表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第三章
59/125

寂れた村の教会

「ペレス村に着いたぁ! 第一村人発見!!」


 ようやくわたしたちは、目的地の村に着いた。


 カルや精霊さんたちと別れを告げてから、傷心の中歩いてきた、わけではない。サクッと転移魔法で村までひとっ飛び。


 ここはペレス村という、ど田舎の村だ。


 名産品もなければ、観光名所もない。美味しい食べ物すら期待できないような村だと、親切な第一村人は教えてくれた。


「こんな辺鄙な村にわざわざ……」

「ちょっと、ルベ! 声が大きい。文句は小声で言って!!」


 ルベが辺鄙な村と言った瞬間、村人たちの突き刺すような視線がわたしに向いた。


 猫ちゃんが喋るわけなどないから、全ての視線がわたしに向く。


 そそくさと逃げるように、目的の教会にまっしぐら。


(もうっ、観光したかったのに!!)


 ペレス村はとても小さい村で、半日かからずに回れそうな村だった。


 しかも、緑があまり見当たらなく、動物もいない。正直言って、寂れた村という表現がぴったりだった。


「本当にこの村でいいのかな? うーん?」


 悩んでいても仕方がない。乙女ゲームでのベロニカの故郷について、全く思い出せないのだから。


 小さい村なので、教会もすぐに見つかった。


「あったー! きっとこの教会で間違いないはず! この調子でベロニカにも会えるといいな」


 わたしはポジティブに考えることにした。


 小さい村だから、一軒一軒お宅訪問をしたとしても、一日もあれば全ての家を回り切れるだろうし、誰かに聞けば、簡単に見つかりそうだと思ったから。


「きったねぇ、教会だな」

「本当、古くてぼろぼろで、今にも壊れそうだね」


 とても歴史の重みを感じる教会なのに、わたしたちは文句を言う。今は誰も周りにいないから言いたい放題だ。


「で、どうしてこの教会?」

「前にも話したことのある乙女ゲームのヒロインが、多分この教会で聖女の力を目覚めさせるはずなの。それが、マリリンの遠い親戚だというベロニカって女の子のことだよ」

「聖女……」


 ルベがぽつりと呟いた。すかさずわたしはルベを揶揄う。


「あれれ? もしかしてルベってば、聖女様のことが好きなの? にゃ王なのに?」

「にゃわけないだろ!! 近寄りたくもない。てか、この教会にも俺は絶対に入らないぞ」


 さりげなく「にゃわけない」と言ってしまっているルベが可愛すぎてつらい。


 これを揶揄うと、二度と言ってくれなくなるだろうから、本当は「にゃんで?」と答えたいところをぐっと我慢して、わたしは普通に尋ねる。


「どうして?」

「俺、というか闇属性を主としている魔族は、聖属性と光属性は命をも脅かす危険な存在なんだよ。俺はこの姿になったおかげか、それなりに大丈夫にはなったけれど。でも嫌悪感は拭えない」

「そう言えば、神様も聖魔法や光魔法で魂を浄化がどうとか言ってたね。そうすると、治癒魔法とかはどうしてるの?」

「闇属性の中にも治癒魔法ってのがあるんだよ。ただ、それこそ使えるやつが限られている。俺もそれはできない」

「にゃるほど〜、できる人がいたら、即盗み見るしかないね!」


 ルベのためにも、それだけはやってあげたいと思った。そして、さりげなく「にゃるほど」と言ったのに、ルベに普通にスルーされた。


「じゃあ、わたしだけ中に入ってちょっと見てくるね」


 ルベを置いて、わたしは教会の中へと入っていった。そろりそろり。


「うっわ、今にも崩れそう……」


 相変わらずの罰当たりな発言だ。けれど、実際問題、時間の問題だと思う。それに、神父様の姿さえ見えない。


 本当に中に入っていいものなのか、少しだけ不安になってしまう。だから、そろりそろり。


「ステンドグラスはとっても綺麗! カルとの結婚式はやっぱり教会かな〜。でも、もっと綺麗なところがいいな」


 礼拝堂のステンドグラスからは、光が差し込み、掲げられた十字架の影を幻想的に彩っていた。


 わたしはお祈りを捧げる。


「どうか、カルと幸せな結婚ができますように。子供にも恵まれて、できれば男の子と女の子がいいなあ。それで、みんなでルベをもふもふして過ごしたいです」


 教会の外で身震いをする黒猫ちゃんには気付かずに、むふふ、と妄想を膨らませてしまう。そして、重要なことを思い出す。


「あ! それと、ベロニカの聖女の力が目覚めて、王妃様の不治の病が治りますように。もしも聖女の力で不治の病が治らなかったら、猛抗議しに行くからね!!」


 神様に祈った。神様というか、チョロ神に。


 結局、教会の中では村人の誰とも会わなかったので、わたしは外に出た。


「ルベ、教会の中には誰もいなかったよ」

「外も誰も来なかったぞ。どうする?」

「うーん、仕方がない。今日は村の情勢を探ることにしよう!」


 村の情勢を探ると言えば聞こえはいいけれど、結局は観光がしたいだけだったりする。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ