表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第三章
54/125

精霊ネットワーク

 わたしとカルのデート……もとい、冒険の旅は順調に進んでいる。


 今まであまり会えなかった時間を埋めるかのように、たくさんの話をしながらも、サクサクッと歩いてペレス村に向かった。


 そして今は、件のゲルガー公爵領の西部に位置する森の中を歩いている。


「ふふ、ピクニックみたいで楽しいね!」

「うん、スーフェと四六時中一緒にいられるなんて、夢のようだよ」


 全く緊張感の欠片もなかった。


 わたしはただ純粋に、カルとのデート気分を味わっていた。運が良いことに、出発してから今まで、一度も魔物に出くわしていないから余計にだ。


(魔物に出会わないなんて、やっぱり冒険ファンタジーの世界じゃなくて、乙女ゲームの世界が主体なんだろうな)


 そう思ってしまい、自らフラグを立てようと口にする。


「魔物が全然出てこないおかげで旅が順調だね」

「それはきっと、ルベさんと精霊たちのおかげだよ」

「ルベと精霊さん?」


 わたしたちの冒険の旅という名のデートの邪魔をしないように、と気を利かせたルベは、姿を消して遠くからずっと見守ってくれている。


「精霊たちが追い払える魔物は、追い払ってくれているんだ。そして、精霊たちでも難しいような魔物は、ルベさんが追い払ってくれてるんだよ!」

「そうだったんだ! 感謝しなくちゃね」


(魔物が出てきやすくするためのフラグなんていらなかったね)


 乙女ゲームの世界だからではなく、にゃ王と精霊さんたちのおかげだと知り、二倍嬉しくなった。


 おかげで、引き続きカルとのデートを心から楽しめる。


「精霊さんって、他にはどんなことができるの?」

「精霊たちの個々の力を、人間に使わせてあげることができるんだよ。あとは、精霊たちの中には国境を超えたネットワークがあるみたい。だから、言葉さえ交わせれば、精霊たちに頼んで情報収集もできるよ」

「精霊さんたちって、グローバルなんだね」


 可愛いだけではない精霊さんたちに、わたしは感心した。


「カルは精霊さんたちとお話しができるんだよね?」

「うん。スーフェも、きっとできるはずだよ?」


 わたしは言語理解のスキルを持っている。間違いなく会話ができるはず。だから試しに呼びかけてみた。


「精霊さん!」

「……」

「返事してくれないね?」


 わたしはがっくりと肩を落とす。


(もしかして、悪役令嬢という設定のせい!?)


 そう思ってしまい、チョロ神に怒りの矛先が向こうとしていたところで、優しいカルがフォローをしてくれる。


「きっと、精霊たちは照れてるんだよ。少しずつ話しかけていこう」

「うん!」


 照れているわけではないことに気付くのは、この後すぐのこと。


「もしもスーフェが、危険な目に遭いそうになったり、困った時には、近くには必ず精霊たちがいるだろうから、声をかけてみてね。どれだけ遠くを旅していても、すぐに駆けつけるから!」

「本当! 嬉しいなあ」

「もちろん浮気をしたら、すぐにバレるからね」

「もうっ、わたしが浮気をするわけないじゃない!!」

「……」


 どうしてか、カルが黙ってしまった。


「!?」


 そんな時、ルベが突然わたしたちの前に姿を現した。


「どうしたの? ルベ?」

「魔物の気配がする。グリフォンだろうけど、どうしてか、すごく弱い」

「グリフォン?」


 マリリンが、グリフォンの目撃情報があったと言っていたことを思い出し、わたしはわざとらしく、カルの手と繋いでいる手にぎゅっと力を込めた。


 半分は未知の魔物がいることが本当に怖い。もう半分は、可愛さをアピールしようというあざとさだ。


 そんなわたしに、じとりとした視線を向けながら、ルベは言葉を続ける。


「ああ、ヤツらは、とても利口で普段は大人しい。けれど、敵と認めると襲いかかってくる。精霊たちじゃ、手に負えないだろう?」


 ルベは、確認するようにカルを見た。


「うん、ごめん、スーフェを怖がらせたくなくて言わなかったんだけど、ルベさんの言ってる通りだよ。けれど精霊たちは大丈夫って言ってるんだ。むしろ、そっちに行って欲しいみたいで。でも、一応、迂回する?」

「どうする? チビが決めろ」

「どうするも何も、行くしかないよ。精霊さんの頼みなら、なおさらだよ! それに、いざとなったら頑張るから大丈夫!」


 もちろん、ルベが頑張る、という意味だ。そして、そのまま真っ直ぐ突き進む。


「あそこにいるのがそうだな」

「えっ、どこ? ルベはどうしてそんなに余裕なの?」


 もちろん、にゃ王だからに決まっているのだろうけど。


 ルベの可愛い前足が指し示す方に目を凝らすと、グリフォンがいた。


 大の大人3、4人が余裕で乗れるんじゃないかというほど、とっても大きなグリフォンが。


「俺たちがたどり着く前に、死んでしまったみたいだな」


 息絶えて死んでいた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ