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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第四章
81/125

綺麗な子を拾いました

「それにしても、ひたすら真っ直ぐだね」


 はっきり言って、飽きてきた。ただひたすら真っ直ぐな道を歩くって、苦行でしかない。


 わたしたちがコックス村を出発して、すでに二時間以上は歩いたと思う。いや、もっとかもしれない。


 ちなみにベロニカは、身体強化の魔法を込めた魔石を使いながら歩いているので、わたしたちに遅れをとることなくサクサクと歩けている。


「魔物も出ないのね? お腹が空いたわ」

「えっ、魔物を食べるの? 現地調達!?」


 魔物=食材という公式が成り立っているベロニカの思考は尊敬に値する。


 けれど、わたしは自分で捌いてまで魔物を食べたいとは思わない。だから、アイテム袋から歩きながらでも食べられるパンを取り出して、ベロニカに差し出した。


「まあ! スーフェありがとう!!」

「せっかくだから、わたしも一緒に食べよう」


 前世日本人のわたしは、食べ歩きも全然できる。


 できるだけ早く隣国に辿り着きたいわたしたちは、休まずにひたすら歩き続けている。さすがに魔境の森のど真ん中で夜を越すのは少ない方がいいから。


「魔物が出ないのは、きっとルベのおかげだよ。ね、ルベ!」

「……」


 返事がないっていうことは、その通りらしい。ツンと澄ました様子でルベが先頭を歩いてくれている。


「それにしてもベロニカも、だいぶ魔法が上手くなってきたね」

「ふふ、ありがとう。でも、やっぱりまだうまくいかないわ」


 ただ歩いているだけではつまらないから、ベロニカは土魔法を使いながら歩いている。土魔法ででこぼこだった道を整えているのだ。


 さらにわたしが、匠のスキルを使いながら仕上げの舗装をしている。わたしたちが歩いてきた道のりを振り返ると、道路整備が完璧だ。



 もちろん今日中に隣国に辿り着くことは叶わず、魔境の森で一夜を明かす。


 そして今日も、サクサクっと道路整備をしながら隣国へと向かって歩く。身体強化のスキルは旅に必須だと思う。


 すると突然、一番前を歩いているルベが突然立ち止まった。


「ルベ、どうしたの? とうとう魔物が出た?」

「ああ、魔物と、……人の気配だ」

「魔物と人!? ということは、魔物に襲われているってこと!? ベロニカ、走れる?」

「ええ、大丈夫よ。早く助けに行きましょう」


 もちろん魔物と戦うのはルベにお任せするつもりだ。


「いた!」


 けれど、見つけた瞬間、魔物はすごい速さで逃げていった。


「逃げた? これもルベのおかげ?」


 ルベを見ると、ちょっとだけドヤッとしていた。可愛いすぎる。


「スーフェ、人よ!!」


 魔物がいたところには、人が倒れていた。わたしたちと年齢も変わらなさそうなくらい小柄な人。


「本当だ。うわっ、傷だらけだよ。ベロニカすぐに治して!!」

「任せて!」

「あっ、ちょっと待って」


 わたしは清浄魔法を使って、その人を綺麗にした。血塗れすぎて怪我の具合が全く分からなかったから。


 それにどんな魔物だったか分からないから、血に毒が紛れていたりしていたら怖い。用心に越したことはない。


「ベロニカお願い!」


 すぐにベロニカは、ぎゅっと抱きしめて聖魔法を使った。


(抱きしめる必要はないと思うんだけどな)


 けれど、ぎゅっと抱きしめる姿は、まさに聖女様っぽい。これも乙女ゲームの強制力のせいなのだろうか。


 そして、見事にその人の傷は治っていった。それなのに、目を覚ます気配がない。


 だから、ベロニカと二人でここぞとばかり、じろじろとその人を観察してしまう。だって、


「うわあ!! とっても綺麗な子だね。男の子? いや、女の子?」


 髪はとても短く、身なりも男の子の恰好だ。けれど、身体の線は細く、とても綺麗な顔をしている。


 わたしの疑問に、ベロニカが自信満々に答えてくれた。


「絶対に女の子よ」

「え? どうしてそんなに自信満々なの?」

「抱きしめたら、とても柔らかかったから」

「にゃるほど!」


 ぎゅっと抱きしめた時、お胸のあたりが柔らかかったらしい。そうすると、余計に一人でこんな場所にいることを疑問に思う。


「目を覚ましそうにもないわね? あたしの魔法が効かなかったのかな?」

「そんなことはないと思うよ。傷は綺麗に癒えてるし。きっと精神的なショックとかそういうのじゃない?」

「精神的なもの? それだと、無理矢理起こすのは躊躇っちゃうわね」

「そうだよね。ねえ、ルベ何かいい方法ない?」


 困った時のルベ頼み。とりあえず、ルベに意見を求めてみる。


 すると、ルベは間髪いれずに答えてくれた。どうしてか、少しだけ呆れた様子で。


「いい方法というか、お前らはまだ旅を続けるつもりなのか?」

「え、突然何を言いだすの? 当たり前じゃない! 光魔法の使い手が見つかるまでは旅を続けるよ!!」


 今回の旅の目的は、光魔法の使い手を探すことだ。裏の目的もあるけれど。


 すると、やっぱりルベは呆れたように言ってくる。


「それなら、旅はここで終わりだな」

「え?」


 ルベの視線は倒れている人に向いている。


「まさか!?」


 わたしは急いで鑑定をした。




 ++++++

 

 ケール・コラット  


【魔法】 四大属性魔法・光属性魔法

【能力】 理力の加護


 ++++++




 わたしたちの旅の目的が果たされた。このままでは、道路整備をしただけで終わってしまう。






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