表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第三章
49/125

王妃様の病

「スーフェ、そろそろリオナ王妃の部屋に入るよ。けれど、ここからはフェリシアとだ。さすがに私は入れないからね」

「さあ、スーフェちゃん、一緒に行きましょう」

「はい、お母様」


 わたしはお母様に連れられ、部屋の中に入った。はっきり言って、心臓がドキドキしている。


 そして、私の目に飛び込んできたのは、ベッドの上に横たわる王妃様の姿だった。


「リオナ、お待たせ。娘のスーフェよ」

「こんにちは、スーフェちゃん。こんな格好でごめんなさいね」

「こんにちは……」


(想像以上に、深刻そう……)


 王妃様を見た瞬間、わたしは事の重大さを、ようやく理解した。


 王妃様の病状が、見るからに普通の病気ではなかったから。


 右半身が真っ黒に変色し、ゴツゴツとした石のように硬くなっている。


(これって、本当に治る病気なの?)


 きっと、わたしが青褪めて、声も出ないのが分かったのだろう。王妃様はわざと明るく振る舞ってくれた。


「ふふ、こんな姿を見て驚いたでしょう? もう私、このまま全身が石になって死んじゃうのかも。って王妃がこんな泣き言を言っていたらだめよね。全身が石になってしまったら、王城の一番目につく場所にでも飾ってもらおうかしら」

「もうっ、リオナったら、そんなこと言って……でも大丈夫よ、絶対に何とかなるから!」

「王妃様、とりあえず、失礼しますっ」


 わたしは王妃様から【盗】のスキルで、この得体の知れない病気を盗もうと試みた。


 けれど、できなかった。


(えっ? どうして? 神様から貰ったこの【盗】のスキルでもだめなの? なんで?)


 狼狽えるわたしの目の前には、悲しそうに微笑む王妃様の姿。


 そんな姿を見てしまったら、自分の無力さに泣きたくなってしまう。


(わたしには、なす術がない……いや、諦めたらそこで試合終了だ。絶対に何かあるはず!!)


「あの、お話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」


 わたしの言葉に、王妃様は優しく頷いた。


「ある日突然、右手の変色から始まったの。そのうち、腕、肩と広がり、顔にまで。徐々に石化も始まって、今ではもう私の右上半身は動かなくなってしまったわ。もちろん王宮の待医にも診てもらったの。でも原因は分からなかった。鑑定のスキルを持つ者にも見せたわ。けれど、やはり分からなくて。ただ……」

「ただ……?」

「その者が言うには、ステータス表示に“読むことのできない文字”が書かれていると言うの」

「読むことのできない文字?」


 わたしは嫌な予感がした。ステータス表示、読めない文字、何か聞いたことがある、と。


「わたしにも鑑定させてもらってもいいですか?」

「あら? スーフェちゃんは鑑定もできるの?」

「はい」

「さすが、フェリシアの娘ね。どうぞ、好きなだけ見てもらって構わないわ」


 王妃様の了解を得たことで、わたしは心置きなく鑑定した。



 ++++++


 リオナ・フォン・ロバーツ 王妃

 『不治の病』


 ++++++



(不治の病……しかも、ばっちり日本語で書かれているじゃないの! もうほぼ確定じゃん!!)


 嫌な予感が当たってしまった。


「ふふ、無理しなくてもいいのよ? 私はもう覚悟はしてるわ。だから、会話のできるうちにフェリシアにお別れを言いたくて、今日来てもらったのよ。ただ、息子にまでこの病気が受け継がれているのではないかと心配でね……息子にも読めない文字が書かれているらしいの」


 それを聞いたわたしは思った。


(王子は攻略対象者だから、きっと攻略対象者って書かれてるんだろうな。でも、不治の病か。乙女ゲームで不治の病?)


「ああっ!!」


 わたしは思い出した。


(王子も原因不明の不治の病を患って、それをベロニカに聖女の力で治してもらうんだった。じゃあ、もしかして、これも聖女の力だったら治せるんじゃない?)


「あの、お母様、この国に聖女様っていらっしゃらないのですか?」

「聖女様? いないわよ。もう何百年ってロバーツ王国に聖女様は誕生されてないはずよ。ねえ、リオナ?」

「ええ、他国にも、私の知る限りはいないはずよ」


(え、でもベロニカは……って、そうだ! 高等部に入学する直前に、聖女の力を目覚めさせるんだっけ)


 ヒントがあったことで、わたしは乙女ゲームについて、僅かながら思い出すことができてきた。


 それに、乙女ゲームの一巡目と言えば、王道の王子ルート。王子ルートだけは多少なりともプレイした記憶があったおかげでもある。


(そういえば王子が言ってた気もする。母上も同じ病気だったって。だった? ってことは、そうだ、王子のお母様って亡くなってる設定だ……)


 わたしは一瞬にして青褪めた。


(このまま放っておいたら、王妃様が死んじゃう……)






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ