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黒猫従魔と旅に出る。  作者: 海伶
第一章
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最強の従魔

 魔法が使えない、というルベの呟きに、わたしはこてりと首を傾げ、そして、にやりと笑った。


「ははーん、ルベったら、教えたくないとか言って、初めから使えないんじゃないの?」


(だって、ルベは可愛い黒猫ちゃんだもの。その可愛さは、ある意味最強だけど、ぶっちゃけ最弱だよね)


 それでも、わたし的にはもふもふは正義だけれど。ついでに言うなら、猫ちゃんは最強に可愛い。


「仕方ないなぁ。可愛いルベのことはわたしが守ってあげるから!」


 だから気を落とさないで、と無駄にルベを励ましてあげる。それに「ちょっと待った!」をかけたのは、最強で最弱の従魔のルベだ。


「んなことあるか! 俺にしか使えない雷魔法を使おうとしたんだぞっ!!」


 ルベはわたしに向かって、シャーッと噛みつかんばかりに怒り出した。


(威嚇だ、可愛すぎる。全くもって怖くないし)


 ルベの全てが可愛すぎる。やっぱり黒猫ちゃんは最強だ。

 

「雷魔法? そんな魔法もあるの? 見たい! もしかしたら、わたしにもできるかな? えいっ」

「できるわけ……」



ーーーーバァァァァァン



 わたしが調子に乗った瞬間、目の前の木に雷が落ちて、木のてっぺんが少しだけ焼け焦げた。


「でき、た?」


 再び、わたしは首を傾げて、言葉を失って唖然とするルベに向かって、可愛らしく「にゃはは」と笑って見せた。


「な、何でチビにできるんだよ? は? チビ、お前まさか、意味不明な『盗』ってスキルか? さては、泥棒だな!! 俺の魔法を返せ」

「え? スキル? ルベはわたしのスキルを知ってるの? わたしも自分のスキルを知りたい!」


 正直言って、ルベが何を言っているのか理解ができなかった。


 けれど、同時に自称神様(かみさま)がスキルをくれると言っていたことを思い出した。だから、自分のスキルが見たいな、と願った。


 すると、わたしの頭の中に“それ”は浮かんできた。



 ++++++


 【 能力(スキル) 】 『盗』、鑑定、言語理解、隠蔽


 ++++++



 わたしは言葉を失った。そして叫ぶ。


「ちょっと待って。『盗』って、何なのよぉ! わたしは泥棒なんてしたことないわっ!!」


 怒りを滲ませたわたしの叫び声が、遥か遠くの方にまで響き渡った。


 わたしは『盗』の文字を見た瞬間、自称神様(かみさま)が言っていた「君の前世で得意だったことをスキルに加えてあげるね」という言葉を思い出したのだから。


(神に誓って、わたしは泥棒なんてしたことがないと断言できるわ。自称神様(かみさま)ではなく、本物の神様に誓って!!)


 決して自称神様(かみさま)になんて誓うわけがない。それでもわたしの怒りは収まらない。


 それを見兼ねたわたしの癒しであるルベが、少しだけ面倒臭そうに口を開いた。


「知らね。俺『盗』それだけは意味が分からない」


 それもそのはず、なぜか『盗』だけは、わたしの前世の言葉『漢字』で書かれていたのだから。ルベには日本語は理解できなかったようだ。


「えっと『盗』っていうのは、盗む、泥棒みたいな意味を持つ言葉なの」


 はっきり言って、盗という言葉に良い印象などない。だからこそ、それが自分の得意なことだと言われたことが、非常に腹ただしい。


「はあ? 泥棒? やっぱり俺の魔法をチビが盗んだんだろ? 早く返せ!」

「え? もしそうだとしても、どうやって返すのかも分からないよ?」

「なら、力尽くでも返してもらう!!」


 ルベは再び、わたしの顔を目掛けて飛びついてきた。ルベを引き離しながら、咄嗟にわたしは叫んだ。


「わわわ、返す、返す、ルベから【盗んだ(かもしれない)魔法は返す】からやめて!!」


 その瞬間、ルベの動きがぴたりと止まった。


「あ、戻ったっぽい」

「へ?」


 ルベは納得したように、わたしから離れていった。それはそれで、少しだけ寂しい。


「もうっ、いったい何なのよ!?」


 さらに怒りを募らせるわたしをよそに、魔法を返してもらったルベは上機嫌。


「もう俺から魔法を盗むなよ」

「わたしだって盗みたくないよ。絶対に泥棒なんてしたくないもの! でも、知らなかったとしても、わたしが悪いよね。ルベ、ごめんなさい」


 たとえ悪意はなくても、自分のものを取られたら、絶対に嫌な気持ちになるはずだ、と思ったわたしは、素直にルベに謝罪した。


「……調子狂うな」

「でも、一回だけでもルベの魔法が見たい! 見せて!!」


 無謀にも、ルベの魔法を目で見て盗んでやると思った。盗むのではない、【目で見て盗む】のだ。


「チッ、でもきちんと戻ったか確認したいしな」

「分かるの? わたし、ルベを【鑑定】しても見れないよ?」


 わたしは自分のスキルに鑑定があったことから、ルベに向かって鑑定を使うことを試みた。

 けれど、何も表示されないうえに、頭の中にも何も浮かんでこなかった。


「んなの当たり前だろ? 俺の方がチビよりも魔力が高い。チビのくせに俺をばかにしてるのか? まあ、チビのわりには魔力はそれなりにあるみたいだけどな」


(自分よりも遥かに小さい猫ちゃんに、どれだけチビだと言われても全く悔しくないよ。むしろ強がってるルベが可愛すぎるだけだよ)


 ルベが可愛すぎて辛い。


「一応教えといてやる。鑑定される者が鑑定されることを拒んでいると、魔力の優劣によって鑑定の効果を発揮できないからな。だから、チビには一生俺を鑑定することはできない」

「そっかあ、ルベってとってもすごい黒猫ちゃんなんだね」


 わたしの言葉に気を良くしたルベが、意気揚々と雷魔法をわたしの目の前で放つ。



ーーーーズドォォォォォン



 目の前の木に雷が落ちて、見事に真っ二つになった。


 わたしは言葉を失った。そんなわたしを見たルベは、何やら勝ち誇ったように、にやにやとしている。


「にゃ!?」


 突然、ルベが走って逃げた。


「スーフェお嬢様!?」


 使用人の一人がわたしを心配して駆けつけてくれた。正確には、雷が落ちた音を聞きつけて、何事かと確認しに来たら、わたしがいたらしい。


「今、雷魔法が……え? 雷魔法は魔王しか使えないはずでは?」

「ま、魔王ぅぅぅぅぅ!?」


 使用人の大きな一人言に、わたしは驚きを隠せなかった。


(確かに、それなら最強の従魔かもしれないな)


 自称神様(かみさま)は、きちんと約束を守ってくれたんだ、少しだけ自称神様(かみさま)を見直したわたしがいた。






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