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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第四章
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理力の加護

「それよりも、どうしても光魔法が見たい! だから見せてよ!」


 どんな婚約者が欲しいか、などの話は歩きながら聞くことにして、わたしは、ずっと気になっていた光魔法の話に話題を変えた。


 どうしても見たい、本当なら自分がやってみたいことがあるから。


「光魔法といっても、本当に何もできないんです。うちは騎士の家系で、ずっと剣を握らされて、魔法の訓練はほとんどしたことがなくて」

「騎士? じゃあ、どうして剣を持って来なかったの? 魔境の森に入るなら必要だよね?」

「一応、短剣は持ってきました。光魔法が使えると判明した時に渡されたものです」

「……ということは、光魔法の使い手専用の剣ってことだよね?」


(それってつまり、あれができるかもしれないってことだよね!?)


 けれど、見た目は普通の短剣。


「ルベ、これどうやって使うの?」


 やっぱり博識のルベに聞くのが一番。一瞬見ただけで、ルベは説明してくれる。


「それに光魔法の魔力を込めて、短剣を媒介として、光魔法でその刀身を包むようにして、さらに刀身を作るんだよ」

「うわっ! うわぁあああ!!」


(やっぱり、あれだ!! 理力の加護だ!!)


 ルベの説明にわたしは震えが止まらない。最終的にはあれのようになるはずだ。わくわく。


「ケールやってみて! 早く見たい!!」

「正直、よくわからないんですけど、はい、やってみます」


 ケールが魔力を込める。


(えっ、それ本気?)


 うっすらと、短剣の刃が光った、のかな? 程度。納得がいかないわたしは叫ぶ。


「違う! そうじゃないんだよ!! もっとこう光線剣のようにさ!! ……そうだ! あれはきっと見たほうが早いよね。わたしが見本を見せるからさ。ルベ、ちょっとだけ我慢しててね」

「チビ、まさかお前!! ちょっと待て、せめて黒猫の姿にならせろ」


 ルベが黒猫ちゃんバージョンになった。黒猫ちゃんの方が、光魔法に対する耐性が強いらしい。


「か、可愛い!!」


 ケールが一瞬にしてルベに心を奪われる。罪作りなイケ雄猫だ。ケールの隠しきれない乙女な部分が一気に溢れ出す。


「ねえ、ベロニカ、やっぱり、ケールは男の子を演じてるだけだよね?」

「ええ、間違いないわね。でも、このままの方が面白い気がしない?」

「同感! 一生懸命なところも可愛いし」


 きっと女の子の一人旅は危険だと思い、男の子を演じているのだろう。


 けれど、必死で男の子を演じようとしているケールはとても可愛いので、とりあえず指摘はせずにスルーを継続することで、ベロニカとの見解は一致した。


「ふふ、とっても可愛いでしょ! ルベは本当に世界一可愛いんだから」

「ねえ、撫でても良い?」


 ケールが猫撫で声でルベに尋ねる。やっぱり生粋の乙女だ。


 人型のルベを見ていたはずなのに、猫型のルベを撫でたいと思えるあたり、きっとわたしやベロニカと感覚が似てるのだろう。


「お前からは光魔法の魔力が流れているうちは勘弁してくれ」

「そんな……」

「大丈夫、ルベは光魔法の魔力がなくなれば、撫でてもいいって言ってくれてるんだよ。ちょうど良いね」


 わたしはケールの肩をポンと叩く。


「ケールの光魔法と光魔法の魔力を盗む」


 わたしはケールの光魔法と光魔法の魔力を盗んだのだ。久しぶりに盗のスキルを発動させた。


「今ならケールに光魔法の魔力はないからルベを触りまくっても平気だよ」

「チビ、そのかわりチビから思いっきりその光魔法の魔力が流れてくる。余計にひどいぞ。最低だ。お願いだ、早く要件を済ませてくれ」


 ルベが見るからに具合が悪そうだ。ケールとベロニカが撫で撫でしても抗えないほど。


 一応、ルベにわたしの魔力が流れないように気をつけてはいるのだけれど。きっとわたしもまだまだ未熟だということだろう。


「じゃあ、ケール、見本を見せるよ! だから短剣を貸してね」


 ケールから短剣を借りると、短剣に光魔法の魔力を込め始めた。


 もちろんイメージするのはあれしかない。全ては、あれを自分でやりたいがために、わたしが今存在していると言っても過言ではない。


 わたしが短剣に魔力を込めると、一気に光芒が刀身を作り出し、長剣の形を成す。


「やっばい!! テンション上がるぅ!!」


 光線剣、ライトのセーバーだ。もちろん決め台詞も言わせてもらった。


 けれど、この感動は誰にも伝わらない。みんなポカーンだ。


 むしろ、わたしからルベに流れる光魔法の魔力を、今もなお必死に耐えているルベの視線が痛すぎる。


「チビ、ふざけてないで、はや、く、……」

「……ということだから。はい、盗んだ光魔法と光魔法の魔力はケールに全て返すからね」


 一度やれば満足だから、わたしはポンとケールの肩を叩きながら盗んだものを返した。盗のスキルはやっぱり便利なスキルだと思う。


 その瞬間、ルベが元気を取り戻し、ケールとベロニカが撫でていた手から機敏な動きで抜け出した。撫でられたおかげで、さらに黒色の毛並みは艶々だ。


「ケール分かった? あの状態をずっと維持できるように、訓練しながらチェスター王国を目指そう! そうすれば、そのうち魔力の扱い方も慣れてくるから、無駄に外に魔力が漏れることは無くなると思うよ」


 ルベ曰く、ケールは今、魔力の制御がうまくいっていないので、光魔法を使おうとしても、使えない状態らしい。


 それを解決するためには、ひたすら訓練あるのみだ。そして今、ケールは素直に課題に取り掛かる。


「できました!」

「うん、上手上手。あとは1メートルの長さで維持することを心がけて」


 実際に見たおかげか、光芒で刀身を作ることは上手にできるようになった。けれどそれを維持することはうまくいかない。それはもうひたすら訓練あるのみ。


 わたしとベロニカは引き続き道路整備をしながら歩く。


 そして再びわたしたちは、それぞれの、主にケールの、身の上話をしながらチェスター王国を目指した。





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