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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第一章
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双子の見分け方

「……なわけないでしょう!!」


 ルッカ様とルッド様の意味不明な発言に、気付いたらわたしは突っ込んでいた。


(意味分からない!! いきなり何を言い出すの? それに、どうしてわたしの時よりも、カルを見る時の方が、うっとりとした表情をしてるのよ!? 絶対におかしいでしょ!!)


 別にルッカ様とルッド様に好かれたいわけではない。ただ単純に、女として悔しかった。


 そして、ここで疑問が生まれた。


(カルは、二人のことを鑑定をしていないよね?)


 だからわたしは、こそこそこそ、とカルに話しかけた。


「ねえ、どうしてカルには分かるの?」

「何となく分かるんだ。それに、精霊たちも教えてくれるから、間違えることは絶対にないよ」

「なるほど〜」


(何となく、ってことは、兄弟のなせる技みたいな感じかな?)


 けれど、このままではわたしの運命の人のカルが危険だ。こういう時は、生け贄を捧げるしかない。


「ルッカ様とルッド様、きっと世の中にはお二人を見分けられる方なんてたくさんいるはずです。学園に入れば、ルッカ様とルッド様のことを分かってくれる、とても可愛い女の子が絶対にいますから!」


(全てをヒロインちゃんに丸投げしてやる!)


 まだ会ったことすらないヒロインちゃんに、この後始末を全てを託そうと、わたしはうまく誘導することを企てた。


(乙女ゲームの物語の通りに、ルッカ様とルッド様を攻略してもらって、わたしはカルと結婚……できない!? だって、わたしは死亡エンドだから!? いや、そもそもわたしは旅に出るから関係ないか)


 悪役令嬢は不在で、乙女ゲーム自体は勝手にやってもらう。そうすればきっと、ただただ甘いだけの、とても平和な乙女ゲームが成り立つと思う。


(でも、実は少しだけ、気になることがあるんだよね……)


 ふと疑問に思ったことを、わたしはルッカ様とルッド様に投げかけた。


「どうして自分たちを見分けて欲しいのに、ルッカ様とルッド様は同じ恰好をしているんですか?」


 わたしの質問に、ルッカ様とルッド様は顔を見合わせる。


「だって……」

「ねえ……」


 そして、お決まりのように同時に答えた。


「「双子だから同じに決まってるじゃん」」


 予想通りのその答えに、わたしは盛大にため息をついた。


(やっぱり、双子っていう設定だからなのか。きっと、同じ恰好をしなければならないという考えが、初期設定で備わっているんだろうな)


 頑なに、同じ髪型をして同じ服を着るルッカ様とルッド様。けれど、二人はきちんと見分けた人を、運命の人だと言うのだから。


(それって、自分たちを明確に区別してほしい、という願望はあるってことだよね)


 だから、同じ恰好をしている本当の理由は、乙女ゲームの初期設定がそうさせているのだろう、とわたしは推測した。


 そこで、わたしは決意した。


(カルはわたしの運命の人なんだから、二人には渡さない! わたしが旅に出ている間に、万が一にでもカルが誑かされたら困るから、絶対にこの状況をどうにかしなくちゃ!)


 わたしが安心して旅に出るためにも、どうにかしてその初期設定を上書きしてやろう、とわたしは頭を振り絞る。


(双子だから同じでなければならない、という考えをどうにかするって、どうすればいいんだろう?)


 わたしはルッカ様とルッド様をじーっと見つめた。頭の先から爪先まで。やっぱり全てが同じに見える。


 わたしは再びカルに、こそこそこそ、と尋ねた。


「ねえ、二人って色違いの服を着せたりしないの?」


 前世での知識として、双子の子供たちを明確に見分ける方法として、髪の分け目を変えるとか、色違いの服を着せるという方法があった。


「うん。前に色違いの服を着させようとしたことがあるみたいなんだけど、同じ色じゃなきゃ嫌だって言われちゃったみたいなんだ」

「同じ色……」


(それなら、同じ色だと納得させることができれば、着てくれるかもしれないってことだよね? それなら、うん、イケるかも!!)


 わたしは自信満々に、アイテム袋からあるものを取り出して、カルにそっと手渡した。そして、こそこそこそ、と耳打ちをする。


 わたしの計画に、カルは大きく頷き返してくれた。


(いざ、勝負!!)


「突然ですが、ルッカ様とルッド様に、カルから嬉しいプレゼントを差し上げます!」

「プレゼント!?」

「欲しい欲しい!!」

「但し、運命の人かもしれないカルから貰ったものなので、それぞれが貰った物を必ず使ってくださいね。交換もしちゃだめですよ」

「もちろん必ず使う!」

「絶対に交換しない!」


 嬉しいプレゼント、と聞いたルッカ様とルッド様は、とても喜んでくれた。


(ふふ、まだまだ子供なんだから)


 少しだけ微笑ましかった。それに、まだ子供であるからこそ、この作戦が成功する確率も格段に上がる。


 けれど、やっぱり二人は口を揃えて言ってきた。


「「でも、同じ物じゃないといらないよ」」


 その言葉は、もちろんわたしの想定内。


 カルは、同じ形の二本のリボンを、ルッカ様とルッド様のそれぞれのシャツに、手際良くタイのように結んでくれた。


 淡い青色のリボンをルッカ様に。鮮やかな青色のリボンをルッド様に。


 それは、誰がどう見ても水色と青色のリボンだった。






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