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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第三章
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魔境の森に街道を

 旅に出た、と言っても、わたしたちが向かった場所はコックス村の別邸だ。もちろん、転移魔法でサクッと転移した。


「お祖父様!」

「おお、スーフェちゃんじゃないか。どうしたんじゃ?」


 お祖父様は相変わらず、のんびりとコックス村での余生を楽しんでいるみたい。そして、視界に入るマダムたち。


(相変わらずだな……)


 げんなりしてしまいそうになるけれど、今はやらなければならないことがある。


「魔境の森の木をいただきたいんですけど、権利関係って、どうなってるんですか?」

「木を伐採するのか? 魔境の森の木ならいくらでも伐採して大丈夫じゃ。と言うのも、以前にも、隣国との国交を活発させようと、街道を作る計画が出たんじゃけど、魔物が危険だから頓挫してしまったんじゃ。だから、街道を作っとると言えば、褒めはされど怒られはしないんじゃ」

「なるほど! 街道を作ればいいんですね」

「そうじゃ。隣国まで一本道が通ればわしも嬉しいのう。そうすれば、シルビアちゃんに簡単に会えるようになるからのう」

「……」

「シルビアちゃんとは清い関係じゃ!!」

「もうっ、分かりました! では、行ってきます!」

「行ってきます、って? まさか本当に……」


 お祖父様の言葉を最後まで聞かずに、わたしは魔境の森へと向かった。


「次は、精霊さんに許可を取ろう! 精霊さーん、森の木を貰ってもいいですか?」

 

 ふわりふわりと現れた精霊さんが、わたしを一瞥して言い放つ。


『お前が凶暴スーフェか。だめに決まってるだろ?』


 精霊ネットワークでは、すでにわたしは要注意人物らしい。もう魔境の森の精霊さんにまで話が伝わっていた。


「失礼な!! それに今回は教会を建て直したいの。ペレス村の教会。だから、木をちょうだい!」

『ああ、あそこの教会か。あそこがなくなるのは俺らも嫌だ。それなら少しくらいは分けてやるか』

「本当!? ありがとう。じゃあ、さっそく! えいっ!!」

『!?』


 精霊さんたちの気が変わる前に、わたしは土魔法を使った。同時に風魔法も使った。土を柔らかくし、上手に木だけを抜いて、浮かせたのだ。


 しかも、お祖父様の要望通り、森の中を通れるように真っ直ぐに。まるでモーセの海割りのように。


「せっかくだから、隣の国まで木を全部抜いちゃった! これで隣の国まで楽に行けるようになったよ!」


 魔境の森に一本の街道を作った。


 もちろん抜いた木は全て、ルベの可愛い前足で広げてもらっているアイテム袋の中にイン!


(ルベのお腹にアイテム袋を付けたくなるけれど、残念ながら張り付かないよなあ……)


 そんなことを思いながら、次から次へと木が吸い込まれていく。けれど、時間がかかりすぎて、自分でもやりすぎた感が否めない。


「チビ、このアイテム袋の中に入れた木はどうするんだ? さすがに多すぎるだろ?」

「教会を建てる分と、あとベロニカのお家! それでも残った分は、……そうだ! 旅の途中でどこかに植樹するのはどう? わたしが旅した記念樹みたいにさ」


 わたしのアイデアに、ルベが深いため息をつく。


『スーフェ、お前、本当に信じられない』


 精霊たちは、唖然としていた。わたしの精霊さんたちからの好感度は、地よりもさらに深くに落ちてしまった。


「よし! できた!!」


 ようやく全ての木がアイテム袋の中に入った。


「スーフェちゃん、本当にやりおったのか?」


 お祖父様が様子を見にきた。その顔は、若干青褪めている。


「はい! 真っ直ぐに抜けていて、とってもいい眺めですよね」

「魔物が出てこないかが心配じゃのう」

「そこはお祖父様と精霊さんたちとで頑張ってください」


 相変わらず他力本願だ。


「こんな時こそ、魔術師がいてくれればいいんじゃがのう」

「魔術師、ですか?」

「ああ、魔術師は悪いやつだけじゃないんじゃ。前に魔術師の隠れ里の話をしたじゃろ?」

「はい、二度と行きたくないと言っていた場所ですよね?」

「あそこは、魔の樹海の奥深くにあって、その隠れ里の周囲には魔物避けの結界が張ってあるんじゃ。その魔物避けの結界があれば、きっとこの道も安全に通れるじゃろう」


 ちなみに、魔の樹海とは、魔境の森とは比べ物にならないほど強い魔物たちが出るらしい。


「確かに、いきなり魔物が飛び出してきたら危険ですよね。急ぎの要件が終わったら、試しにこの道を通ってみますよ」


 次の冒険の旅は、隣国に行ってみようと今決めた。


「その時は、シルビアちゃんにお土産でも持っていってもらおうかのう」

「致しません」

「スーフェちゃんのためを思って言ってるんじゃ。シルビアちゃんは良いところのお嬢さんだったはずじゃから、頼ると良い」

「それなら、……分かりました」


 うまく言いくるめられた感も否めないけれど、シルビアちゃんにお土産を持っていくことも決まった。






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