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科学のもたらした幸福

 ああ、私は何て幸せなのだろうか。


 全てを機械で制御する事に成功した我が国が誇らしい。

 

 愛する我が国では道路を行き交う車は完璧に制御され、

交通事故の話を聞かなくなって久しい。

 交通事故で悲しむ人がいなくなって幸福だ。


 愛する我が国では貧困も存在しない。

 労働力の大半を機械で賄うことが可能な今、

全ての国民に無償で充分な暮らしを与えるだけの国力がある。

 他の国々、ましてや先進国ですら存在する貧困が

存在しない我が国は他の国の模範であると確信している。


 愛する我が国では犯罪も存在しない。

 国民は生活環境も機械で適切に整えられ、

事故にあうことも無く、貧困も存在しない中、

充足した生活を送る事ができる。

 機械化のお陰で全てが満ち足りた国では

わざわざ犯罪をおこす気など起きようはずも無いのだ。


 だが、こんなにも素晴らしい我が国の事を、

やれ、人としての温かみが無いだの、

人の営みとして間違っていると言う奴等がいる。


 社会に機械化を取り入れることの何が悪いというのだろうか。

 文明は様々な道具、機械を発明し社会に取り入れることで

発展してきたということは、子供でも知っている不変の事実だ。

 奴らも今更、縄文時代の暮らしに戻って

機械の力を借りずに生活しろと言われても全力で拒否するはずだ。

 我が国程ではないが仮にも先進国にも関わらず、

筋の通らない主張をして実に恥ずかしい奴らだ。


 我が国のレベルにまで機械化を進める技術を自分たちが持たないために

我々の事をやっかみ、何かと理由をつけて我々の生活レベルを

下げようと躍起になっているのだ。

 

 周囲の国々がこうも我が国への嫉妬に駆られているとは、

隣人に恵まれないのは悲しいものだ。

 そのくせ、幾ら我々と同じ水準まで機械化を進めてやると言っても

先進国であるプライドが邪魔をして首を縦に振らない始末だ。


 だが、我が国も国としてやっていくためには、そういった国々とも

付き合っていかなければならないのが困ったものだ。

 本来、こういった手合いへの対応は機械にお任せして、

機械の論理的思考でぐうの音も出ないように論破したいところだが、

奴らは必ず人間としか会話しないと言ってくるから困ったものだ。

 私の仕事は、外交官としてそういった手合いに我が国の素晴らしさを伝え、

友好関係を築く事なのだから気も滅入ってしまう。


 そんなことを考えた途端、私の憂鬱な気持ちも、

私の頭の中に埋め込まれたマイクロコンピュータの電気信号が霧散させ、

私のやる気を奮い立たせてくれる。


 ああ、私は何て幸せなのだろうか。

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