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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第四章
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脱出大作戦

 それからすぐに、わたしたちは一つの馬車の荷台に詰め込まれるように乗せられた。


 犯人の男たちは二人だけしかいないみたいで、二人とも御者台に乗っている。


 わたしたちのいる荷台には、男たちが話していた通り、隠蔽の魔法がかけられていた。


「なるほど、隠蔽の魔法で荷台には何もないと見せかけて、国境の外に出るつもりなんだね。これだけの人数を一気に隠蔽するなんて、さすが魔族だね」

「スーフェ、感心してる場合じゃないわよ? そろそろルベちゃんが来てくれるんじゃない?」


 すでに縄抜けをし終えているベロニカがわたしを急かす。


「はいはい」


 ぶっちゃけ縄を切るくらい、魔法でちょちょいのちょいだった。けれど、その様子を見ていた王子殿下がどうしてか驚いている。


「お前っ、どうして魔法が使えるんだ?」

「え、なんで? 普通は使えるでしょ?」

「いや、この縄自体に魔法を無効化する力が備わっていて、俺は魔法が使えなかったんだ」

「へえ、そうなんだ! この縄にそんな秘密があったなんて」


 もちろんわたしは縄にかけられているその魔法ーー無効化を盗んだのは言うまでもない。


「縄も後で何かの役に立ちそうだね」


 ある一定の魔法や魔力を無効化してくれるらしい。絶対に冒険者ギルドに売れそうだ。せっかくだから、全ての縄をアイテム袋の中に回収する。


「タララタッタラー♫」


 同時にアイテム袋からナイフを二本取り出して、一本をベロニカに渡す。


「今から縄を切るけれど、まだ外には飛び出さないでね」


 わたしの言葉にみんなが頷いてくれた。素直な子供たちだ。


 みんなの縄を解き終わったところで、少しだけティータイム。


「まずは腹ごしらえが必要だよね」


 アイテム袋の中から、少しの食料とお水をみんなに配った。一服し終わった頃、馬車が急停止した。


「あ! ルベが来てくれたっぽい!」

「じゃあ、あたしが外を見てくるわ」


 ベロニカが外に出て、周囲の安全を確認してくれる。


「スーフェ、大丈夫そうよ!」

「よーし、みんな準備はいい? せーの……」


……で行くんだよ、と言おうとしていたのに、子供たちは一斉に飛び出して行ってしまった。


「うわーっ! 待って!!」


 子供たちが一斉に飛び出したと思ったら、四方八方に逃げ始めてしまった。


「馬車から降りた後のことをきちんと言っておくのを忘れてたよ」

「まあ、スーフェったら。これじゃあ門兵さんたちに保護をお願いする前に、子供たちの行方がわからなくなっちゃうわよ?」

「仕方ない、ちょっと痛いかもしれないけれど、みんな我慢してね」


 そう言って、わたしが盛大に放ったのは土魔法。「ドォーン!」と言う音とともに地面が掘り下がる。


「わおっ! ナイスイーン!」


 逃げた子供たちが一瞬にして消えた。一斉に落とし穴へと落ちていったから。


「この地を、辺境トイツ村じゃなくて、東◯ドイツ村と呼びたいな」


 せっかくだから“池ぽちゃ”も欲しいな、としみじみと思ってしまった。


「スーフェ、この穴どうするのよ?」

「もちろん、全落……だめだ、開催できない。A◯木さんがいないもの」


 やっぱりA◯木さんがいてこそのオープンだと思うから。それだけは譲れない。


「あ! じゃあ、温泉にしたらどうかな?」


 子供たちの安全のために、深くは掘り下げなかったから、きっと温泉にちょうどいい深さだと思う。あとは源泉を掘り当てるだけ。


 わたしが一人盛り上がる中、ベロニカはキョトン顔。


「温泉って、何?」

「えっ、ベロニカは温泉を知らないの!?」


 そう言えば、転生してから温泉の存在を今までに聞いたことがない。


「はあ、ショックだよ。温泉がないなんて。でもきっとそのうち誰かが掘り当ててくれるよね? 仕方がない。今は目の前のことを終わらせよう。肝心の男たちは、やっぱりルベがいるから大丈夫みたいだね!!」


 すっかり忘れていた犯人の男たちは、人型バージョンのルベがすでに確保していた。


「おい、お前たち、何してるんだ?」

「ま、魔王様!!」


 犯人の男たちーー魔族の男たちはやっぱりルベの知り合いだったらしい。人型バージョンのルベを見て、すでに戦意を喪失しているようだ。


 きらきらしいルベには興味がないから、わたしは王子殿下と今後の打ち合わせを開始する。


「あなたが捕まっていたってことが知られると、きっと護衛の騎士の方たちの首が物理的に飛ぶだろうから、あなたも犯人を捕まえた側ってことにする、でいいんだよね?」

「ああ、俺のせいで誰かが死ぬのは嫌だから、そうしてくれると助かる」


 王子殿下が話が分かる相手で良かったと、しみじみと思う。


 王子殿下がいなくなったことに対して、どこまで話が広がっているかは不明だけれど、穏便に済ませられればそれが一番だ。



 その間に、ルベも魔族の男たちに詰め寄る。


「何してるんだと聞いている」

「生贄にするために子供を攫ってるんですっ!!」

「ばか、お前っ、何を素直に言ってるんだよっ」

「お前こそばかかっ、魔王様に嘘つくわけにはいかねえだろっ!!」

「そうだけど、……シアン様に怒られるぞ」

「やっぱり、ヤツが関わってるのか……」


 ルベは深いため息をつく。


「そうだ、シアン様に渡された“あれ”を使うしかない!!」

「ああ! ピンチの時に使えって言ってたやつだな」


 魔族の男たちが、何かに魔力を込め始めた。それに気付いたルベが焦る。


「……!? ばかっ、お前らっ、それはだめだっ!!」


 瞬間、男たちを蒼い炎が包み込み、跡形もなく焼け死んだ。





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