響曲みたいなやつ*』」
「うわ名作。何も言えないじゃん」
「何か言うつもりだったんですか未来さんや」
「もちろん。『お巡りさん〜、助けて〜、これから私、このオタクに部屋に連れ込まれて、犯されて、写真に取られて、ネットに流される可能性大*』とか」
「『大』、じゃないでしょうが」
「あははっ」
なんてこったい。もう既にバレていたらしい。
しかしながら、嬉しい誤算だ。
まず、ある程度趣味を曝け出せる。
知ってる上で、付き合ってくれているのだから。
そして、何より。
僕の彼女は、『こちら側』の人間らしい。
*映画化までされた名作。作者はめっちゃ感動しました。
*知ってたら嬉しいなー。ちくわ部は伝説。
なんとか10話に漕ぎ着けられました。
これからも、頑張ります。
5/21 状況を付け足しました。余りにも説明不足だったので。




