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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第四章
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イ・ケ・メ・ン

「嘘っ!?」

「えっ、スーフェ、一体どうしたの?」


 鑑定したわたしは心底驚いた。ベロニカも釣られて驚くほど。だって、だって、


(理力の加護って、あれだよね! あれしかないよね!? あ、だから光魔法の使い手なの!? 嘘っ、激アツ!!)


 けれど、この感動はベロニカに言っても絶対に伝わらない。だから、ベロニカにも伝わることだけを教えてあげる。


「この倒れている人、ケール・コラットさんって名前みたいなんだけど、ケールさんが光魔法の使い手みたいなの。だから、わたしたちの旅は今、目的が果たされてしまったってこと」


 ちなみに、コラットという名は猫ちゃんの品種と同じだ。だからこそ、絶対にケールさんは悪い人ではないと確信した。


「えぇっ、旅が終わりだなんて、そんなの嫌だわ」

「わたしも……」


 わたしとベロニカは長考した。悩んで悩んで悩んだ末に、一つの結論に辿り着く。


「ケールさんの無理強いはしたくないから、目を覚ますのを待とう! だから、隣国までケールさんを運ぼう!」


 隣国に行くことは絶対に諦めたくない。だから、強制的に隣国へ搬送することを決めた。


「どうやってケールさんを連れていくか、だよね」


 この前のママグリフォンみたいに、アイテム袋の中に入れることはさすがに出来ない。


 だからといって、わたしがおぶっていくのは疲れるから嫌だ。


 困った時は、もちろんルベ頼みだ。なんと今回は、わたしが言い出す前に、ベロニカも同じことを思ったらしい。


「ルベちゃんに頼めばいいんじゃない?」

「やっぱり、ベロニカもそう思った?」


 わたしとベロニカは一斉にルベを見た。


「無理だ」


 たった一言吐き捨てて、ルベがわざとらしく尻尾をふりふり。余裕たっぷりに「俺は猫だ」アピールをする。何それ、可愛すぎ。


「魔法を使って運べばいいんだよ!」


 もちろんルベが。


「ふふ、スーフェったら、人間になればいいのよ」

「にゃっ!!」 


 ベロニカが笑顔で放った言葉に、余裕ぶっこいていたルベが驚く。そして、あり得ないくらい狼狽え始めた。


「へ? ベロニカこそ何言ってるの? わたしは人間だよ?」


 意味が分からない。わたしは人間だ。とても可愛い女の子だ。


 もしかしたら、ヒロインのベロニカから見ると、悪役令嬢のわたしは、悪魔に見えるのだろうか?


 わたしが怪訝な顔をしていても、ベロニカの笑顔は崩れない。


「ルベちゃんが……」

「にゃー、にゃー! にゃー!!」


 ベロニカの言葉を遮り、突然ルベが騒ぎ始めた。残念ながらその努力は報われない。


「ルベちゃん、うるさいから猫可愛がってあげるわ」

「にゃにっ!?」


 ベロニカの手がルベをすでに撫でていた。けれど、ルベは必死に抗っている。


「言うな! 絶対にだめだ!! お前、……にゃっ!!」


 猫可愛がりの威力が増したらしい。


 ベロニカの魔力はやはり申し分ないほどあるみたい。それを使いこなし始めてしまった。さすがヒロインチート。


 故に、ルベはもう抗えない。ルベは今、ごろごろと喉を鳴らして、ベロニカを遮る言葉は出てこない。


 その隙に、ベロニカは本題に入る。


「ルベちゃんが、人間になればいいのよ」

「は?」

「ルベちゃんは人間になれるのよ。しかも、イ・ケ・メ・ン!」


 わたしはキョトンとしてしまう。ルベがイケメン、確かにイケ雄猫(メン)だ。


 そして、ルベは元魔王。もしかしたらわたしの知らない魔法が使えるのかもしれない。


「ルベには、人間になれるそんなすごい魔法が使えるの?」


 わたしはルベに確認をした。


「ごろごろごろごろ」


 可愛い。若干の現実逃避感は否めないけれど、ごろごろと喉を鳴らすルベは可愛すぎる。間違いなく猫だと思う。


 けれど、話が進まないので猫可愛がりを一旦ストップして尋問タイム。


「ルベ、どうなの?」

「……人間になれます。正確には、人型に」


 ルベはとうとう観念をした。どうしてか、とても言いづらそうにその事実を告げる。


「へえ、すごい魔法が使えるんだね!」


 あっけらかんとルベを褒めたわたしに、どうしてかルベの方が驚いている。


「あら、スーフェは全く驚かないのね?」

「うん、だって、ルベは頭の良い猫ちゃんだもの。そしてにゃ王だもの。人型になるくらいちょちょいのちょいだよ!」


 人間が猫ちゃんに変身する話はよくある話。だったら、逆もありだとわたしは思う。


「そういえば、ルベちゃんと添い寝とかしてたけど、カルセドニーさんはルベちゃんが人型になれることは知ってるの?」

「カル? あ! 多分知ってるのかも! もしかして、カルはそれでヤキモチを焼いたのかな? ふふ、ルベは猫ちゃんなのにね」

「……もし、人型の方が俺の本当の姿だとしたら?」


 言いにくそうにルベはわたしに尋ねた。もちろんわたしは即答する。


「それはないよ。だって、盗み見れば本当の姿が分かるはずでしょ? ルベは猫ちゃんのままだもの」


 お祖父様の時に、本当の姿が盗み見ることができると確認済み。けれど今、ルベを盗み見ても猫ちゃんの姿のままだ。


「だから、ルベは猫ちゃん! 以上!」

「いや、だって、一緒に寝たり、その、あの、」


 ルベが真っ赤な顔をして焦っている。黒猫ちゃんなのに、顔が赤くなるのが分かってしまう不思議。けれど可愛いから何でもあり。


「あ、もしかしてキスのこと? ふふ、ルベったら純情なんだから! そりゃ、人型のルベを愛でるのは浮気してる感があるだろうけれど、猫ちゃんの姿のルベを愛でるのは無問題! ね、ベロニカ!」

「ふふ、あたしは人型でも、猫型でも、もしもロボットでも、ルベちゃんはルベちゃんだと思うし、愛があれば何だってありだと思うわ」

「猫型のロボット!? ルベはロボットなの!? 未来から来たの!?」

「にゃわけねーだろ!!」

「そっか、残念……」


 猫型のロボットなら、何が何でもアイテム袋をそのお腹に装着させたのに。





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