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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第二章
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小悪魔な女の子

 わたしとお祖父様による、世界一くだらない勝負の幕が開けた。


 開幕して早々に、お祖父様が目の前を歩いていた女性を口説く。


 百戦錬磨のスキルは、やはり本物らしい。即約束を取り付けていた。


「どうじゃ、今ならこの勝負をなかったことにしてあげても良いぞ?」


 お祖父様の上から目線に、わたしはすでにご立腹。


「心配ご無用です。わたしが負けるはずなどありませんから。お祖父様こそ『ギャフン』と言う練習でもなさっててください」

「強がっていられるのも、今のうちじゃ」


 お祖父様は次から次へと女性を口説いていった。本当に節操がない。


「さて、わたしはどうしようかな? お祖父様のように片っ端から声をかけてみる? ……正直面倒だよね。それに恥ずかしすぎるし」


 わたしは全くやる気がなかった。けれど、ちょうどわたしの目の前に、昨日会った少年がいたので、声をかけてみることにした。


 わたしの誘い文句は、


「わたしのために、時計広場に来てくれませんか?」


 そんな可愛いらしいものではない。実際は、


「あ! 昨日の子だよね? お祖父様が、冒険者時代の話をしてくれることになったから、12時までに時計広場に集まってね。みんなにも広めてもらってもいい?」

「本当か! 絶対にみんな喜ぶよ!! 今から声をかけてくるね。父ちゃんたちも仕事を休んででも来るはずだよ」


 お祖父様を餌に、この村の男性陣を呼び寄せる作戦だ。


 あとは、この話が勝手に広まるのを待つだけ。一時間もあれば、確実に広まるという。


(あんな最低なお祖父様なのに、不思議と人気だけは、絶大なんだな)


 だからこそ、昨日の少年たちと会話をした内容をもとに作戦を練ったわたしは、かなり勝算があると踏んでいる。


 全くもって、わたしのモテ要素は皆無だけれど。


(こんなつまらない勝負、勝てればいいよね)


 そんな些細なこと、全く問題ない。早く終わって欲しいとさえ思っている。


 けれど、勝負には勝ちたい。確実に勝つために、もう一つだけやらなければならないことが残っていた。


「あとは、領主様の息子に会わなきゃ!」


……ということで、わたしはジャージャーうるさい領主の息子を探した。


 お祖父様リスペクトの領主の息子にも、他力本願の決まり文句で、広場に誘い出すこと自体は何ら問題はないはずだ。


 けれど、この勝負に勝つためには、領主の息子の協力が不可欠だった。


(あ、いた!)


「こんにちは! あの、お願いがあるんだけれど……」


 わたしは自分の目的のために、お祖父様との勝負について領主の息子に話した。


「じゃあ、お前もいろんな男に声かけてるんじゃけえ?」

「わたし? そんな恥ずかしいことしないよ」

「ふーん。じゃあ、声をかけたのは俺だけなんじゃ……広場に俺も行った方がいいんじゃけえ?」

「もちろん来てほしいな。だって、あなたもお祖父様のお話を聞きたいでしょ?」

「……」


 どうしてか、お祖父様作戦が通用しない。これはわたしの想定外の出来事だ。


「えっ、来てくれないの?」


 だから、少しだけ上目遣いで瞳を潤ませてみた。わたしの知るモテテクだ。


「可愛く頼んでみるんじゃ。可愛くできたら行く」

「えっ……」


(今まさに可愛く頼んだっていうのに、スルーってこと!?) 


 せっかくのモテテクが通用しなかったことに、少しだけショックだった。


「できないんじゃ、やっぱりモテない女じゃけえ」


(何となくイラッとするけれど、仕方がない。やってやるか!)


 わたしは前世の記憶を呼び起こした。わたしが今までで見た中で、一番小悪魔で可愛い女の子の記憶を。


 わたしは渾身の誘い文句(モノマネ)を披露した。


「ダーリン、来て欲しいっちゃ!」


(やっぱり小悪魔な女の子って言ったら◯ムちゃんよね。ラ◯ちゃんは悪魔じゃなくて可愛い鬼だっけ?)


 渾身の出来に、わたしは大満足した。けれど、次の瞬間、顔から火が出るほど恥ずかしくなってしまった。


(そう言えば!)


 モノマネをしたはいいけれど、ここは異世界。誰も◯ムちゃんを知らないはずなのだから。


(やっちまったか……)


 ちらりと領主の息子の反応を窺うと、あからさまに目を逸らされた。


(オリジナルを知らなくても可愛いはず。それなのに、通用しない!? ってことは、わたしって本当にモテないってこと!?)


 わたしはショックを受けた。けれど、領主の息子の答えは意外なものだった。


「分かった、行くじゃけえ」

「やったぁ!!」


(さすがラ◯ちゃん!! 異世界でもモッテモテだね!)


 小悪魔な女の子は、やっぱり可愛いと思う。


(今度、虎縞模様のビキニでも買おうかな?)


 後に、ビキニアーマーさえも着こなしてしまうわたしの露出狂は、きっとここから始まった。


「それとね、とっても大切なお願いがあるの。きっと、あなたにしかできないこと」

「なんじゃ? 何でも言ってみるんじゃ!!」

「たくさんの牛さんと、散歩がしたいの!!」


 わたしのお願い事は、もちろん喜んで聞いてくれた。






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