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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第二章
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にゃ界が平和な理由

 羨ましいほどルベのことを撫で回しているカルの顔は、少しだけ怒っている。


 ルベは、なかなか口を割らない。その間に、わたしは考えた。


(カルには言わない方がいいもの、って何かな? ルベは「今起きたこと」って言っていたよね? さっきわたしがしていたことって……)


「あ! もしかして、わたしがモノマネをしたことかな?」


 少しだけ顔を赤く染めながら、わたしはカルに白状した。


「モノマネ?」

「うん。前世の可愛い女の子のモノマネだよ。でも、カルには恥ずかしくてできないよ」


 一応、わたしにだって恥じらいはある。好きな人の前でモノマネをするなんて、ハードルが高すぎる。


「それにモノマネっていっても、全然うまくないし。だから、ルベもそんな下手なものを見せるなって思ったんじゃない?」


とは言うものの、本当は似てる自信もそれなりにある。毎日のように練習した渾身のモノマネだから。


 けれど、カルに披露するならやっぱり話は別だ。明らかに準備が足りないから。故に、わたしは焦らす。


 そんなわたしの告白に、カルは安心したようで、ふっと笑みを漏らした。


「なーんだ。そんなことか。じゃあ、いつか僕にも見せてくれたら嬉しいな」

「ふふ、じゃあ、練習頑張るね!」


 わたしは決意した。


(よし! やっぱり虎縞模様のビキニを買おう! ツノも必要だよね。完璧に仕上げてみせる!!)


 それになんの因果か、わたしには雷魔法が使える。……けれど、カルには使いたくない。


(その時は、ルベに落とせばいいか!)


 ちらりとルベを見ると、ブルッと震えていた。



「スーフェ、綺麗になったね。また惚れ直しちゃいそうだな」

「もうっ、カルったら!!」

「浮気、しなかったよね?」


(もしかして、カルは領主の息子と一緒にいたことを勘違いしてるのかな? 嫉妬してくれてるの? ふふ、カルったら、わたしのことを大好きなんだから!)


 カルがまた嫉妬してくれていたことに嬉しくなったわたしは、声高々に宣言する。


「当たり前じゃない! 浮気、だめ、絶対!! でも、寂しすぎて、ルベと一緒にベッドで……」

「わー、わー! わー!!」


 わたしが話していると、突然ルベが騒ぎはじめた。


「ルベ、うるさいよ? それに『わー』じゃなくて『にゃー』でしょ!」


 わたしがルベを嗜めていると、カルは笑っているはずなのに、目が笑っていない。


「……スーフェ、ルベさんとベッドで?」

「えっと、そう、一緒にね……」

「にゃー、にゃー! にゃー!!」


 愚直な黒猫ちゃんのルベは、にゃーと騒いだ。


 カルもわたしとルベの間に何かがあったと、容易に想像がついてしまったのか、ルベを睨み、そしてジリジリと近寄って行く。


「ルベさん、もう大体のことは聞いてるからね。だからきちんと答えて。スーフェにどこまで手を出したの? ルベさんにもお仕置きした方がいい?」

「手なんか出してねえよ!!」


 間髪入れずに、ルベは否定する。けれど、余計なことを言う人がいる。もちろんわたしだ。


「ふふ、チューはしたけどね!」

「あ、ばか……」

「スーフェ!? 嘘!? 本当に? それは聞いてない!! 冗談じゃなくて?」


 カルはどうしてなのか、とても驚いていた。


「ふふ、カルったらルベにまで嫉妬してくれるの? わたし嬉しくなっちゃうよ! それに猫ちゃんとチューくらいするでしょ? あ、もしかしてカルもルベとチューしたかった?」


 能天気なわたしの言葉に、カルもルベも思いっきり首を左右に振る。物凄く嫌そうに。


「……ルベさん、洗いざらい全てを話してもらいますよ」


 わたしに聞いてもやっぱり無駄だと思ったのか、カルはルベを問い詰めた。ルベは全てを話し始めた。



 チビはとんでもないものを盗んだのです。自分の心を、と。



 一部始終を聞いたカルは、流石にルベを責めることはできなかったみたい。


「はあ、それじゃあ、ルベさんは悪くないよ。ねえ、スーフェもいい加減気付けば?」

「え? 何に?」

「「……」」


 わたしはもちろん全く気付いていない。


 カルは本当は言いたいけれど、ルベの意を汲んでなのか、何も教えてはくれなかった。


 ルベはルベで、本当のことを言わないのには、一応理由があるみたい。かと言って、もう今さら本当のことは言い出しにくい。


「とりあえず、金輪際、スーフェは心を盗むのは禁止!」

「え!? 嘘!? たまにならいいよね?」

「だめ! お仕置きだからね!!」


 カルは断固として首を縦に振ろうとしない。わたしもわたしで引き下がらない。


「せめて、今晩だけは……」

「だめ、絶対!!」


 カルは行き場のない心のモヤモヤを、ルベにぶつけるように、めちゃくちゃルベを撫でまくっていた。


「カルばっかりずるい!! わたしもルベを撫でたい!!」

「スーフェはだめ! 反省しなさい!!」

「えっ、どうしてそんなに怒ってるの?」


 カルに怒られて、わたしは今までにないくらいしょんぼりだ。


 ルベはルベで、カルに対して申し訳ない気持ちでいっぱいなのか、カルの気の済むまで撫でられていた。


(あれ? そう言えばルベって魔王だよね? やっぱり、にゃ王の間違いだよね?)


 こんなルベがにゃ王(魔王)だったからこそ、にゃ界(魔界)は平和だったのかもしれない。






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