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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第一章
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自称神様

「ルベ、いるなら出てきて!!」


 わたしは今、ルベと再会を果たした本邸の池に来ている。全く返事はなかったけれど。


「ルベ、話があるの。従魔契約のこと!」


 従魔契約のこと、と付け加えると、ルベは嫌々ながらも、わたしの前に姿を現した。


「もう、いるなら初めから返事してよ!」

「うるせえ!! チビ、契約解除するのか?」

「しないよ。わたしが死ぬまで絶対に契約解除なんてしてあげないんだから」

「ふざけんな!」


 ルベは今にもわたしに飛びかかろうとする勢いだ。だから、慌てて補足説明をする。


「正確には、契約の解除の仕方が分からないの。だって、自称神様(かみさま)がやってくれたんだもの」

自称神様(かみさま)ぁ?」


 ルベは怪訝な顔でわたしを見た。


 そして、自称神様(かみさま)だと言い出したわたしに、憐れみの視線を送ってくる。


 けれど、わたしはお構いなしに、話を進めることにした。どうしても、ルベに確認しておきたいことがあったから。


「そんなことよりも、ルベは、にゃ王なの?」

「はあ?」


 ルベは憐れみを通り越して、痛々しく感じたらしい。でもここは「にゃあ?」と言って欲しかった。


「あ、間違えた。ルベは魔王なの?」

「……さあな」

「じゃあ、転生者って知ってる?」

「興味ない」

「もうっ、転生者って、わたしのことなんだよ。わたしには前世の記憶があるんだよ」

「ふーん」


 我関せずの構えを貫くルベに、わたしは少しだけ寂しくなった。従魔契約がなければ、本当にわたしのことなんてどうでもいいんだろうな、と思ってしまったから。


 けれど、ここで引き下がるわたしではない。


「ねえ、驚かないの?」

「別に……」


(やっぱり悔しい! どうにかルベを驚かせたい)


 そしてわたしは考えた。実際に会うのが一番だ、と。


「だから、これからその自称神様(かみさま)と会って話そうと思うの」

「はっ、無理だろ?」

「やってみなくちゃ分からないよ。自称神様(かみさま)ぁ! 悪役令嬢ってどういうことですかぁ? ここは冒険ファンタジーの世界じゃないの? ねぇ自称神様(かみさま)ぁ?」


 わたしは空に向かって叫んだ。けれど、自称神様(かみさま)からの応答はない。


 そりゃそうだ、と言いたそうなルベの視線が突き刺さる。


 ルベはすでに痛々しいを通り越して、わたしのことを痛い子だと認定していた。それでもわたしは諦めない。


「世界で一番素敵な自称神様(かみさま)ぁ、約束のアイテム袋が欲しいので、わたしに会いにきてくださーい」

「はい、は〜い! スーフェちゃん、お待たせ!」


 自称神様(かみさま)が、いつもの軽いノリでわたしたちの前に姿を現した。


「いや、絶対に偽物だろう……」


 ルベの呟きに、わたしは自信を持って否定することができない。そんなルベの視線が、またしてもわたしに突き刺さる。


 どうにか、自称神様(かみさま)が本物の神様だと証明しなければならなくなったわたしは、自称神様(かみさま)の腕をぎゅっと掴んだ。絶対に逃げられないように。


「ねえ、この前も言ったけど、悪役令嬢ってどういうこと?」

「あっ……」


 わたしの言葉に、あからさまに自称神様(かみさま)の目が泳いだ。


「ど・う・い・う・こ・と?」

「……間違っちゃった、えへ!」

「えへ! じゃない!! どうしてくれるの? 嫌、絶対に嫌!!」

「でも、もう無理だよ。それに埋め合わせもしたでしょ。新キャラ。スーフェちゃんの好みでしょ?」

「……否定はできない」

 

 すぐに、カルのことを言っているのだと分かった。


 ぶっちゃけ好みだ。良くやった、と褒めてあげたくなる。


 キラキラしすぎていないイケメンで、とても優しい。一緒にいると心地良くて癒される。今のところ非の打ち所がないのだから。


 けれど、自称神様(かみさま)の今の言葉で確定してしまった。


(やっぱり、カルは自称神様(かみさま)が作った特別な人なんだね)


 その事実に、わたしの心に一つの不安が生まれる。けれど、もう一つわたしには追求しなければならないことが残っている。今はそっちも明らかにしなければならない。


「それに、スキルが『盗』って何!? わたし、泥棒なんてしたことないし。超がつくほど品行方正だったんだよ!!」

「それ、超がつくほどの便利スキルだよ? 誰かの持ってる魔法やスキルだって奪えちゃうんだから」


 自称神様(かみさま)は自慢げにわたしに説明した。


(奪うって、やっぱり泥棒じゃない! もう、悔しいい!!)


 わたしは納得がいかず、どうにかして自称神様(かみさま)に一泡吹かせてやろうと考えた。そして、思いついたわたしは、にやりと笑った。


「へぇ〜、どうやって?」

「魔法やスキルを盗みたい、と思いながら身体に触れればオッケーだよ」

「こう?」


 わたしは自称神様(かみさま)の肩をポンと叩いて、そのとおり実行した。


「そうそう!」

「ふふ、本当に便利だね」


 その瞬間、自称神様(かみさま)が青褪めた。


「えっ、まさか!? 泥棒!! スーフェちゃんが泥棒なんてする悪い子だとは思わなかったっ、早く返して!!」


 わたしはこの『盗』のスキルで、自称神様(かみさま)の全ての魔法や能力を盗むことに成功した。






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