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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第三章
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聖女の力は王妃を救う

 翌日、わたしとベロニカは、お父様とお母様と一緒に王城へと向かった。


 正直言って、あり得ないほどドキドキしている。だって、本当にうまくいくかどうかなんて確証がないのだから。


(わたしがこんなに緊張しているんだから、ベロニカはもっと緊張しているはずだよね? 大丈夫かな?)


……と思っていたら、お母様と一緒に王城の至る所にあって、見つけると幸せになれるという隠れミッ◯ーならぬ、隠れフェリシアのお花を探して遊んでいる。


(乙女ゲームのヒロインって、やっぱり神経が図太い初期設定なのかな? 王子ルートを選んだら、王妃になるんだもんね。普通の神経じゃ生きていけないか)


 お遊びもほどほどにして、わたしたちは王妃様の部屋へと足を踏み入れた。


「リオナ! スーフェちゃんが聖女様を見つけてきてくれたわよ」

「ふふ、本当に連れてきてくれるなんて、さすがフェリシアの娘ね。スーフェちゃん、どうもありがとう。聖女様、わざわざお越しくださりありがとうございます。このような格好でのご挨拶で申し訳ありません。私はリオナ、と申します」

「は、はい、ベロニカです。よろしくお願いします」


 王妃様は不治の病の症状が進行し、ほんの数日の間なのに、起き上がることさえもできなくなっていた。


(間に合って良かったぁ!! あとはベロニカが、ちょちょいのちょい、だね!)


 けれど、本当に不治の病が治るかどうかは、やってみないと分からない。もしも治らなかったら、もちろんチョロ神に文句を言うつもりだ。


「挨拶は後にしましょう。ベロニカちゃん、お願いできる?」

「え、あ、はい。……ねえ、スーフェ。タダではできないって言えばいいのかな? それに相場はいくら?」


 突然のことに狼狽える気持ちも分かる。けれど、どうしてか、ベロニカの頭の中はお金のこと。


 やはりベロニカの神経は、鋼鉄の鋼でできているらしい。


「ベロニカ、それは絶対に言ってはだめなやつだからね。それに言わなくても、わたしたちの想像以上に貰えるだろうから」

「分かったわ。じゃあ、どうすればいいの? 本当にあたしにできるのかな?」

「大丈夫! わたしを救ってくれた時みたいに、自信を持って強く願えばいいの。王妃様の不治の病を治してって」


 わたしはあえて「不治の病を」と言った。なぜかと言うと、ステータスにそう書いてあるから。


「分かったわ、やってみる! リオナ王妃様、失礼します」


 ベロニカはわたしを治した時のように、ぎゅっと王妃様を抱きしめて、そして、強く願った。


「病気が治るイメージ、元気になるイメージ、あたしならできる、リオナ王妃様の悪い病気を、不治の病を治して! お願いします!!」


 すると、金色に輝く光がベロニカから発せられ、その光が一気に王妃様を包み込んだ。


「綺麗……」


 その光がとても美しくて、とても神聖な光のような気がして、わたしは思わず呟いていた。


 その光に包まれた瞬間から、石のように硬くなっていた王妃様の顔や身体が、みるみるうちに元の姿に戻っていった。


「すごい。ベロニカって、本当に聖女様なんだね」


 今さらだけど、わたしは本気でそう思った。


 ベロニカの聖女の力を目の当たりにするのは初めてのこと。


 けれど、わたしはこの力を決して盗み見ない。聖女の力は、特別な人だけが持つ力だから。


 ……ではない。


(惜しいな。この力があれば、がっぽり稼ぎながら冒険の旅ができるのに。けれど、ルベのために我慢しなきゃ! わたしってば優しいな)


 ルベが聖属性魔法が嫌いだからだ。絶対にルベに嫌われたくないもの。


 そんなことを思っている間に、金色の光がゆっくりと収まっていく。


「ふうっ、たぶん、できました!」


 肩で息をしながら終了を告げるベロニカの言葉を聞き、お母様は王妃様に駆け寄った。同時にわたしは王妃様のステータスを確認する。


(良かったぁ!! 不治の病って文字が消えてる。これで完治ってことだね!!)


 王妃様のステータスには、日本語で書かれた「不治の病」という文字がなくなっていた。


 王妃様が死ぬ運命を回避できたのだと思うと、とっても嬉しくて、不覚にも涙が零れそうになった。


 だって、乙女ゲームの運命は、どうにかすれば変えられるってことが、立証できたのだから。


「リオナ! 気分はどう? 顔の石化は治ってるわよ。身体は? 動かせる?」

「ええ、全く苦しくないわ。とても身体が軽いもの。私の病気が本当に治ったってこと? 嘘、もうだめかと思っていたのに……聖女様、本当にありがとうございます。ありがとうございます……」

「ベロニカちゃん、本当にありがとう」


 王妃様とお母様は抱き合いながら、ぽろぽろと大粒の涙を零してベロニカに感謝をしていた。


 きっと、ずっと苦しい思いをして、最悪な場合も覚悟していたのだろう。


「どういたしまして……」


 どうしたらいいか分からなくなったのか、ベロニカは救いを求めるように、わたしの方をちらりと見る。


 だからわたしは、言葉の代わりに満面の笑みでピースサインをして「良くやった!」とベロニカを褒め称えた。


 それを見たベロニカは、ようやく安心できたのか、安堵の表情を浮かべ、そしてとても嬉しそうに笑っていた。


 



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